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スイスの民主主義

スイスチョコレートの老舗ヴィラール(Villars)、コスト管理とブランド価値向上への挑戦

ニコラ・フォルジェ最高経営責任者(CEO)
ニコラ・フォルジェ最高経営責任者(CEO) Thomas Kern / SWI swissinfo.ch

スイス・フリブール発の老舗チョコレートブランド、ヴィラール(Villars)。同社のニコラ・フォルジェ最高経営責任者(CEO)は、コストの上昇に直面しつつも、スイス拠点を維持しブランドの認知度向上を目指すと語る。

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ヴィラール(Villars)は創業125年を迎えた。フォルジェ氏は2025年7月からCEO を務める。カカオ価格が高騰し地政学的緊張・保護主義が高まるなかで、卓越した技と受け継がれた伝統を備えるヴィラールをどのように世界で存在感を放つブランドへと成長させるのか。スイスインフォはフリブールの本社でCEOにインタビューした。

スイスインフォ:CEOの前はトランスフォーメーション部門のディレクターですね。何に取り組ましたか?

ニコラ・フォルジェ: 会社の経営を引き継ぐという任務を託され、ヴィラールに来ました。トランスフォーメーション部門のディレクターに就任し、7カ月の移行期間を、スイスの生活に慣れ、会社の各部署を知り、社内の状況を評価することに費やしました。

この期間に会社のブランドや商品、課題について、消費者と業者――特にパティシエの――視点から考察し、理解を深めました。

そして、カカオの高騰、地政学的緊張、新たな関税障壁などの影響を受けて変動する市場にヴィラールが適応できるよう、最初の戦略的・組織的な施策を打ち出しました。

インタビューに答えるフォルジェ氏
インタビューに答えるフォルジェ氏 Thomas Kern / SWI swissinfo.ch

会社の状況をどう分析しましたか?

チームの皆が情熱を持って仕事に取り組み、商品が本物志向で、温かなブランドイメージに消費者が共感していることはすぐに分かりました。ルーツであるフリブールの街、周辺の牧草地、そして地元産のミルクが、ブランドアイデンティティの形成に大きく寄与しています。リピート率も非常に高く、確かなロイヤル顧客基盤を築いています。

真の課題は、別の点にあります。当社商品の市場シェアはまだ限定的で、ブランドの認知度も十分ではありません。スイスやフランスの一部地域でも、まだ当社のチョコレートを知らない消費者が多くいます。したがって、コストを抑えながら世界的な認知度を高めることがカギとなります。

これを念頭に、経営陣を再編し、新たな人材を採用し、成長や国際展開、パフォーマンスをより重視する企業文化の構築に努めてきました。もちろん、ヴィラールが125年間にわたって守り続けてきた高い品質についてはいっさい妥協せずに、です。

グラフ
SWI swissinfo.ch

ヴィラールは1995年以降、従業員約2万6000人を抱えるフランスの食品グループ、サヴァンシア フロマージュ&デイリーの一員となっています。主なシナジー効果は何ですか?

第一に財務力です。そして、サヴァンシアの既存の国際ネットワークに、流通業者であれ小売業者であれ、アクセスが可能となったことです。

一方で、調達やイノベーションの面では、シナジー効果はそれほど高くはありません。食品分野は文化的・地域的な性格が非常に強く、さらに、スイスブランドとしての当社の立ち位置は、選択肢を自ずと限定してしまいます。当社の製品ラインはフリブールに深く根ざしており、グループの一員でありながらも、戦略面でも運営面でも高い自律性を維持しています。

ヴィラールのようなブランドが独立性を保つことは可能ですか?大きな企業グループに属することは不可欠ですか?

コメントは難しいですね。企業グループからの支援は非常に有益ですが、一方で、独立したまま事業を続け、成功している競合他社も存在します。

ヴィラールのブランド・ポジショニングは、買収後、変わりましたか?

変わっていないもの、そして今後も決して変わらないものは、スイス産プレミアムブランドとしての当社の立ち位置です。フリブールで製造し、スイス産の原材料を使い、スイスの人々の手で作る。これは決して変わりません。

例としてコンチングを挙げましょう。カカオの酸味を取り除き、風味を引き出すために粉砕・練り上げ・加熱を行う重要な工程です。多くの競合他社でこの工程は約10時間ですが、当社ではレシピによって最大53時間かけることもあります。大きなコストはかかりますが、その分、ヴィラールのチョコレートならではの独自の味わいが生まれるのです。

他のスイスのチョコレートメーカーとは異なり、ヴィラール社は製造工程のすべてを自社で管理している
他のスイスのチョコレートメーカーとは異なり、ヴィラール社は製造工程のすべてを自社で管理している Thomas Kern / SWI swissinfo.ch

ヴィラールはカカオ豆から板チョコまで、製造工程をすべて自社管理しています。こうした垂直統合の利点とは?

このアプローチは確かにコストがかかります。ですが非常に大きな創造の自由を手にし、メートル・ショコラティエとしての熟練した技を余すところなく表現し、独自の商品を生み出すことができるという利点があります。一方で、他の多くのメーカーは、専門業者からココアマスやココアバターといった半加工品を調達しています。

地政学的な緊張や米国の関税措置の影響は?

