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スイスで夏時間(サマータイム)が始まった。3月31日午前2時にすべての時計の針が1時間ジャンプし、午前3時を指した。だが夏時間制はとうの昔に廃止されるはずではなかったのか?
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夏時間は3月最後の日曜日に時計を1時間進め、10月の最終日曜に元に戻す。8時間ある日本との時差は、夏の間は7時間に縮まる。
スイスの時間を決めるのは誰?
ベルン州ヴァーベルンにある連邦度量衡研究所(Metas)がスイスの標準時刻を決定・配信する責任を負う。Metasでは研究者が正確な原子時計を使って1秒の長さを確認し、協定世界時(UTC) の計算にも貢献している。Metasのユルク・ニーダーハウザー氏はドイツ語圏のスイス通信社Keystone-SDAに対し、時刻測定室の運用において夏時間への変更はほとんど意味を持たないと話した。
夏時間への変更とどんな関係がある?
夏時間への変更は、時間決定プロセスの自然な帰結だ。中央ヨーロッパ時間(CET)はUTCに1時間、中央ヨーロッパ夏時間(CEST)は2時間を追加する。ニーダーハウザー氏によると、変更が事前にプログラムされているため、午前2時に手動で何かを変更する必要はない。手動では不正確すぎるという。
電波時計はどうやって時刻の切り替わりを認識する?
スイスの標準時刻は鉄道駅の時計や教会の時計、多くの目覚まし時計には使われていない。ヴォー州プランジャンにあるスイスの時刻信号送信機が廃止されて以来、スイスの電波時計はドイツから信号を受信しているからだ。フランクフルト・アム・マイン近郊にある高さ約200メートルの電波塔が24時間、正確な時刻を毎秒送信してしている。ドイツ中央部ブラウンシュヴァイクにあるドイツ国立理工学研究所(PTB)が提供する送信システムだ。
携帯電話の時計はこれとは異なり、最寄りの携帯電話アンテナから時報を受信する。GPS装置はは衛星から時刻を受け取る。
夏時間廃止論はどうなった?
欧州連合(EU)は長い間、夏時間制度の廃止を議論してきた。EU委員会が2018年に廃止法案をまとめ、欧州議会が2019年3月、廃止時期を2019年から2021年に延期して可決。だが加盟国の足並みがそろわず、廃止計画は凍結されている。
最大の争点は、標準時を夏時間と冬時間のどちらにそろえるかについてだ。各国がバラバラの時間を採用しパッチワーク状態になるのは避けたいところ。一部のEU加盟国は夏時間制度の終了そのものにも反対している。
スイスでの議論は?
EU非加盟のスイスも夏時間の廃止を議論してきた。2019年に国民党(SVP/UDC)のイヴェッテ・エスターマン議員が廃止を盛り込んだ動議を提出したが、否決された。連邦議会は当時、近隣諸国がサマータイムを導入した1980年にスイスは導入しなかったため、スイスは「時間の孤島」になったと訴えた。
孤立による経済への悪影響が明らかになったため、スイスは1年遅れで夏時間を導入した。
スイスは今回もEUに追随して夏時間を廃止する可能性が高い。永久に夏時間にそろえるには法改正が必要だ。冬時間にそろえるなら、連邦内閣(政府)の決定でことたりる。
英語からの翻訳:ムートゥ朋子
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