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セルゲイ・アレクサシェンコ氏「スイスの中立は役に立たない」

セルゲイ・アレクサシェンコ
swissinfo.ch

対ロシア制裁はどの程度効果があるのか。ウクライナとの戦争でスイスはどのような役割を担っているのか。ロシアのプーチン大統領反対派、セルゲイ・アレクサシェンコ氏が語る。

今回のンタビューシリーズに先立ち、swissinfo.chはロシアの反体制派を代表する人物とコンタクトを取った。政権を批判したことで身に危険が及ぶ恐れがあるため、彼らの多くは既にロシアを出国している。反プーチン派のガルリ・カスパロフ氏はクロアチアへ、企業家レオニード・ネヴズリン氏はイスラエルへ、著名エコノミストのセルゲイ・グリエフ氏はフランスへ退避。反プーチン派で経済学者のセルゲイ・アレクサシェンコ氏は米ワシントンに亡命した。

swissinfo.ch:スイスは欧州連合(EU)の対ロシア制裁に追従しました。それで十分でしょうか?

セルゲイ・アレクサシェンコ:いいえ。スイスは多くの商品取引業者が登録している国で、EUはこれらの業者の活動をくまなく把握しているわけではありません。制裁をより効果的にするには、スイスはこのような企業やプライベートバンクに関し、追加的措置を講じる必要があります。

swissinfo.ch:他にどのような点でスイスを批判しますか?

アレクサシェンコ:ウクライナの負傷兵に対する医療支援提供を拒否したことです。治療後に兵士たちが再び戦場に戻ることを恐れたためというのが理由です。何かをしようと思う人はその道を見つけ、何もしたくない人は言い訳を探します。スイスがヒューマニズムの観点から行動するのであれば、例えば、回復に長期間を要するような最もひどい傷を負った兵士に医療支援を提供し、戦争が終わるまでスイス国内に滞在させるといったこともできたでしょう。

とは言え、たとえ負傷兵へのケアの提供の拒否が正当化できたとしても、負傷した民間人へのケアの提供を拒否することには、いかなる正当な理由も見つけることはできません。最初の5人のウクライナ人民間人がスイスで医療を受けられるまでには、半年もかかりました。

またスイスは第三国がスイス製の武器をウクライナに売ることを禁じていますが、ロシアにはさまざまな物資を供給し続けました。その中にはEUの制裁対象となっている物資も含まれます。

swissinfo.ch:例えば過去にロシア国民を対象とした汚職防止捜査の結果が発表された後や、あるいは今、スイス当局にどのような反応を期待しますか?

アレクサシェンコ:汚職行為がスイスで犯罪と認められるか、少なくとも資金源の合法性が証明されるまで捜査対象者の資産を凍結してほしいです。このようなチェックは、銀行ではなく検察庁のような政府当局によって行われなければなりません。

swissinfo.ch:ロシアはスイスが西側諸国についたとして、既にスイスを中立の仲介役と見なしていません。中立国スイスが「役に立てる」ようにしておくのは有益ではないのでしょうか?

アレクサシェンコ:スイスの中立国としての地位は、中世に欧州で起こっていた戦争の間、国を守るために役立ちました。しかし既にナポレオン戦争の頃から、スイスはフランスに占領されてきました。第二次世界大戦中には、中立の立場はナチス・ドイツの利益追求のために利用されました。ただし形式的には、中立が破られたことはありません。

全世界を脅かすグローバルな悪に直面した時、中立を維持するのは理性的な立場ではないと私は考えます。プーチンがザポリージャ原子力発電所で核の大惨事を引き起こした場合、スイスの中立は何の助けにもなりません。善に味方する者は、連続殺人犯を止めなければなりません。誰か他の人がそうしてくれることを期待するのは勝手ですが、何もしないでいればプーチンの行動を支持するのと同じです。

swissinfo.ch:制裁にはどんな意味があると思いますか?ロシア経済はどのくらいの期間、制裁に耐えられるでしょうか?

アレクサシェンコ:制裁の意味は、技術の差を広げることでロシア経済の長期的成長性を弱め、ロシアの歳入を減らして戦争の経済的負担を増やすことです。残念ながら、ロシア経済は無期限と言っていいほど長い期間「耐える」ことができます。いかなる制裁も、ロシア経済を完全に破壊することはできません。

swissinfo.ch:それでは、どうすればいいのでしょうか?

アレクサシェンコ:戦争の決着は戦場でつきます。プーチンを敗北させるには兵器の供給しかありません。

インタビューは書面で行われました。
編集:Balz Rigendinger

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