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ラムダニ氏、フードバンク、グロキペディア…スイスメディアが報じた米国のニュース

vote hereと書かれた立て札
Keystone / SWI swissinfo.ch

スイスの主要メディアが10月30日~11月5日報じた米国関連ニュースのなかから①ニューヨーク市長にラムダニ氏当選②フードバンクに政府職員が列③マスク氏作「グロキペディア」は頼りになる?の3本を要約して紹介します。

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演壇に立つ男性
ゾーラン・マムダニ氏は、ニューヨーク市で家賃凍結と最低賃金30ドルの導入を公約した Copyright 2025 The Associated Press. All Rights Reserved.

ニューヨーク市長にラムダニ氏当選

フランス語圏の大手紙ル・タンは5日、ゾーラン・マムダニ氏がニューヨーク市長に当選した数時間後に配信した記事で「ニューヨーク市民はアメリカ大統領とは正反対の人物を選んだ。80代のアメリカへの挑戦であり、他の地域でも抵抗運動が活発化する可能性がある」と伝えました。同紙は興奮のあまり、トランプ氏の年齢を誤って記載しています(トランプ氏は79歳で、厳密には80代ではありません)。

同紙は、米国最大の都市で初のイスラム教徒市長となったマムダニ氏は、「共和党の手法による攻撃を受けている民主主義が健在であること」を示したと書きました。「ゾーラン・マムダニ氏は、失望し不安に駆られている人々を一つにまとめ、彼らにインスピレーションを与えた。そして人々に夢を与えた。それは明らかにニューヨーク市民が特に必要としていたものだった」

マムダニ氏が民主社会主義者を自称していることは、大きな話題となっている。トランプ氏はマムダニ氏を共産主義者と呼んだ。これについて、ドイツ語圏の大手紙NZZは「34歳のマムダニ氏のアイデアの中には、古典的な社会民主主義のレシピに基づいたものもあり、ヨーロッパではほとんど注目を集めないだろう。しかし、他の提案は実に急進的だ」と分析しています。

マムダニ氏がニューヨーク州で家賃「凍結」と最低賃金30ドル(約4600円)の導入を計画しており、最も注目を集めています。しかしNZZは「最低賃金を30ドルに引き上げれば、飲食業界や運輸業界といった低賃金産業は壊滅的な打撃を受けるだろう。レストランはおそらく従業員を解雇し、価格を値上げせざるを得なくなるだろう」とみています。全米の最低賃金は現在7.25ドル、ニューヨーク州は16.50ドルであることも紹介しました。

マムダニ氏はまた、5歳になるまですべての子供に保育を無償提供すると公約しています。NZZは「多くのヨーロッパ諸国で利用可能」と賛同。しかし市営バスと都市部の食料品店も無料で利用できるようにする公約については、「大きな問題は、この資金がどこから調達されるかだ」と指摘しました。

ニュージャージー州とバージニア州の知事選でも勝利した民主党は、選挙結果から教訓を得られるのでしょうか?ドイツ語圏の日刊紙ターゲス・アンツァイガーは、「ニューヨークはアメリカではない。ゾーラン・マムダニ氏は、民主党にとって必ずしも良い模範とは言えない。もっとも、いくつかの点ではそうかもしれないが」と書いています。「マムダニ氏のような経歴の候補者が大統領に選ばれる可能性はゼロだが、(中略)民主党がドナルド・トランプ氏への回答を探しているなら、マムダニ氏から学ぶことはできる。マムダニ氏は最近、トランプ氏への回答は別の選択肢を生み出すことだと述べた。それは、ニューヨーカーが切望する『この街を故郷と呼ぶすべての人の尊厳を信じる街』を体現する別の選択肢だ」

一方、ドイツ語圏のスイス公共放送(SRF)は「しかしながら、民主党員でさえ不安を抱えている。穏健派議員は左傾化を懸念しており、それが最終的にはトランプ率いる共和党の思惑に沿うものになる可能性がある」と伝えました。「ゾーラン・マムダニ氏の支持者たちは気にしない。彼らにとって、マムダニ氏は民主党の新たな顔であり、ホワイトハウスの現体制に対抗できる人物なのだ」(出典:ル・タン外部リンク/フランス語、NZZ外部リンクターゲス・アンツァイガー外部リンクSRF外部リンク/ドイツ語)

            Families are going hungryと書かれたプロジェクション
            「家庭が飢えている」――3日、ワシントンD.C.の米農務省ビルに、全米女性法律センターからのメッセージが映し出された Copyright 2025 The Associated Press. All Rights Reserved.

