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スイスで再燃する原発新設議論 専門家「既存原発の運転継続が最も賢明」

スイス・ベツナウ原子力発電所2号機の制御室
スイス・ベツナウ原子力発電所2号機の制御室 Keystone / Christian Beutler

福島第一原子力発電所の事故から15年。スイスでは、原子力発電の新設を解禁すべきかを巡る議論がこれまで以上に強まっている。既存原発の現状や新設の可能性、次世代炉の開発、放射性廃棄物の処分を巡る課題について、南スイス応用科学芸術大学(SUPSI)の専門家に話を聞いた。

スイスにおける原子力発電所の新設禁止を巡る議論は新たな局面を迎えている。連邦議会は6月、イニシアチブ(国民発議)「すべての人にいつでも電気を:ブラックアウトを止めよ」に対する政府の間接的対案を可決した。この対案は、長期的なエネルギー供給を確保するため、原子力発電所の新設を解禁することを目的としている。

これに対し、緑の党(GPS/Les Verts)がレファレンダム(国民表決)を立ち上げた。2017年の国民投票で既存原発の段階的廃止と新設の禁止を決めたスイスの有権者が、この問題について再び最終判断を下すことになる。国民投票は2027年2月に行われる見通しだ。

議論が続く原子力発電の現状を探るため、SUPSIの機械工学・材料技術研究所所長、マウリツィオ・バルバート外部リンク教授に話を聞いた。

スイスインフォ:スイスにおける原発の現状について教えてください。

マウリツィオ・バルバート
バルバート教授はSUPSIの熱力学、流体力学、発電システムの正教授で、機械工学・材料技術研究所の所長も務める SUPSI

マウリツィオ・バルバート:スイスには現在、3カ所の原子力発電所と4基の原子炉があります。1984年に商業運転を開始したライプシュタット、1979年に商業運転を開始したゲスゲン、そしてベツナウの1号機と2号機です。ベツナウ1号機は、現在も稼働している原子炉としては世界で最も古く、1969年に運転を開始しました。スイスの原子力発電所の安全性は、定期的なメンテナンスや継続的な改修に支えられ、良好な状態にあると考えられています。原子力発電で特に重要なのは、設備の実際の状態、検査体制、安全対策への投資、そして規制当局が発電所の運転を規制する権限(能力)です。

定期的なメンテナンスに加え、発電所の状態を確認し、必要に応じて運転に制限を設ける独立機関の存在は、この技術に不可欠です。その点で、スイスの規制制度は堅牢だと言えます。

原発を新設する場合、理論上と実際の建設期間はそれぞれどの程度ですか?

技術的な工程だけを考えれば、理論上は5~7年程度で発電所を建設し、送電網に接続することが可能です。中国では、実際にこの期間内で発電所が建設されてきました。しかし、ヨーロッパでは状況が異なります。新たな発電所の建設を決定した時点から、10年以上の期間を見込む必要があります。設計や建設場所の選定、社会的な支持の獲得、行政手続き全般に加え、異議や不服の申し立てが行われる可能性もあるためです。

もう1つ強調しておきたいのは、原子力発電所が単なる発電施設ではないという点です。数十年にわたって存続することを前提に設計されたインフラであり、その期間は60~80年に及ぶ場合もあります。だからこそ、長期的な計画が必要となるのです。

欧米諸国では、原子力発電所の建設に合計10~15年かかることが多く、フランスのフラマンヴィルやフィンランドのオルキルオトといったヨーロッパの近年の事例では、それ以上の時間を要しました。

スイスでは、新設する原子力発電所がネットゼロエミッション(温室効果ガスの排出量と吸収量を差し引きゼロにすること)を目指す電力システムの一翼を担う可能性がある。一方で、現在の経済環境では採算が取れないとの見方もある。この見解は、連邦工科大学チューリヒ校(ETHZ)とパウル・シェラー研究所が共同で実施した最近の研究外部リンクで示された。新設する原子力発電所が競争力を持つには、再生可能エネルギーと同様に国家による支援が必要であり、政府がリスクの一部を負担することが前提になるという。

また、原子力発電所を新設しても、冬季の電力問題が解決するわけではない。同研究によると、電力輸入は今後もスイスにとって不可欠だ。検討したすべてのシナリオで、近隣諸国との大規模な電力取引は、安定的かつ低コストな電力供給を支える重要な要素であり続けるとされている。

エネルギー転換が直面する課題への対応策として、スイス政府の最近の報告書では、原発の新設と既存原発の継続運転が示されました。技術的にはどちらがより合理的ですか?

