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グラフで見る 資金削減がWHOに与えた影響

ガザからエジプトへ移送され、治療を受けるのを待つ患者たち。
世界保健機関(WHO)は深刻な資金不足の中で、保健・人道危機への対応に当たっている Saeed M. M. T. Jaras / AFP

世界保健機関(WHO)は一部保健事業の縮小・停止や職員削減で財政難を乗り切っているが、財源回復の見通しは乏しい。5つのグラフでその影響を概観する。

19~23日に開かれた世界保健総会(WHA、WHOの年次総会)で、加盟国は深刻な財源不足の中で保健・人道危機に資金や権限をどう配分するかを議論した。

WHOのテドロス・アダノム・ゲブレイェソス事務局長は18日、加盟国の代表らに「紛争から経済危機、気候変動、援助削減に至るまで、私たちは困難で危険で分裂的な時代に生きている」と語った。「WHO自身も突然に予算を大幅削減された結果、困難な時期を経験してきた」

2030年までに達成すべき保健関連の「持続可能な開発目標(SDGs)」は遠い夢になりつつある。WHOの推計によると、46億人が基本的な保健サービスを受けられず、21億人が医療費の自己負担によって深刻な経済的困難に直面している。また、2030年までに保健医療従事者が1100万人不足すると見込まれる。

新型コロナ危機後、ドナー国政府が支出の優先順位を変更し海外援助予算を削減したため、世界の保健医療資金は不足しがちになった。この資金難は、WHO最大の拠出国アメリカが2025年、WHOからの脱退に踏み切り、海外援助支出の大部分を凍結したことでさらに深刻化した。アメリカは、脱退前の拠出金をまだ支払っていない。

アメリカの拠出がWHO予算のほぼ2割を占めるという構造的な弱点が、WHO財政を直撃した。アメリカの脱退で、WHOは2025年だけで約6億ドル(約950億円)の資金不足に陥り、2026~27年度の予算を約20%削減せざるを得なくなった。ただ関係者によると、広範な財政改革が緩衝材になったという。

しかし欧州の主要ドナー国もアメリカに追随したため、WHOは人員削減と事業の「優先順位付け」を余儀なくされた。結核治療から妊産婦ケアに至るまで、緊急対応活動やサービスに支障をきたしている。以下の5つの図は、こうした削減の影響と、それが世界の保健医療と資金に及ぼす影響を如実に示している。

1. 資金調達の崖

最大のドナー国だったアメリカは、WHOの保健緊急事態資金の3割強(2024~25年度は34%)を拠出。結核対策事業の約半分、HIV・性感染症対策事業の75%を支えていた。他の国々も支援を縮小している。

WHOは当初、2026~27年度の予算において17億9000万ドルの予算不足を見込んでいた。だが世界中のスタッフ数を大幅に削減したことで、不足額は10億5000万ドルに縮小した。

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2.慈善活動の影響力

ドイツやイギリスなど主要な援助国からの支援が減少したことで、WHOと疾病対策事業は深刻な財政危機に陥っている。

  • イギリスはエイズ・結核・マラリア対策世界基金への拠出額を2026~28年にかけて15%削減し、8億5000万ポンド(約1820億円)とする。また、世界ポリオ根絶イニシアチブへの直接資金提供を終了し、代わりにWHOとGAVIワクチンアライアンスを通じて支援を行うことを決めた。
  • ドイツは2025年度予算で人道支援を13億ユーロ(約2400億円)削減。2024年比で47%削った。また、世界ポリオ根絶イニシアチブへの拠出金も19%減らした。
  • 中国はアメリカの脱退による財源不足を補うため、2025~30年の拠出額を5億ドル増やすことを約束した。
  • WHOが本部を置くスイスは、2025~28年で8000万ドルの追加拠出を約束した。 

テドロス氏は18日、加盟国に「現在の基本予算(2年単位)の9割を確保できる」との見積もりを示したが「しかし現在の状況下では、残りの10%を調達するのは容易ではない」とも述べた。

WHOの財源は加盟国政府の拠出金だけではない。2025年のBMJグローバルヘルス調査外部リンクによると、ゲイツ財団は2000~24年にWHOに約55億ドルを拠出した。WHO総収入の約10%を占め、アメリカに次ぐ2番目の拠出者となっている。アメリカの脱退により、ゲイツ財団はWHOにとって最大の単独資金提供者となった。

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3.ニーズと資金のギャップ

WHOは過去3年間、支出超過が続いている。2025年決算によると、大幅な支出削減と投資収益がアメリカ脱退の影響を緩和した。2025年に実施された保健事業・サービスは総額34億2900万ドルと、前年比3億3400万ドル減少した。

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4.健康への影響

保健当局者によると、WHOとそのパートナー機関は援助を割当制にしたり、世界中の緊急医療活動を縮小したりせざるを得なくなっている。WHOによれば、2025年には20カ国・地域にある医療施設5687カ所が資金削減の影響を受けた。

WHOは世界中の1500以上の機関・団体と提携している。資金削減が健康に及ぼす影響の例として、以下の点を挙げている。

  • 医療へのアクセス:2025年には2038カ所の医療施設が運営を停止し、5330万人の医療へのアクセスが制限された。これは、2025年に人道的な医療支援の対象として当初想定されていた8140万人の65%に相当する。 
  • 女性の健康:国連人口基金(UNFPA)の支援プログラムの予算削減により、アフガニスタン、スーダン、イエメンでは220万人以上の女性が重要な保健サービスを受けられなくなった。コンゴ民主共和国東部向けのレイプ被害者用検査キット10万個の提供が中止された。世界中の女性団体の約60%が活動を縮小した。 
  • 結核:WHOは、 2025~35年の死者が最大200万人増え、1000万人の結核患者が発生すると見積もる。
  • メンタルヘルス:2025年には32カ国約75万人がメンタルヘルスサービスを受けられなくなる。
  • 子どもの栄養:WHOによると、開発援助の減少と栄養モニタリングの弱体化により、各国は子どもの栄養状態を把握し、対応する能力が制限されている。グローバル栄養クラスターによる2025年の報告書では、アフリカでは発育阻害児の数が依然として増加していることが明らかになった。発育阻害は、慢性的な栄養不足と幼児期の度重なる病気によって引き起こされる。
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5. 労働力人口の減少

WHOは職員数を2025年1月の9401人から2026年6月までに7360人に22%減らす。2026年1月の人事情報で、WHOは自然減や早期退職による削減抑制の努力にもかかわらず、1282人分のポストが廃止される見込みだと述べた。最も大幅な削減が見込まれるのはジュネーブの本部とグローバルシェアードサービス(GSS、世界の傘下組織に散在する共通業務を集約した組織)。GSS職員数は全体で28%減少。アフリカ地域で25%、ヨーロッパ地域で24%それぞれ減少する。

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編集:Virginie Mangin/ts、英語からの翻訳:ムートゥ朋子、校正:宇田薫

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