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19世紀のルツェルン 観光の始まり 

現代建築家の代表者、スペインのカラトラバが新しくデザインしたルツェルン駅だが、一部ベル・エポック時代の彫刻も残されている。

(swissinfo.ch)

観光旅行が本格的に始まった19世紀、ルツェルンには大自然に触れたいと思う観光客が訪れるようになった。産業の発達とともに交通網も充実し、リフトやゴンドラなどが次々と建設されるようになると、観光はさらに盛んになった。

このほど出版された『スイス・美術の旅』(Kunstführer durch die Schweiz)の著者の一人、クラウディア・ヘルマンさんと観光の歴史のある「19世紀のルツェルン」を歩いた。

 リギ山、フィーアヴァルトシュテッテ湖、ウイリアム・テルなどに代表される、自由と美徳が神話化されたスイス。19世紀初めにスイスを訪れた観光客は、スイスのこうした面に惹かれたという。「1800年ごろの知識人たちの間では、山が従来のような畏怖の対象から、実際に登ってみたいと思う興味の対象となりだし、山に関連する本も多く出版された」とヘルマンさんは説明する。

外国人を見込んだ商売

「19世紀のルツェルンは、たとえばチューリヒのような産業がありませんでした。そこで、湖と山で商売をすることにしたわけです」

 ライオン記念碑を前にしてヘルマンさんは説明する。ここからは、瀕死のライオンが横たわる岩壁が見える。フランス革命でルイ16世を守るためにチュイユリー宮殿で民衆の攻撃を阻止しようとしたスイスの傭兵786人が命を落としたことを記念する記念碑だ。

 「ルツェルンは観光業の重要さを、早くから意識していました。フランス革命でスイス傭兵の悲劇が起こってから20年も経たない1819年にはすでに、この碑建立が計画されたことからも分かります。3年後には、こけら落としがあり、早速、おみやげ物やが隣接する人気の観光スポットになったのです」

交通網の発達で観光が広まる

 19世紀半ばには産業の発達に伴い、交通も整備されるようになった。山に登ったり、湖に船を出すといった自然に触れる観光も、これによりたやすくできるようになった。1837年には、ルツェルンの湖フィーアヴァルトシュテッテ湖に初の蒸気船が浮かんだ。1859年に鉄道が開通すると、より多くの観光客が訪れるようになった。1871年には登山電車、フィツナウ・リギ鉄道も開通。欧州最古のラックレール式(歯車式)鉄道だ。

 「これがまた、観光客を引き寄せる魅力となったわけです」とヘルマンさん。それまでは馬か人に担いでもらってリギ山を登ったが、電車なら楽だ。さらに1879年には、ルツェルンからゴッタルド峠までの鉄道も開設され、イタリアからの観光客がルツェルンを訪れるようになった。

観光が街の姿を変える

 交通の発展と観光客の増加により、ルツェルンの街の姿も変化して行った。中世以来、街は城壁に囲まれていたが、観光により街が湖畔のほうへ拡大し始めたのだ。さらに、観光客が楽しめるような場所を広げるために、城壁や塔など旧市街地にあった歴史的建築物の一部は壊されてしまった。

 観光客ははじめ、街中のホテルに泊まっていたが、まもなく、湖畔や山が見えるホテルが好まれるようになった。こうして1834年、眺めが良いことを売り物にして湖畔に建てられたのが「ホテル・シュヴァーネン」である。

 やがて、湖畔には雨後の竹の子のごとくホテルが立ち並び、湖畔に沿った道を散歩する人たちでにぎわうようになった。最も美しいデザインが施され、今でも目を引くのは「グランド・ホテル・パラス」。1906年に建てられた。山の中腹に見えるロマンチックなお城の外見を持つ「シュロス・ホテル・グッチ」は1884年、水圧ポンプが開発されたことで建設が可能となったホテルだ。しかし、開業8年で火事に見舞われ、現在あるのはその後新しく建て替えられたものである。また、高級ホテルチェーン「シュヴァイツァーホーフ」が1845年に営業を始めたが、これはルツェルン市内で最初に電気が通った建物だった。このホテルのために特別、当時の最新技術を持った発電所まで作られたのだった。

 ルツェルンのホテルブームは、第一次世界大戦を機にして下火となったが、今のルツェルンの街並みを作ったのが、この時代だったのだ。

swissinfo、ニコル・エビ 佐藤夕美(さとうゆうみ)意訳

キーワード

『スイス・美術の旅』(Kunstführers durch die Schweiz)、Gesellschaft für Schweizerische Kunstgeschichte (GSK)出版
全4巻のうち、このほど第1巻が発行された。
対象となっている州は、アッペンツェル両州、アールガ州、ルツェルン州、ザンクトガレン州、シャフハウゼン州、トゥルガウ州、チューリヒ州、ツーク州

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