最も賢明な方針は、既存の発電所の運転を継続することです。早い段階で運転を停止した国々は、十分な長期的視点を持たず、直感的に対応した可能性があります。施設が健全な状態にあるのであれば、継続的な監視と改修を行うことを条件に、運転を続けるべきです。

現在、新たな原子力発電所の建設について議論するということは、少なくとも2040年以降を見据えることを意味します。それまでの期間に、我々は何をすべきでしょうか。ゲスゲンやライプシュタットは、今後も長期間にわたり稼働することができます。ベツナウは少し古いですが、それでも稼働可能な期間を判断することは可能です。私は現時点で、適切な監視を行えば、既存の発電所はエネルギー転換に貢献できると考えています。

「第3世代+」原子炉とはどのような技術で、ヨーロッパに導入例はありますか?

第3世代原子炉は、それ以前の原子炉を改良したものです。核分裂を利用するという基本原理は変わりませんが、第2世代と比べて、安全性や一部の部品の標準化に加え、重大な状況にも対応できる発電所の能力が大きく向上しました。

第3世代+は、こうした特徴をさらに発展させています。目標は、非常時における人間の介入を可能な限り減らし、事故を封じ込める能力を高めることです。

ヨーロッパで特によく知られている例は、フランスのフラマンヴィルやフィンランドのオルキルオトです。いずれも欧州加圧水型炉(EPR)を採用しています。これらの発電所では、独立した2つの回路が使われています。1つは原子炉の炉心につながる回路、もう1つは熱を蒸気に変換し、機械的エネルギーを経て電力を生み出す回路です。

これらのプロジェクトは、ヨーロッパの新たな原子力産業が持つ可能性と課題の両方を明確に示しています。一方では高い安全基準を実現していますが、他方では設計や建設、試運転に長い年月を要しました。その一因は、EPRが複雑な原子炉であり、ヨーロッパの産業界にとっても、いくつかの面で新たな取り組みだったためです。

ロシアや中国にも先進的な原子炉がありますが、いずれもシステムの安全性を高め、標準化を進めることを共通の目標としています。

第4世代原子炉にはどのような特徴があり、実用化はどこまで進んでいますか?

「第4世代」という言葉は、現在も開発や実証実験、試作段階にある技術群を指します。単一の原子炉ではありません。例えば、ナトリウムや鉛を用いる液体金属冷却炉、ガス冷却炉、超臨界圧軽水冷却炉などがあり、いずれも非常に高い運転温度を特徴としています。

この狙いは、燃料利用の効率を高め、場合によっては最も厄介な放射性廃棄物の一部を削減できる、より性能の高い発電所の実現です。ただし、すべての廃棄物をなくせるという意味ではありません。放射性廃棄物の管理という課題は、引き続き残るでしょう。

特に興味深い特徴の1つは温度です。第4世代原子炉は、既存の発電所よりも高い温度で稼働するため、発電効率を高められるだけでなく、化学工業や水素製造といった産業用途に利用する熱源も提供できます。

しかし現時点では、まだ大規模な商業利用には程遠い状況です。一部のプロジェクトは今後数年で産業規模での実証段階に達する可能性がありますが、2030年代半ばより前に本格的な商業化について語るのは時期尚早でしょう。

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原子力は温室効果ガスの排出量が少ない一方で、放射性廃棄物は大きな課題です。スイスではどのような対策が取られており、恒久的な解決策はありますか?

スイスには現在、アールガウ州のツヴィラーク中間貯蔵施設があります。この施設は、原子力発電所のほか、医療、産業、研究で生じたさまざまな種類の使用済み燃料や放射性廃棄物の貯蔵に利用されています。これは一時的な解決策であり、地下深部地層処分場の開発は現在も進行中です。

適切な処分地の選定を行うNagra社は、スイス北部のノルドリッヒ・レーガーンを候補地として提案しました。現在も承認手続きが進められており、最終決定には政治的な承認も必要となります。レファレンダムが実施される可能性もあります。

国際的に見ると、最も先進的なプロジェクトはフィンランドのオンカロです。これは地下深部地層処分場で、使用済み燃料を極めて長期間にわたり隔離することを目的として設計されています。コンテナは地下400 mを超える深さの安定した岩盤内に設置され、金属製のコンテナ、ベントナイト粘土、そして岩盤そのものという複数の防護壁によって保護されます。

*このインタビューは2026年6月9日、SUPSIのウェブサイト外部リンクで公開されたものです。

英語からの翻訳:本田未喜、校正:大野瑠衣子

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