米・イランがジュネーブで核協議 これが最後のチャンス?
アメリカとイランの高官は26日、ジュネーブでイランの核開発をめぐる3回目の間接協議を開いた。交渉妥結の可能性を、専門家はどうみるのか。
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アメリカが中東に展開する海軍・空軍戦力を大幅に増強している。イランに対する軍事的圧力が目的で、その規模は2003年のイラク侵攻以来最大に達している。
アメリカとイランは26日、オマーン政府の仲介による間接協議の第3回会合をジュネーブで開いた。イランの核開発プログラムをめぐる紛争の外交的解決策を見出すことが狙いだ。
「これがおそらく最後のチャンス」と話すのは、フランス戦略分析研究所(IFAS)の研究員でイラン専門家のダヴィッド・リグレ・ローズ氏だ。
先週、オマーン大使公邸で行われた非公開交渉後、イラン代表団を率いるアッバス・アラグチ外相は、指針となる「基本原則」について合意に達したと述べた。
アメリカのCBS放送とのインタビューで、アラグチ氏は「ウィンウィンモデルによる外交的解決の可能性は十分にある」と付け加え、「合意の要素と草案の初稿」に取り組んでいると述べた。
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しかし、こうした心強いメッセージの背後には、多くの専門家が相容れないと考える、米国とイランによる一連の要求が隠されている。
妥協は可能か
ドナルド・トランプ米政権の中東担当特使スティーブ・ウィトコフ氏と、大統領の義理の息子であるジャレッド・クシュラー氏が率いるアメリカ代表団は、イランに対し核兵器および弾道ミサイル開発計画の中止を要求している。
マルコ・ルビオ米国務長官は25日、アメリカが脅威とみなすこれらの長距離ミサイルに関する交渉をイランが拒否していることは「大きな問題」だと強調した。
イランはまた、自国の核開発計画を民生目的と繰り返し主張し、2018年から再開された米国の制裁解除を要求している。
両者の要求が平行線をたどるなか、水面下で妥協点を見出すことは可能なのか。リグレ・ローズ氏は「その可能性は非常に低い」と答える。「双方とも合意はまだ可能であるかのようにふるまっているが、それはおそらく失敗に終わるであろう事態を覆い隠すための外交上の芝居でもあるのだ」
先月の広範な抗議運動に対する弾圧で弱体化したイラン政権に、核・ミサイル計画を放棄する余裕はない。抑止力ともなる弾道ミサイルの放棄は、イラン政府にとって政治的自殺行為を意味するからだという。
一方トランプ氏は2018年の第一次政権時、バラク・オバマ政権下のイラン核合意「JCPOA(包括的共同行動計画)」から離脱した。トランプ氏は「より良い合意」を望み、自らの最大限の要求について譲歩する意思はない。
トランプ氏はJCPOAはあまりにも「弱く」、イランに有利すぎると考えている。2015年にイランと国連安全保障理事会の常任理事国5カ国、そしてドイツと欧州連合(EU)の間で署名されたJCPOAは、10年以上にわたる外交努力の成果だった。
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リグレ・ローズ氏は、ここ数週間でペルシャ湾地域に300機以上の空軍機と2隻の空母を派遣したことで、トランプ氏は「自ら罠にはまったようなもの。もはや完全に後戻りできなくなったのだから」と話す。
アメリカは攻撃するのか?
トランプ氏は交渉が決裂した場合、イランに「標的を絞った攻撃」を行う可能性を示唆している。イランの複数の高官は、いかなる攻撃もイランからの「激しい」報復を招き、それは「一国に限定される」ものではないと警告している。
昨年6月のイスラエルとアメリカによるイラン核施設への爆撃、そしてレバノンのヒズボラやイエメンのフーシ派といった地域同盟勢力の弱体化により、イランは世界有数の軍事大国に対抗できるほどの力を持っていない。しかし、イランはアメリカの圧力に屈することを拒否している。
「イラン政権は生き残りをかけて戦っている。たとえ激しい攻撃であっても、それに耐えられるという危険な賭けに出ているようだ」と、リグレ・ローズ氏は言う。
この計算は、トランプ氏が地上部隊を派遣することはなく、特に秋の議会選挙を控えていることから、長期にわたる空爆作戦には踏み込まないという想定に基づいている。
イランの政権は失脚するか
アメリカの攻撃対象は現時点では不明だが、最高指導者アリ・ハメネイ氏を含むイラン政権高官への標的攻撃だけでは、政権を崩壊させるには不十分だろう。イランは、カタール、バーレーン、クウェート、アラブ首長国連邦にある米軍基地に報復攻撃する可能性がある。イランの長距離弾道ミサイルはイスラエルにも到達する可能性がある。
しかし、外交的解決の可能性がそれほど低いのであれば、なぜジュネーブで会合を開くのか?「時間を稼ぐためだ」とリグレ・ローズ氏は答える。双方とも軍事的解決に向けて積極的に準備を進めているが、交渉が失敗に終わった場合の責任はどちらも負いたくない。こうした状況下では、今年3回目となる今回の協議がおそらく最後となりそうだ。
編集:Virginie Mangin、独語からの翻訳:宇田薫
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