            フードバンクに政府職員が列

            ワシントンD.C.南東部のある地区では、倉庫で食料の配布(フードバンク)が行われています。小麦粉や砂糖といった基本的な食料品、缶詰に加え、新鮮な野菜、卵、牛乳なども配布されています。このサービスは、困窮している人々だけでなく、今では政府職員にも提供されています。現地をSRFが取材しました。

            配給品をたっぷりショッピングカートに詰め込んだトレイシーさんは「政府で働く人が皆裕福なわけではない」とSRFに語りました。「それに、ここワシントンの生活費は信じられないほど高い。だから、多くの人が賃金の減少をすぐに実感する」

            SRFによると、普段はフードバンクに頼らない政府職員が、今では行列を作っています。しかし職員たちはこのことを恥じ、口を塞いでいます。

            食料を買うために列に並ぶのは、一般の貧困層にとっては目新しいことではありません。しかし、政府から月平均200ドル弱の食料手当が支給されなくなったため、彼らの状況も悪化しています。シングルマザーのシーラさんは、SRFの取材で「なぜ最貧困層が苦しまなければならないのか」と訴えました。

            政治家への怒りは高まっています。連邦議会は二極化を深め、民主党は国民皆保険制度への補助金延長を要求する一方、大統領府・共和党はこれを拒否。共和党は上院でわずかに過半数議席を確保しているにすぎないため、予算案の可決には民主党の票も必要です。両党は政府閉鎖の責任を互いに押し付け合おうとしています。

            SRFによると、取材に応じた人々の多くは現状について共和党を非難しています。「しかし、大半がどちらか一方ではなく、議会議員全体を非難していることは特筆すべき点だ」と強調しました。

            シーラさんもその一人。「彼らは億万長者だ」とSRFに語りました。「連邦議事堂に行っても、牛乳や卵の値段すら教えてくれない」。しかしシーラさんは議員に負けたくないと言います。「牛乳なしでコーンブレッドを焼く方法を知っているから」と冗談を飛ばしました。(出典:SRF外部リンク/ドイツ語)

                議論する男女
                スイスの輪番制大統領、どっちが先?カリン・ケラー・ズッターかギー・パルムランか? Keystone / Alessandro Della Valle

                マスク氏作「グロキペディア」は頼りになる?

                億万長者のイーロン・マスク氏は先週、AIベースのオンライン百科事典「グロキペディア(Grokipedia)」を立ち上げました。ウィキペディアのライバルとして位置付けたいと考えています。

                タブロイド紙ブリック(ドイツ語版)は、2025年の輪番制大統領を務めるカリン・ケラー・ズッター氏に関するグロキペディアの回答外部リンクを分析しました。総論として「概ね問題ない」としながらも、いくつかの誤りを発見した。例えばグロキペディアはケラー・ズッター氏をギー・パルムラン氏の後任として紹介しましたが、実際は逆です。またケラー・ズッター氏は全州議会(上院)でトーマス・ヘフティ議員の後任だと紹介しましたが、ヘフティ氏は別の州の出身で、正解はオイゲン・ダヴィッド氏の後任です。スイスの「債務ブレーキ」制度に関する記述にも誤りがあったといいます。

                記事は「全体的には大きな問題はないが、それでも不正確だ」と結論付け、「編集」提案ボタンが見つからなかったと付け加えました。「もちろん、ウィキペディアの全ての項目が非難の余地がないわけではなく、時には対立する政治団体に乗っ取られることもある。しかしながら、(ウィキペディアは)今やインターネットの基盤となる知識の基盤となっている。そして皮肉なことに、グロキペディアもまたそうだ」。ブリックは、グロキペディアはウィキペディアから多くの項目を単に引き継いだだけだと指摘しました。

                「マスク氏が自身の財源をウィキペディアを破壊するのではなく、よりよいものにするために使ったほうが良いのではないだろうか」

                マスク氏がウィキペディアに抱く問題とは一体何なのでしょうか?フランス語圏のスイス公共放送(RTS)はポッドキャストでこの疑問を提起し、AIは本当に数百万人のウィキペディア執筆者よりも中立的で信頼性の高い知識を生み出すことができるのかを問いかけています。(出典:ブリック外部リンク/ドイツ語、RTS外部リンク/フランス語)

                次回「スイスメディアが報じた米国のニュース」日本語訳は11月13日に配信予定です。

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