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ローザンヌ国際バレエコンクール 決勝で加藤君と堀沢さん入賞

クラシックの課題曲を明るく爽やかに踊る加藤君 Shunki Ogawa

2月6日に行われた「第39回ローザンヌ国際バレエコンクール」の決勝で埼玉県の加藤静流 ( しずる ) 君 ( 16歳 ) が5位、群馬県の堀沢悠子 さん ( 16歳 ) が7位で入賞を決めた。

これで日本は第34回コンクール以来6回連続で入賞者を出したことになる。なお1位はブラジルのマヤラ・マグリさん。マグリさんは高い技術とチャーミングな踊り方で観客賞も射止めた。

楽しく踊れた

 「入賞する自信はまったくなかったので、名前が呼ばれたとき何が何だか分からなかった。とてもうれしい」

 と感想を述べた加藤君。

 昨日の選抜戦よりもっと明るい笑顔を振りまきながら、クラシックもコンテンポラリーもピタリと決めた。

 「全然あがらず楽しく踊れた。テクニック的には昨日の方が少し良かったが、気分的には今日の方が良く、コンクール中でベストだった」

 と最終日にあがらない強さを持つ。

 

 審査員の1人で振付家の島崎徹氏が、

 「加藤君は1人の青年としてチャーミングな上、自然な感じ。スクスク育ち押し潰されていないところが良かった」

 と褒めれば、傍からやはり審査員でアムステルダムのナショナル・バレエアカデミーのクリストファー・ポウニィー氏も、

 「エネルギーに溢れ、フレッシュ。カリスマ性のあるような素晴らしいダンサーだ」

 と称賛の声をかけてきた。

 加藤君は現在「アクリ・堀本バレエアカデミー」 でバレエを習っているが、37回コンクールで3位入賞を果たした水谷実喜さんも同アカデミー出身。

自分に厳しく

 クラシックレッスンの先生から「あなたはもう完璧にできている」と高く評価されたという堀沢さん。決勝ではクラシック、コンテンポラリーとも終わるやいなや大きな拍手が観客席から沸き起こった。

 「でも、入賞すると思っていなかったのでびっくりした。ただうまくできたら入賞したいとは思っていたけれど」

 と言う。

 昨日はクラシックで失敗したところがあったので、今日はそれを繰り返さないよう努力した。

 「今日は、昨日と同じ失敗はしなかったが違うところで小さな失敗があった。だから完全に満足はしていない」

 と自分に厳しく、絶えず向上しようという精神の持ち主だ。

 コンテンポラリーは、「わたしを自由に」という、何かに囚われている自分を解放しようともがく人物を描いた難解な作品だった。

 「クラショックと対照的な作品を意図的に選び、その違いをくっきりと描きたかった。力の入れ方とか動きの始まり方などに注意してきた。コンテンポラリーは今日のほうがうまくできた」

 と語る。

  島崎氏は、堀沢さんを評して

 「磨かれたテクニックの持ち主。あの若さですでにプロも頷くテクニックを習得している」

 と述べた。

 なお、堀沢さんは「山本禮子バレエ団附属研究所」所属。小学校6年から同研究所の寮に入り、バレエ一筋の生活を送っている。

コンテンポラリーの課題

 ところで、決勝戦直前の記者会見では、審査委員長のゲイリーン・ストック氏が今回コンテンポラリーのクラスレッスンでダンサーたちの態度に大きな差が見られたと指摘した。

 「コンテンポラリーのクラスでの練習点は総合点の4分の1を占める。そうした場合、クラスの中でこんな動きは初めてだとおじけづいてしまう子とそれでもやってみようという子では差がつく。審査員はテクニックというより新しい動きや環境に適応できる勇気ある子に可能性を見出す」

 と話す。

 そして、日本人のダンサーの何人かが消極的になっていたと話し、

 「日本のバレエスクールはこうした状況を考慮して、ローザンヌに送りこむ前にコンテンポラリーの先生を海外から呼ぶなどして何回かレッスンを行うことを勧めたい。おじけづかないためだ。しかしこれは日本だけでなく韓国などアジアではみな同じ状況だ」

 また、コンテンポラリーの別の問題として、クラシック色の濃いクリストフ・ウイールドン氏の作品とコンテンポラリー色の濃いキャッシー・マーストン氏の作品では、どちらを選ぶかで評価に差がつき不平等な面がある。そもそもこうしたかなり性格の違うバリエーションでコンテンポラリーの表現力を同じ様に審査できるのかという問題もある。従って、来年のコンテンポラリー・バリエーションをどう変えていくか検討していくという。

選抜に耐えていける強い精神

 一方、今回入賞を逃したダンサーに対する忠告としてストック氏は

 「強調したいのは、ここは7人を選んでほかのダンサーに『あなたはダンサーとして良くない』というレッテルを張るための場所ではない。ここのやり方に今回合わなかったというだけだ。ただ、ダンサーの世界は厳しいもの。カンパニーや学校でも常にオーディションが付きまとう。こうした選抜に耐えていける強い精神を養うこともここで学んでほしい」

 と付け加える。

 また、

「この5日間ではハイレベルのコーチや審査員などさまざまな人に出会う。ここで今何が行われているのかを理解し、こうした人々とうまくやっていきネットワークを広げる方法を学ぶことは、ダンサーとして成長するために非常に大事なことだ」

 とアートディレクイターのヴィム・ブルックス氏も言う。

 最後に、今回男子ダンサーのレベルの高さに圧倒されたとストック氏は話し、

「これは世界のどのコンクールでも同じ傾向だ。また、今回7人の入賞者のうち6人の国籍が違うように、ハイレベルのバレエが世界のあちこちに広がってきている」

 と締めくくった。

1位 マヤラ・マグリさん ( ブラジル )

2位 スン・ウー・ハン君 ( 韓国 )

3位 チャン・チヤオ君 ( 中国 )

4位 パトリシア・ツーさん ( カナダ )

5位 加藤静流  ( しずる  ) 君 ( 日本 )

6位 デリン・ワッタース君 ( アメリカ )

7位 堀沢悠子さん ( 日本 )

1973年ローザンヌで創設された「ローザンヌ国際バレエコンクール ( いわゆるプリ・ドゥ・ローザンヌ ) 」は、15~18歳の若いダンサーを対象にした世界最高の国際コンクール。その目的は伸びる才能を見出しその成長を助けることにある。

昨年4月に創設者のフィリップ・ブランシュバイグ氏が82歳の生涯を閉じた。また、同コンクール日本事業部の責任者山田博子さんも6月に亡くなった。日本から世界トップレベルのダンサーが育ち、また現在多くの日本人が参加できるようになったのも山田さんの努力に負うところが大きい。

今年の第39回コンクールには、DVD 審査で選ばれた世界19カ国74人 の若いダンサーが参加した。日本人は最多の18人が参加した。

昨年と同様、2つの年齢グループ ( 15、16歳と17、18歳 ) に分かれて4日間の練習を行い、練習点と2月5日の選抜点の合計で決勝進出者約20人が選抜され、その後日曜日の決勝で7人が入賞した。

入賞者は同額の奨学金を受け取り一流のバレエ学校やカンパニーに留学できる。決勝進出に選ばれなかった参加者も最終日にオーディションがあり、コンクールに協力するバレエ学校やバレエカンパニーから招待を受ける場合がほとんど。

今年もコンテンポラリー・バリエーションに2人の若手振付家、クリストフ・ウイールドン氏とベルンダンス劇場のキャッシー・マーストン氏の作品が選ばれた。

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