
スイス外務省、軍需品輸出規制の緩和を提言

スイス連邦外務省は紛争地域への軍需品輸出の規制の緩和を提言する報告書をまとめた。ドイツ語圏の日刊紙ターゲス・アンツァイガー日曜版が報じた。
外務省は3月、今夏にスイスの中立性を再定義する報告書をまとめると発表外部リンクした。同紙が入手したその草案外部リンクによると、スイスは紛争地への武器輸出は引き続き禁止するが、同盟国がスイス製兵器を紛争地に再輸出することは可能にするすべきだと提言している。
欧州や西側諸国の一部は、ロシアの侵攻に対抗するためにウクライナに武器を供与している。スイスは紛争の両当事国への軍需品輸出を禁じており、スイス製武器をウクライナに再輸出しようとしたドイツやデンマークの申請も却下した。報告書草案は、現状のままではスイスの安全保障はもはや確保できず、やがてはパートナー国にも理解されなくなると指摘した。
北大西洋条約機構(NATO)との協力関係にも触れた。現在スイスはNATOに加盟せずに「平和のためのパートナーシップ」を結んでいるが、草案はたとえ完全な加盟が不可能でも、より緊密な協力関係を探るべきだと結論付けた。
ロシアのウクライナ侵攻後、スイス政府が欧州連合(EU)の対ロ経済制裁に追随したのを受け、国内ではスイスの中立性を巡る政治的な議論が起きている。このためイグナツィオ・カシス大統領兼外相は3月に外務省にスイスの中立を再定義するよう指示し、5月の世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)では「協調的中立」を目指すと語った。ターゲス・アンツァイガー紙によると、報告書草案は協調的中立を初めて具体化している。
外務省の報道官は17日、スイスの通信社Keystone-SDAに対し、報告書は連邦政府機関と協議中で、夏の終わりまでに閣議決定される見通しだと語った。

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(英語からの翻訳・大野瑠衣子)

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