The Swiss voice in the world since 1935
トップ・ストーリー
スイスの民主主義
ニュースレターへの登録

スイス、電子投票の全面導入は当面見送り システム欠陥で

電子投票
電子投票実現までの道のりはまだ長い Keystone / Christian Beutler

スイス連邦政府は27日、州レベルで試験運用していた電子投票システムについて、全国的に導入することは当面見合わせると発表した。電子投票システムに技術的欠陥が見つかったことや、多くの政党が導入に難色を示したことが理由という。

国内では2004年からこれまで15州が300件以上の電子投票を試験的に実施していた。2017年4月、連邦内閣は内閣事務局に対し、電子投票を通常の投票方法に追加することを見据えた法改正に向け、準備を進めるよう要請した。

当初は今年10月の連邦議会総選挙で、全26州のうち少なくとも3分の2の自治体で電子投票を行う計画だった。

しかし、州・政党に意見を募ったところ、過半数の州が電子投票の全面的導入に賛成したが、大半の政党は時期が早すぎる、または根本から反対の意思を示した。

続けるか否かは州次第

こうした反対を受け、連邦内閣は法改正を当面見送る方針を決めた。しかし、投票所での投票や郵便投票に加えて電子投票を行うかどうかは、今後も州の裁量にゆだねるとした。

全面導入の見送りには、ジュネーブ州が昨年11月、コストが賄えないとして電子投票システムの廃止を決めたことが響いた。ジュネーブと同様のシステムはアールガウ州、ベルン州、ルツェルン州も過去に導入していた。連邦レベルでは現在、このシステムは使用していない。

その後、唯一残ったのがスイス郵便のシステムだったが、2019年2月にソースコードを公開しハッキングテストを実施したところ、ソースコードに深刻な欠陥が見つかり、システムを停止した。

試験運用は続ける

連邦内閣は、全面的導入は当面見送るものの、試験運用は続けるとした。連邦内閣は試験運用を安定させるため、内閣事務局に対し2020年末までに各州と連携して試験運用の新たな方針を作るよう要請した。

今年10月の総選挙で電子投票を行うか否かは8月に決定するとした。

障害は多い

電子投票の全面的導入をめぐっては昨年3月、超党派で作るIT業界出身の議員らが、電子投票の実施を5年間凍結するイニシアチブ(国民発議)を出した。5年後、電子投票が少なくとも通常の投票方法と同等の安全性が確認されれば、凍結を解除できるという内容だ。

在外スイス人協会「民主的権利の否定」

在外スイス人協会(OSA)は今回の政府決定に対し「在外スイス人の民主的権利を否定することになる」と批判した。同協会によると、現在国外に住むスイス人は76万人に上る。同協会は昨年11月、2021年までにすべての在外スイス人が電子投票を選択できるよう求める請願書を提出している。

ku

人気の記事

世界の読者と意見交換

ニュース

詐欺を警告するPC画面

おすすめの記事

スイス銀行の顧客を騙した英国人留学生に有罪判決

このコンテンツが公開されたのは、 スイス銀行を狙った口座乗っ取り事件で、英国で刑事告訴されていた英国人学生(21)に禁固7年の有罪判決が言い渡された。スイス連邦検察庁によると、学生はスイスの銀行顧客から約240万フラン(約4億4000万円)を騙し取った。

もっと読む スイス銀行の顧客を騙した英国人留学生に有罪判決
オリーブの木

おすすめの記事

温暖化でスイスがオリーブの名産地に?

このコンテンツが公開されたのは、 スイス西部のフランス語圏は温暖化によりオリーブの木を育てやすくなっている。生産者らは2026年には栽培本数が2万本に倍増し、南部のイタリア語圏ティチーノ州を追い抜くと見込む。

もっと読む 温暖化でスイスがオリーブの名産地に?
山肌に描かれた巨大な絵

おすすめの記事

アルプスに新しい巨大地上絵が登場

このコンテンツが公開されたのは、 世界各地で巨大な地上絵を描くアーティストのSAYPE(セイプ)さんが、スイス南部ヴォー州のアルプス山頂に新作を完成させた。

もっと読む アルプスに新しい巨大地上絵が登場
原発

おすすめの記事

スイス・ゲスゲン原発、定期検査後に稼働再開できず

このコンテンツが公開されたのは、 スイス北部デニケン(ソロトゥルン州)のゲスゲン原子力発電所が2カ月近く、発電を停止している。給水配管システムに過負荷がかかっている可能性があり、安全性が証明されるまで発電を再開できていない。

もっと読む スイス・ゲスゲン原発、定期検査後に稼働再開できず
セメンヤ

おすすめの記事

欧州人権裁判所、スイスは「セメンヤさんの権利を侵害」

このコンテンツが公開されたのは、 欧州人権裁判所(ECHR)大法廷は10日、スイスが女子陸上五輪金メダリストのキャスター・セメンヤさん(南アフリカ)の権利を侵害したとする2023年の判決を支持した。

もっと読む 欧州人権裁判所、スイスは「セメンヤさんの権利を侵害」
スイス公共放送協会

おすすめの記事

スイス公共放送協会、大規模な組織再編計画を発表 人員削減も

このコンテンツが公開されたのは、 スイス放送協会(SRG SSR)は政府の予算削減を踏まえた組織再編計画を発表した。4言語圏の放送局のスポーツ、ドラマ、制作、配給、人事、財務、ITサービスなど各部門を縦割りで再編成する。

もっと読む スイス公共放送協会、大規模な組織再編計画を発表 人員削減も

swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。

他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部