国民投票 スイス国連加盟承認!
2日・3日行われた国民投票で、スイスの国連加盟が可決された。投票結果は投票総数では賛成54.6%、反対45.4%だったが、州別では賛成12対反対11州で僅差だった。
スイスの悲願・国連加盟が3度めの正直(国民投票)で遂に達成された。スイスは第190番目の国連加盟国となることが決まり、残るはバチカンのみとなった。コフィ・アナン国連事務総長はスイスの加盟決定を大歓迎し、スイスはこれまでも国連の一部で多くの貢献をしてきたと次のように語った。「スイスはすでに国連ファミリーの積極的で寛大な参加者だった。そして、その経験とノウハウをもって多大な貢献をしてきた。」。
国民投票の最終結果は賛成55%、反対45%。投票率は57.7%と通常の投票よりも極めて高く、国民各自の高い関心と自覚が表れた。スイスの国民投票の場合、議案承認には投票総数の過半数の承認と同時に、全国23州(注・スイスの州)中過半数の州での承認が(つまり州別の集計で賛成票が過半数を占めた州が州総数の過半数を超えなければならない)不可欠だ。今回の投票のカギを握ったのは、この州別部門だった。3日午後6時頃まで、賛成・反対は11州ずつとまっ二つに別れ残るはチューリッヒ州のみ。午後7時にチューリッヒの承認が確定し、その差わずか1州での国連加盟承認決定となった。86年に行われた国連加盟をかけた国民投票で4人に3人が反対票を投じたのとは全く逆の、スリリングな1日だった。
投票結果について政治アナリストのユリアン・ホッティンガー氏は、スイスは徐々に世界に向け開放的になっており、世論にグローバル社会の一員になろうという意思が存在すると述べた。また、今回の投票結果でも、西部(独語圏)の山岳部では開放政策に対する根強い反対が見られ言語別の差違が明白に表れたが、都市部および工業地域では外へと向かう強い意思が証明された。
連立政権政党4党のうち3党(急進民主党、キリスト教民主党、社会民主党)と産業界は熱烈な国連加盟推進派だった。反対派は右派スイス人民党および同党のタカ派議員クリストフ・ブロッハー氏が率いた。最後まで国民に国連加盟反対を訴え続けたブロッハー国民議会議員は、投票結果はスイスの国力を弱め独立を侵害するとスイス公共放送独語テレビ(SF DRS)で語った。反対派は投票前のキャンペーンで、国連に加盟するとスイスは米国牛耳る国連安全保障理事会への服従を強いられ安保理の命ずるままに紛争地域への派兵を強制され、伝統の永世中立政策が侵害されると、一貫して訴え続けた。これに対し、国連加盟支持派は、国連加盟はスイスの中立と主権を侵害しない、むしろその平和政策の執行と国際紛争予防の活動を助けるものだ、スイスは90年代初めから全ての国連制裁に同調しており、国連の外部者の立場を保ち続けても意味がないと主張した。反対派のもう一つの主張は、国連に正式加盟すると拠出金が増え財政的負担が増えるというものだった。が、実際は今でもスイスは国連に年間4億7000万スイスフラン拠出しており、正式加盟後は年間7000万スイスフラン増額されるに過ぎず、この増額も政府は予算を増額するのではなく他の外交政策費を節約して賄える範囲としており、これで国連総会での発言権が得られるなら安いものだというのが政府はじめ支持派の主張だった。
実際、反対陣営でもブロッハー議員以外は国連加盟は承認されるだろうと予測していた。人民党のルッツィ・シュタム議員は、結果のあまりにもわずかな差に驚いたと次のように語った。「メディアや財界が支持に回っていたのに、これほど多くの反対票が投じられたことに率直に言って驚いている。人民党は国連でスイス代表がどのように振舞うか注意深く見守っていく。」。賛成・反対が極めて僅差だったことについて、前出のホッティンガー氏は、国連加盟に対する強い反対が今でもある証拠で、政府は加盟後も反対派を考慮していかなければならないと警告する。
(注)スイスの州(カントン):正確には26州ある。が、準州が6つある。アッペンルツェルのインナーローデン/アウターローデン、バーゼルのシュタット/ラント、ウンターヴァルデンのニトヴァルデン/オブヴァルデンは投票の際には2州そろって1州とするので全23州と数える。
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