米国の最大の難しさは、その不安定さです。現在、15%の関税が課されていますが、数カ月前は39%、トランプ政権前はわずか4%でした。今後を見通すのは非常に難しい状況です。

幸い、当社は約60カ国で事業展開し、特定の市場への依存度は比較的低く抑えられています。しかし、世界の多くの地域で、保護主義が再び高まっていることを感じています。

中東については、当社のプレゼンスがまだ小さいため、直接的な影響は限られています。一方で、地域紛争は世界の観光や空港利用客数に影響しており、特にジュネーブではそれが顕著です。

「米国について最も複雑な点は、その不安定さだ」と語る
「米国について最も複雑な点は、その不安定さだ」と語る Thomas Kern / SWI swissinfo.ch

強いフラン、そしてカカオの高騰については?

最大の課題と言えるでしょう。カカオの価格は昨年、2倍になりました。板チョコレートの原価のうち最大80%をカカオが占めます。他社も同様に影響を受けていますが、大手グループはサプライヤーに対して当社より強い交渉力を持つこともあります。

そのため、私たちは常に製造効率の向上、プロセスの最適化、廃棄ロスの削減に取り組んでいます。また、最終的な販売価格を決めるのは卸先の取引先企業なので、彼らとの連携も大切です。当社は小売事業をほとんど行っていません。例外はフリブールにある歴史的な直営店のみです。

カカオの価格高騰に対応するため、カカオ含有率を下げたりサイズを小さくしたりするメーカーが多いようです。ヴィラールはどうですか?

確かに、そうした対応をする競合他社は多いですし、行き過ぎのケースも見られます。しかし、私たちはそうした対応には頼りません。

ヴィラ―ルは60カ国以上に製品を輸出しています。成長の主な原動力は?

主要市場は引き続き、スイス、フランス、そしてより広くヨーロッパ、さらに米国です。また、日本、中国、インド、そしてブラジルのような南米の大国も注視しています。

ソーシャルメディアやインフルエンサーは、どのくらい重要視していますか?

重要な役割と認識していますが、選択は慎重に行っています。B2Bの領域では、ジュネーブ拠点のパティシエ、クリストフ・ルノー氏と協働しています。彼は当社の高い品質基準と本物志向を体現してくれる存在です。一般消費者向けには、願わくばフリブールの伝統にゆかりがあって、心から食を愛する人たちが望ましいですね。

主な販売チャネルは?

スイスとフランスでは大手小売チェーンで広く取り扱われていますが、スイスドイツ語圏にはまだ大きな成長の余地があります。空港や駅、機内販売などの「トラベルリテール」にも積極的に取り組んでおり、グローブス(Globus)のような高級デパートでの展開や、企業向けギフトの提供もしています。

さらに、パティシエやレストラン経営者といったプロフェッショナル向けの事業は、スイスフランス語圏で特に重要な位置を占めています。

直販、とりわけオンライン販売はどうですか?

長い歴史を持つ自社ブティックに加え、現在は創業125周年を記念した各種イベントも企画しています。オンライン販売は一時停止していますが、再開するか真剣に検討しているところです。 eコマースは消費者からの貴重なデータや直接的なフィードバックを得られる点で、売上を上回る指標となります。

コスト削減のため、海外での製造やスイス産以外の原材料をより多く使うことを検討する可能性はありますか?

いいえ、それは論外です。私たちにとって 「Swiss Made」 は単なるマーケティングのスローガンではなく、揺るぎない現実です。もちろん、カカオのようにスイスでは調達できないものは例外ですが、この先もフリブールで製造し、原材料もスイス産を使用し続けます。競合他社が別の道を選んでも、私たちはこの姿勢を貫きます。

100%追跡可能で持続可能なカカオの調達という目標は、どこまで進んでいますか。

現在、当社が使用するカカオはすべて、環境・社会面で最も厳格な基準の一つであるレインフォレスト・アライアンスの認証を受けています。また、厳密なトレーサビリティ(追跡可能性)を求めるEU(欧州連合)の新たな森林破壊防止規則(EUDR)にも対応できる体制を整えています。

あなたが想像する10年後のヴィラール姿は?

ヴィラールが、スイス、そしてフリブールの卓越した技と精神を体現する、人間的な温かみを持つアンバサダーとして、世界中で認められた存在になっていることを願います。伝統に根ざした卓越性の象徴にしたいです。私たちのアイデンティティは、牧草地やミルクを提供してくれる牛たちに囲まれたこの土地に深く根差しています。こうした地域の魅力をこれからも発信し続けると同時に、卓越したチョコレートとして消費者から認められ愛される、唯一無二のブランドであり続けたいと考えています。

編集:Virginie Mangin、英語からの翻訳:竹原ベナルディス真紀子、校正:宇田薫

ニコラ・フォルジェ

職歴

2024年12月〜  ヴィラール・メートル・ショコラティエ(サヴァンシア・グループ)

トランスフォーメーション・ディレクターとして入社。2025年7月から同社CEO

2020〜2024年  サヴァンシア・グループ

グループ・トランスフォーメーション・ディレクターなどを歴任

2013〜2020年  EFESO マネジメント・コンサルタンツ

マネージャー、シニアマネージャー

学歴

2013年  HEC パリ(HEC Paris)、理学修士(MSc)戦略マネジメント専攻

2011年  リール政治学院(Institut d’Etudes Politiques de Lille)、文学修士(MA)政治学・公共行政専攻

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