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ラストワンマイル 電気通信自由化に欠けているもの

チューリヒ、スイスコムセンターの電話回線の網

(Keystone)

スイスの電話代の高さやインターネットの接続の悪さは先進国としては珍しい。その原因は通信大手スイスコムが最寄電話局から利用者宅までのラストワンマイル(端末回線)の料金を独占的に決定しているため、真の競争が行なわれていないことに起因する。

1998年のテレコム部門の自由化以来、新たに参入した通信事業者たちは、このラストワンマイルの自由化を求めてきた。今後のラストワンマイルの自由化が達成されるかどうかで通信事業の発展が決まるだろう。

 スイスでは1998年1月にテレコム部門が自由化されて以来、利用者は好きな通信会社を選べるようになった。結果的に、国内電話も国際電話もここ数年で大きく値段が下がった。

わがもの顔のスイスコム

 しかし、スイスコムがラストワンマイルを独占しているため、利用者が他の通信会社に加入していたとしても、2カ所から請求書が来ることになる。一つは使用した通信会社(サンライズやテレ2など)の通信代。もう一つはスイスコムへ固定電話の基本料金として毎月25.25フラン(約1990円)を支払わなければならない。

 問題はそれだけではない。スイスコムがライバルの通信事業会社にラストワンマイルの使用料を通して、値段やサービスの内容に関してまで絶大の権力を持つ。このため新規参入企業ができることはかなり限られたものとなっている。

 スイスコムのライバル会社は、スイスコムの独占状態を非難し、ラストワンマイルの料金の自由化が行なわれれば、毎月一定料金でインターネットのブロードバンド接続と新技術のサービス提供、無料の国内電話といったパッケージを提供できると主張している。

ブロードバンド普及が遅れたわけ

 スイスで、高速大容量の情報転送が可能なブロードバンド接続の浸透が遅れたのも、スイスコムが元凶といわれる。スイスコムはこれまでの営利的なISDNをなるべく長く守りたかったため、結果的にブロードバンドの普及を妨げた形になった。

 この結果、スイスではブロードバンドの接続料金が隣国フランスに比べ、2倍高く、スピードは5倍遅いという結果になってしまった。ジュネーブにある国際電気通信(ITU)の国際会議に出張した日本人は接続の悪さに驚いている。

フランスの場合

 ラストワンマイルを自由化するとどうなるのだろうか。フランスの場合、この自由化は2003年の夏に始まり、これを機に値下げ競争と多くの新たなサービスが目白押しに出てきた。

 フランスのテレコム調整当局は「ラストマイルの自由化がある意味、成功したのは確かです。競争が激しくなり、値段が下がり、今では欧州で最も安い料金となりました」と言う。

 確かに、フランスはスイスの消費者が妬むような通信料金だ。通信事業者フリー(Free)は毎月45フラン(約4000円)を払えば、ブロードバンドのインターネットアクセス(600Mbit/s)と幾つかの電話番号への通信が無料のうえ、ケーブルテレビ放送チャンネルへの購読のサービスが受けられる。スイスでは同じ料金でブロードバンドがせいぜいだ。

 フリーはこのサービスを提供するために3年間で2億5000万ユーロ(約347億円)の投資をした。

都市部への偏り

 しかし、フランスの自由化は成功一色という訳ではない。フリーような安いサービスは都市部に限られていたり、安定性に欠けていたりする。新規参入の通信業者はもちろん、まず都市部に投資をするが、農村部などの過疎地へは見返りが少なすぎるために投資が行われず、都市と農村の情報格差が広がってしまう。スイスコムもこれを理由にラストワンマイルの自由化を拒否している。

最小の自由化

 国会で2年間の議論が行なわれた末、通信の自由化は最小限にとどまることになった。新規参入の通信業社はラストワンマイルへの自由化を享受できるようになるが、光ファイバーなどといった新しい技術への自由化は見合わせられる。

 新しい通信業者、テレソニックのフランソワ・カレガロ氏は「新しいビジネスを始めるのに投資の準備はできていますが、よいタイミングを待っています」と語る。「現在のところ、ラストワンマイルを何時、どのように自由化するかを話し合っているところです。しかし、スイスコムへのリース代が高ければ経費が利益を上回るため、投資ができるかどうかはまだ不確実です」と説明する。

 この調子で自由化が進展する場合にはあと2、3年はかかるだろう。問題はその間、スイスコムが自らの位置付けに成功し固定客をつけてしまうことだ。ラストワンマイルの自由化が行なわれる頃にはライバル業者はよほど安い料金とサービスを提供しなければならないばかりか、投資額が高いため、2,3社の大きい会社しか土俵には上がれないのではないか。


swissinfo、ルイジーノ・カナール 屋山明乃(ややまあけの)意訳

キーワード

スイスでは8年前(1998年)に国営テレコムPTT公社がテレコム部門をスイスコムと改称し、通信事業の自由化を行った。しかし、スイスコムは最寄の電話局から各利用者までの電話回線を今だに独占しているため、利用者が他の電話会社を利用していても、スイスコムに最低限の使用量を支払わなければならない。スイスコムの株式の66%は国が保有している。

2005年の11月末にスイス政府はスイスコムの民営化計画案を公表。スイスコム民営化については政界、経済界で激しい論争が巻き起こっている。

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補足情報

<用語解説(IT用語辞典http://e-words.jp/を参考)>

- ISDN(integrated Services Digital Network):総合サービスデジタル網。各家庭に配線されている銅線電話回線をデジタル回線化したデジタル通信サービス。


- ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line/非対称デジタル加入者線): ブロードバンドの一つ。これにより、電話とインターネットの両方が同時に使えるようになった。通常の銅線電話回線で従来、使われていなかった帯域(高い周波数帯)を使ってデータを伝送する技術でブロードバンド(広い帯域)を使うことにより大量のデータを伝送できるようになった。

- ラストワンマイル(Last One Mile):ラストマイルともいい、通信サービスの加入者宅から最寄の電話局までの端末回線のこと。スイスでもラストマイルの回線はほとんどが電話回線であり、スイスコムが独占している。

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