スイスの視点を10言語で

ツェルマット、日帰り観光客を制限?

ツェルマット
マッターホルンのおひざもと、ツェルマット Keystone

マッターホルン登山の拠点の村ツェルマットで、わずか数時間しか滞在しない大勢の日帰り旅行者が地元の観光の一部にとって懸念となっていると、ドイツ語圏の新聞NZZ日曜版外部リンクが伝えた。

同紙によると、多くの観光客は食事もとらず、数時間でこの町を後にしてしまうため、地元産業の収益につながっていない。

地元自治体はこうした懸念をそれほど深刻だとはしていないものの、問題解決に向け動き出している。

ツェルマット観光局のシモーナ・アルトヴェックさんは同紙の取材に「人気の写真撮影スポットは、インフラが限界に達したため建て直した」と語った。

ツェルマット観光局は、観光客の混雑緩和策としてコミュニケーション、そして流動的な価格設定を挙げる。「我々の仕事は例えば、ハイカーたちが400キロメートルのネットワークに拡散し、いつも同じ5つのルートを使わないように、さまざまな方法で情報提供することだ」

昼間の訪問者を制限

一方、ツェルマットのホテル経営者は、日帰り観光を制限する独自の方策を編み出した。

地元のホテル経営者協会のマリオ・ノティ理事は「すべての観光客がツェルマットで2晩以上過ごすような宿泊プランの提供を目指す」と話す。

ノティさんは、アジア人のグループは国内のほかの地域とは異なり、ツェルマットでは1~2泊する傾向があると話す。

ノティさんは、マッターホルンの滞在をわずか数時間にとどめるべきではないと話す。そのためのプランとして、日の出・日没の鑑賞、スポーツ、ショッピングなどを盛り込んだ滞在プランを提供している。

ただ、交通機関は日帰り観光客の方が収益が多く、この戦略は鉄道会社とホテル経営者の間で利害が衝突すると話す。

マッターホルン
マッターホルン Keystone

利害の衝突

ノティさんは「鉄道会社の利害は、私たちとは必ずしも一致しない。 2019年上半期だけで、マッターホルン・ゴッタルド鉄道は約130万人の乗客を車の乗り入れができない場所(ツェルマット)に運んだ」と話す。

地元のホテル協会は、イタリア・ヴェネツィアの開発による地元観光業への影響が、ツェルマットにも起こるのではないかと懸念する。

同協会のコリーネ・ジュレン会長は「ホテル・レビュー外部リンク」に「許容量を超えないよう注意する必要がある」と警告した。

ジュレン会長は、世界的な需要は今後増加するとし、マーケティング活動と特別プランの提供により、観光客の季節的な一極集中を防ぎたいと述べた。

経験から学ぶ

国内、欧州からの観光客は依然、最も重要な観光資源だ。

ジュレン会長は「日帰り旅行者は、ツェルマットのホテルにあまり関心がない」と指摘する。

NZZ日曜版は、ツェルマットは国内の観光地が経験している現象を避けたいとしている。

例えば、ルツェルンの自治体は、中国人ツアー団体による混雑が繰り返し問題になっている。ベルナーオーバーラント地方にある欧州最高峰の山ユングフラウヨッホは、一時的に多すぎる観光客であふれ返っている。

スイス中央部にあるリギ山ではゴンドラリフトを建設する計画が持ち上がっているが、地元の人々は強く反対している。批評家たちは、キャパシティが増えれば保護された景観は容赦なく破壊されると訴えている。

人気の記事

世界の読者と意見交換

ニュース

裁判所

おすすめの記事

重度障がい3歳女児を殺害した両親に禁錮8年判決 スイス

このコンテンツが公開されたのは、 スイス北部アールガウ州で、重度の障がいを持つ娘(3)を殺害したとして、地方裁判所は13日、両親を故意の殺人罪・殺人未遂罪でそれぞれ禁錮8年の実刑判決を言い渡した。

もっと読む 重度障がい3歳女児を殺害した両親に禁錮8年判決 スイス
サニヤ・アメティ氏

おすすめの記事

キリスト絵画を的に射撃したスイス議員、辞職

このコンテンツが公開されたのは、 スイスの自由緑の党(GPL/PVL)チューリヒ支部に所属するサニヤ・アメティ氏(32)は9日、党の役職を辞すると発表した。自身のインスタグラムでキリストと聖母マリアを描いた絵画を的に射撃の練習をする写真を投稿し、大きな批判を浴びていた。

もっと読む キリスト絵画を的に射撃したスイス議員、辞職
スイス連邦警察官の後ろ姿

おすすめの記事

スイス検察、国民投票の不正疑惑を捜査

このコンテンツが公開されたのは、 スイス検察当局は、国民投票の提起に必要な署名が偽造されたとの疑惑を捜査している。収集代行業者が過去の署名を使い回したり、金銭を見返りに署名を集めた可能性がある。

もっと読む スイス検察、国民投票の不正疑惑を捜査
1000人以上のアルプホルン奏者

おすすめの記事

1000人超でアルプホルン演奏 スイスで世界記録を更新

このコンテンツが公開されたのは、 スイスのニトヴァルデン準州クレヴェンアルプで31日、1000人以上のアルプホルン奏者が集まり、「アルプホルンを合奏する人数」の世界記録を更新した。

もっと読む 1000人超でアルプホルン演奏 スイスで世界記録を更新
アールガウの原発

おすすめの記事

スイス政府、原発の新設解禁に前向き

このコンテンツが公開されたのは、 スイス連邦政府は28日、「すべての人にいつでも電気を:ブラックアウト(全域停電)を止めよ」と題するイニシアチブ(国民発議)に反対を表明した。ただ、新たな原子力発電所建設の解禁には原則として支持する考えを示した。

もっと読む スイス政府、原発の新設解禁に前向き
スーダンの状況

おすすめの記事

スーダン停戦交渉、和平合意なく終了

このコンテンツが公開されたのは、 スイス・ジュネーブ地方で10日にわたって行われたスーダン内戦の停戦協議が23日、停戦合意に達することなく終了した。

もっと読む スーダン停戦交渉、和平合意なく終了

swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。

他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部