米独の情報機関がスイスの暗号機器メーカー、クリプト社を秘密裏に長年所有し、同社のデバイスを使って世界各国の機密情報を収集していたとされる問題で、スイスのカスパー・フィリガー元国防相はクリプト社と米中央情報局(CIA)の関係は「知らなかった」と否定した。
このコンテンツが公開されたのは、
スイスのメディアは、CIAの文書によれば、クリプト社がCIAの傘下にあったことをフィリガー氏は知っていたと報じた。1989~95年に国防相を務めたフィリガー氏はドイツ語圏のスイス公共放送(SRF)に対し、CIAの記録は「正しくない」と声明で反論した。
SRFとドイツ語圏の日刊紙ターゲス・アンツァイガーはこのCIA文書の中に、フィリガー氏はクリプト社がCIAの影響下にあることを熟知していたという趣旨の内容がある、と指摘している。
両メディアによると、CIA文書には「フィリガーは会社(クリプト社)の所有者を知っていて、道義的にそれを開示しなければならないのではないかと感じていた…だがフィリガーがそれを口にすることはなかった」と記されていた。
フィリガー氏は1996年から2003年まで財務相を務めた人物でもある。フィリガー氏は自身の責任問題に関しては否定し「私に対するCIAの記述だが、これは正しくない。(もしそのような問題があれば)詳しい状況説明が、すぐに私のところに来るはずだからだ」とコメントした。
おすすめの記事
おすすめの記事
スイスの暗号化企業、CIAのスパイ活動に関与
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの通信暗号化企業クリプト(本社・ツーク)が半世紀近くスパイ活動を行っていたとの疑惑で、スイス政府が調査に着手したことが明らかになった。
もっと読む スイスの暗号化企業、CIAのスパイ活動に関与
影響
一連の報道を受け、スイス連邦政府は11日、この問題に関し調査を開始したことを認めた。
米CIAと独連邦情報局(BND)は1971年、ツーク拠点のクリプト社を共同で買収。クリプトの所有者は、リヒテンシュタインで登録されたダミー会社になっていた。これらの情報機関によるスパイ疑惑は、米ワシントンポスト、独公共放送局ZDF、SRFが今週報じた。
情報機関は数十年にわたり、世界中の政府、大使館、軍事司令部の間の機密情報を秘密裏に収集。少なくとも2018年まで続き、世界100カ国以上が標的にされたという。
クリプト社の社内でこうした行為を把握していたのかどうかは不明だ。SRFは12日、CIA文書にツーク選出のゲオルグ・シュトゥッキ元議員の名前があったと報じた。シュトゥッキ氏は、1992年から2016年までクリプト社の執行役員だった。CIA文書には、シュトゥッキ氏には、クリプト社の最高経営責任者(CEO)からスパイ行為の情報が伝えられていたと書かれていた。
89歳のシュトゥッキ氏はこれに対し「全く覚えていない」と否定した。
スイスの政界からは様々な意見が飛ぶが、早期の事実解明を求める声がほとんどだ。政治家はスイス政府の調査開始を支持したが、政府の関与が明らかになった場合、議会調査委員会(PUK)の設置を求める声も挙がる。
議会の事業監査委員会のアルフレッド・ヘール委員長は13日、委員会は独自にスイス政府の関与の有無を調べると述べた。6月末までに最終報告書を出す予定という。
おすすめの記事
「気候活動家への団結心」見せた判事、類似事件への関与禁止 スイス最高裁
このコンテンツが公開されたのは、
スイス連邦裁判所(最高裁)は先月26日、チューリヒ地方裁判所の判事の1人に対し、気候活動家に関する裁判への関与を禁じる判決を下した。この判事が過去の裁判で活動家への団結心を見せたとして、考え方に偏りがあると結論付けた。
もっと読む 「気候活動家への団結心」見せた判事、類似事件への関与禁止 スイス最高裁
おすすめの記事
スイス、2023年の実質賃金は0.4%低下
このコンテンツが公開されたのは、
スイス連邦統計局は25日、2023年の名目賃金は1.7%上昇したと発表した。インフレ(年平均2.1%)に相殺され、実質賃金は0.4%低下した。
もっと読む スイス、2023年の実質賃金は0.4%低下
おすすめの記事
製薬大手ノバルティス、次期会長候補に米製薬BMS出身者選出
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの大手製薬ノバルティスは22日、2025年で任期満了となるヨルク・ラインハルト取締役会長の後任に、ジョバンニ・カフォリオ氏を選出すると発表した。
もっと読む 製薬大手ノバルティス、次期会長候補に米製薬BMS出身者選出
おすすめの記事
スイスで見つかったラムセス2世像破片、エジプトに到着
このコンテンツが公開されたのは、
エジプト考古省は21日、約30年前に盗まれ国外に流出したラムセス2世像の頭部破片が同国に到着したと発表した。
もっと読む スイスで見つかったラムセス2世像破片、エジプトに到着
おすすめの記事
スイス議会、G7のロシア資産追及チームへの参加を否決
このコンテンツが公開されたのは、
スイス国民議会(下院)は17日、ロシアのオリガルヒ(新興財閥)の資産を追及する主要7カ国(G7)の国際作業部会には参加しないことを決めた。
もっと読む スイス議会、G7のロシア資産追及チームへの参加を否決
