変わりゆくバレエ教育

ジュネーブ・グランテアトル・バレエ団のリハーサル swissinfo.ch
このコンテンツは 2020/02/01 08:30

時とともに変化するダンス教育の成果の表れの一つであるローザンヌ国際バレエコンクールが、2日から始まる。第48回となる今年は、プロを目指す15~18歳の84人が参加する。

およそ500年の歴史を誇るバレエ。ルネッサンス期のイタリアで発祥し、16世紀にフランス宮廷の「娯楽」として踊られるようになった。1661年にルイ14世が王立舞踏アカデミーを創設し、その後ルイ14世のバレエ教師だったピエール・ボーシャンがバレエの基礎を考案した。1713年にパリ・オペラ座でバレエ教育が確立されてから、バレエは時代とともに舞台芸術として発展してきた。踊りはより複雑なものとなり、テクニックだけではなく、衣装やシューズも改良され、舞台装置や音楽といった構造も発展する。振付、テクニック、観客の好みによって、バレエは常に変貌を遂げている。

フランスやロシア、英国などではバレエ教師の国家資格が取得でき、ベルギー、ドイツなど欧州のほとんどの国で舞台芸術やダンスの学士号が取得可能になった。教育課程がより秩序に沿って専門的になり、ダンサーの厳しい雇用機会や転職に役立つ資格証明書が取得できる。アジアにもバレエが広まり、現在、お稽古事として一般に浸透するようになった。特に、日本、中国、韓国ではバレエ教室の増加が著しく、本場欧州へバレエ留学をする若者は増える一方だ。若手ダンサーがプロを目指すのに、国の助成や資格制度のない米国やアジアの民間の教室や学校では、バレエ教育の指導方針や要領がさらに多様化している。近年では、オンラインのバレエ講座やアカデミーも誕生している。

スイスのバレエ教育

小国スイスでバレエ教育が大きく進展したのは、この10年。2009年から舞台ダンサーとして国家資格が取れるようになった。

スイスにおけるバレエダンサーの国家資格

クラシックバレエダンサーのための「舞台ダンサーの連邦プロ資格」は、クラシック、コンテンポラリー、即興といったバレエのレッスンに加え、解剖学、社会、音楽史やダンス史、英語などの授業を受けることで、舞踏技能証明書を取得できる。チューリヒダンスアカデミーとバーゼル劇場バレエ学校で、このカリキュラムを実践している。

現在、2校で98人が受講。バーゼル劇場バレエ学校では、同コースを受講する生徒は近年増加傾向にあるが、チューリヒダンスアカデミーでは定員約60人に限定している。

プロダンサー協会「ダンス・スイス」(本部・チューリヒ)によると、スイスのバレエ人口は2000~3000人で、同協会に登録されているバレエ教師は現在220人いる。

スイスで主なバレエ団は、チューリヒ・バレエ団(Ballett Zürich)やバーゼル・バレエ団(Ballett Basel)、ベジャール・バレエ・ローザンヌ( Béjart Ballet Lausanne)、ジュネーブ・グランテアトル・バレエ団 (Ballet du Grand Théâtre de Genève)がある。

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 この連邦プロ資格取得コースの受講期間は、2020年8月の新学年度に3年から4年に引き上げられる。コースを導入しているチューリヒダンスアカデミーバーゼル劇場バレエ学校によると、身体能力の発達に伴うテクニックや芸術性の向上のために実地トレーニング期間を延ばし、バレエ団のオーディションに向けて身体を整えるのが狙いだ。プロを目指すバレエダンサーの年齢が低下する一方で、バレエ団への就職は一般的に18歳以上であることが多いため、就職難を避けるためにも教育期間を延長する。

また、プロダンサー協会「ダンス・スイス」によると、現在はバレエ教師になるための規準やバレエ教室開業に必要な許認可はないが、今春、スイスにおけるダンス教師資格の定義をさらに明確化する予定だという。

スイスでダンサーのための専門的で公的な教育制度ができて約10年が経過した。この教育制度は今、異国での高額なバレエ留学をすべきか迷うスイスの10代半ばの若者やその家族にとって、キャリアへつなげるにも経済的にも魅力的なものとなっている。

「短期間で大きな進展があった」と、バレエ指導教育で20年の経験を持つジュネーブ・グランテアトル・バレエ団のディレクター、フィリップ・コーエン氏は高評価する。

「かつてはプロのダンサーになるための十分なレベルを取得するためには、14、15歳で国や家族を離れて留学しなければならなかったが、それは必ずしも容易なことではない。しかし、国内でキャリアが積めるようになり、国内にとどまることに関心が集まるようになった」と言い、若手ダンサーにとっての利点も指摘する。

国際バレエコンクール

バレエコンクールは参加者にとっては競争と学びの場だが、バレエ指導者にとっては教育の理念を検証し指導課題に目を向ける機会ともなる。ローザンヌ国際バレエコンクールで今回審査員を務めるコーエン氏は「教育の質の向上を見ること」を心待ちにする。そして、コンクールで若手ダンサーが「優美さ」を生み出すために必要な要素として、「身体に見合ったハーモニー、作品スタイルの移り変わりについていけるかどうか、そしてその為のしっかりとした基礎技法」を挙げる。

しかし、コンクールで求められるのは、完璧なテクニックではない。コーエン氏は、バレエは芸術の職業であり、観客にバレエを踊る喜びを伝える能力や表現力豊かな演技、感情表現の才能を示すだけではなく、何よりも「楽しむものだ」と語る。

ローザンヌ国際バレエコンクール

正式名称はPrix de Lausanne(プリ・ド・ローザンヌ)で、才能豊かな若いバレエダンサーがプロの道に踏み出すことへのサポートを目的とし、スイス西部のヴォー州ローザンヌで1973年から開催されている。15~18歳の若いダンサーを対象にした世界最高の国際コンクールの一つで、若いダンサーの登竜門とも言われる。現在カンパニーとプロとして契約中、または過去にプロ契約を結んだことのあるダンサーは参加できない。

第48回ローザンヌ国際バレエコンクールは、会場のボーリュ劇場が全面改装工事中のため、モントルーで2月2日~9日に開催される。

決勝は8日に行われ、入賞者は、奨学金を受け取り希望するバレエ学校かバレエ団で1年間研修できる。

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