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温暖化と観光地の微妙な関係

雪不足だからといって雪製造機でスキー場を銀世界にすると、環境破壊につながる。 picswiss.ch

温暖化が進み降雪量が減ると、リゾート地はどのような影響を受けるのだろうか。アルプス地方の観光地で今後、冬季にスキー客が減少すれば、リフトやケーブルカーの運営会社をはじめ、観光業に携わる人の生存問題にも関わってくるという調査報告が発表された。

このコンテンツは 2004/01/28 12:53

温暖化が進むと、雪が積もる地域が段々と山の頂上に向かって移動してしまい、リフトやケーブルカーもそれにしたがって移動せざるを得なくなる。人工雪を作る設備への投資も侮れない。

地球の温暖化についての調査は、これまで多く発表された。その中で現在、スイスの観光地で注目されている調査は「気候の変化と観光 環境と経済の危機」。国連環境計画(UNEP)の要請を受け、チューリヒ大学の経済地理学科の研究所が発表した。調査では、2100年には1.4度から5.8度は高くなるという国際的に公式に認められた統計を基本とすると、2050年に生き延びるであろうスイスのスキーリゾート地は半分に満たないという。

深刻な将来

2030年に気温が現在より1.5度上昇すると、十分な雪がある地域は山の頂上方向へ300メートルは移動し、標高1500メートルまで登らないとスキーはできなくなり、雪不足のリゾート地が現在の4割に達する。2050年になると標高はさらに300メートル上昇し、半分以上のリゾート地で雪不足に悩むことになる。

段々と少なくなる雪と戦い生き延びるためには、ケーブルカーやリフトはより高地に建設しなおさなければならない。スキーヤーに十分な雪を保証するため、人工雪を作る機械を導入するなど、多額な投資を強いられることになる。人工雪の製造機は1kmのスキースロープを雪で埋めるための設備投資が百万フラン(8千5百万円)。雪を作るのに年間3万フランから5万フラン(255万円から425万円)掛かる。いまでさえ、スイス国内230ヶ所あるスキーリゾート地で、利益を上げているところは4割に留まるのだから、経営への圧迫は火を見るよりも明らか。
「2050年には温暖化によるスイス観光業界全体の負担は23億から32億フラン(1955億円から2720億円)と莫大になる。一方、過去10年間でスキーヤーの数は横ばいからやや減少の方向にあり、スキー客の増加は見込まれない」。同調査に携わったロルフ・ビュルキ氏は、冬期の観光業に依存し切っているような山岳地帯にとって事態は深刻であることを指摘した。

環境破壊は誰の責任なのか

スキーヤーが雪を求めて山の頂上へ移動すると環境破壊も進む。リフトの建設による自然破壊。気温が低いので、捨てられた生ゴミは土になるまでに時間が掛かり森は汚れる。人工雪の機械の導入により、電気や化学薬品を含む水が大量に使われ、騒音も出る。
「環境汚染については、観光業は被害者でもあり加害者でもある」と前出のビュルキ氏。観光業界は、ウィンタースポーツだけを提供するのではなく、雪のない冬にも楽しめるスポーツやウェルネスなど「いやし系」の施設を作るなどの工夫も必要になろう。冬から完全に夏の観光にシフトするというのも1つの考え方かもしれない。観光地全体で太陽電池や風力によるエネルギーを利用するなどして環境保護に取り組んでゆくことも課題となりそうだ。

同調査は2006年冬季オリンピックが開催されるイタリアのトリノで発表された。「冬季オリンピックを誘致して、施設建設に莫大なお金を投資しても、雪に恵まれなくなれば無駄な投資。オリンピックは雪が保証されるような標高の高い場所をいくつか指定し、ローテーションするのが、本当なら効率がよい」とビュルキ氏はオリンピックにも画期的な案を唱えている。

スイス国際放送 佐藤夕美 (さとうゆうみ)

キーワード

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の統計では
過去百年で地球の気温は平均して0.6度から1度上昇
2100年には1.4度から5.8度は高くなると予想。
スイスのリゾート地
現在 230ヶ所 (100%)
2030年 195ヶ所(85%に減少)
2050年 101ヶ所(75%同)

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