おすすめの記事
米・イラン、攻撃前に「スイスを通じて」接触
このコンテンツが公開されたのは、
米政府高官は14日、イランによるイスラエル攻撃の前後に、米国は利益代表国であるスイスを通じてイランと接触していたと述べた。
もっと読む 米・イラン、攻撃前に「スイスを通じて」接触
おすすめの記事
チューリヒ春祭りの雪男、強風で燃えず 歴史上初
このコンテンツが公開されたのは、
チューリヒの春祭り「セクセロイテン」が15日開かれた。巨大な「雪男」を燃やして夏の天気を占う恒例行事は強風により中止となった。
もっと読む チューリヒ春祭りの雪男、強風で燃えず 歴史上初
おすすめの記事
スイス政府、銀行規制の改革案を発表 UBSの資本要件強化へ
このコンテンツが公開されたのは、
スイス政府は10日、「大きすぎて潰せない(TBTF)」銀行に関する規制改革案を発表した。UBSと他の「システム上重要な銀行」3行は、破綻時のスイス経済への影響を抑えるためにより厳しい資本要件を課される必要があると述べた。
もっと読む スイス政府、銀行規制の改革案を発表 UBSの資本要件強化へ
おすすめの記事
新種のイカの化石、名前は発音が難しいスイスドイツ語に
このコンテンツが公開されたのは、
スイス南部ティチーノ州の約2億4200万年前の地層から新種のイカの化石が見つかり、「Chuchichäschtli(クッヒカーシュトリ、スイスドイツ語で『食器棚』)」と名付けられた。
もっと読む 新種のイカの化石、名前は発音が難しいスイスドイツ語に
おすすめの記事
スイスのサマータイム廃止はいつ?
このコンテンツが公開されたのは、
スイスで夏時間(サマータイム)が始まった。3月31日午前2時にすべての時計の針が1時間ジャンプし、午前3時を指した。だが夏時間制はとうの昔に廃止されるはずではなかったのか?
もっと読む スイスのサマータイム廃止はいつ?
続きを読む
おすすめの記事
クリプトとCIAの関係 スイス政界に余波
このコンテンツが公開されたのは、
米独の情報機関が1970年にスイスの暗号機器メーカーを秘密裏に買収し、数十年間にわたって同社デバイスを使い世界各国の機密情報を収集していた問題で、スイスメディアでは、両者の関係を認識していたという元閣僚や連邦議会議員の名前が複数挙がっている。
もっと読む クリプトとCIAの関係 スイス政界に余波
おすすめの記事
スイス関与のスパイ疑惑、どう解明していく?
このコンテンツが公開されたのは、
「ルビコン作戦」がスイス中を揺るがしている。スイスの暗号機メーカー、株式会社クリプトをめぐるスパイ疑惑の真相を解き明かすため、スイス史上5番目の議会調査委員会(PUK)が立ち上がる可能性がある。危機的な事件が発生した時のみ設立される機関だ。
もっと読む スイス関与のスパイ疑惑、どう解明していく?
おすすめの記事
スパイ疑惑はスイスの中立性を汚すのか
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの暗号化企業クリプト社をめぐるスパイ疑惑は、永世中立国家スイスのアイデンティティを揺るがしている。スイスの政治家、歴史家、メディアの間ではスイス製の不正デバイスが国の信用に与える悪影響について議論がかまびすしい。
もっと読む スパイ疑惑はスイスの中立性を汚すのか
おすすめの記事
スイスの暗号化企業、CIAのスパイ活動に関与
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの通信暗号化企業クリプト(本社・ツーク)が半世紀近くスパイ活動を行っていたとの疑惑で、スイス政府が調査に着手したことが明らかになった。
もっと読む スイスの暗号化企業、CIAのスパイ活動に関与
おすすめの記事
真相解明求めるスイス政界 クリプト社のスパイ疑惑に動揺
このコンテンツが公開されたのは、
いつ誰が何を知っていたのか?米独諜報機関がスイスの暗号化企業製造によるデバイスを使い、他の国をスパイしていた事実が明らかになり、スイスの政界にも衝撃が広がっている。
もっと読む 真相解明求めるスイス政界 クリプト社のスパイ疑惑に動揺
おすすめの記事
スパイ疑惑、永世中立国スイスに激震
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの企業によるスパイ疑惑がスイス全土を震撼させている。スイス公共放送(SRF)などの国際合同報道で、ツーク州の株式会社クリプトが2018年まで米中央情報局(CIA)のスパイ活動に加担していたことが明らかになった。
もっと読む スパイ疑惑、永世中立国スイスに激震
おすすめの記事
現在のスパイ活動、人との接触はいまだ重要
このコンテンツが公開されたのは、
今から数年前、米中央情報局(CIA)捜査官数人がジュネーブで、ある1人の銀行員を泥酔状態にさせ、そのうえで車を運転するよう説得した。そそのかされた銀行員は結局、警察に捕まってしまった。しかしその後、CIA捜査官らは銀行…
もっと読む 現在のスパイ活動、人との接触はいまだ重要
swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。
他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。