スイス議会が外国での罰金支払いを税額控除の対象に加えたことで、スイスの銀行UBSの納税額は大きく変わるかもしれない
© Keystone / Gaetan Bally
スイス連邦議会は、企業が外国政府から科された罰金を、スイスで納める税金から控除できるようにすることに賛成した。控除を不可とする政府案が覆された格好だ。
このコンテンツが公開されたのは、
国民議会(下院)は2日の採決で、全州議会(上院)が可決済みの修正案を賛成108票、反対86票で可決した。春季会期末(3月20日)に上下両院で最終採決にかけられる。
修正案は①罰金がスイスの公共秩序を乱す②「納税企業が法律を守るために全ての合理的措置を講じたと信頼できる形で証明した――の二つを満たす場合、支払った罰金を経費として控除できるようにする。
国内の制裁や罰金は控除の対象外。
左派政党が強く反対していたが、勢いを欠いた。下院での採決後、社会民主党のプリスカ・ビラー・ハイモ氏は「税による補助金だ」と批判した。
政府の原案では、企業が外国政府に科された罰金を税から控除することはできなかった。上院も当初は政府案を支持していたが、昨年12月に修正案を可決した。
スイスの銀行UBSは2019年、フランス人顧客の脱税をほう助したとして仏裁判所に計45億ユーロ(約5400億円)の罰金と損害賠償を命じられた。UBSは上訴している。
下院で可決された修正案が最終的に可決成立すれば、スイス税務当局はUBSが法令を順守するために全ての合理的な措置を講じたかどうかを評価することになる。講じたと判断されれば、UBSは仏当局に支払った罰金を控除して税金を納めることが許される。
これまで、企業が罰金や制裁金などを税金から控除できるかどうかについては明確なルールが連邦レベルではなかった。州ごとに法律が異なり不確実だと批判されたのを受け、政府・議会が法定化を進めていた。
おすすめの記事
スイス政府、相互関税で米国との協議継続を表明
このコンテンツが公開されたのは、
米国がスイスに課す39%の「相互関税」をめぐり、スイス政府は4日、米国との協議を続け「より魅力的な提案をする」と表明した。
もっと読む スイス政府、相互関税で米国との協議継続を表明
おすすめの記事
トランプ政権、スイスに39%の相互関税を発表
このコンテンツが公開されたのは、
米国はスイスに課す相互関税率を39%と発表。スイス政府は「大変遺憾に思う」と表明した。
もっと読む トランプ政権、スイスに39%の相互関税を発表
おすすめの記事
スイス銀行の顧客を騙した英国人留学生に有罪判決
このコンテンツが公開されたのは、
スイス銀行を狙った口座乗っ取り事件で、英国で刑事告訴されていた英国人学生(21)に禁固7年の有罪判決が言い渡された。スイス連邦検察庁によると、学生はスイスの銀行顧客から約240万フラン(約4億4000万円)を騙し取った。
もっと読む スイス銀行の顧客を騙した英国人留学生に有罪判決
おすすめの記事
温暖化でスイスがオリーブの名産地に?
このコンテンツが公開されたのは、
スイス西部のフランス語圏は温暖化によりオリーブの木を育てやすくなっている。生産者らは2026年には栽培本数が2万本に倍増し、南部のイタリア語圏ティチーノ州を追い抜くと見込む。
もっと読む 温暖化でスイスがオリーブの名産地に?
おすすめの記事
アルプスに新しい巨大地上絵が登場
このコンテンツが公開されたのは、
世界各地で巨大な地上絵を描くアーティストのSAYPE(セイプ)さんが、スイス南部ヴォー州のアルプス山頂に新作を完成させた。
もっと読む アルプスに新しい巨大地上絵が登場
おすすめの記事
スイス・ゲスゲン原発、定期検査後に稼働再開できず
このコンテンツが公開されたのは、
スイス北部デニケン(ソロトゥルン州)のゲスゲン原子力発電所が2カ月近く、発電を停止している。給水配管システムに過負荷がかかっている可能性があり、安全性が証明されるまで発電を再開できていない。
もっと読む スイス・ゲスゲン原発、定期検査後に稼働再開できず
おすすめの記事
欧州人権裁判所、スイスは「セメンヤさんの権利を侵害」
このコンテンツが公開されたのは、
欧州人権裁判所(ECHR)大法廷は10日、スイスが女子陸上五輪金メダリストのキャスター・セメンヤさん(南アフリカ)の権利を侵害したとする2023年の判決を支持した。
もっと読む 欧州人権裁判所、スイスは「セメンヤさんの権利を侵害」
おすすめの記事
スイスの抗生物質開発企業、塩野義と研究・ライセンス契約を締結
このコンテンツが公開されたのは、
抗生物質の開発に特化するスイスの新興バイオ企業ビオヴェルシス(BioVersys)は2日、日本の塩野義製薬と共同研究・独占ライセンス契約を結んだと発表した。
もっと読む スイスの抗生物質開発企業、塩野義と研究・ライセンス契約を締結
おすすめの記事
スイス公共放送協会、大規模な組織再編計画を発表 人員削減も
このコンテンツが公開されたのは、
スイス放送協会(SRG SSR)は政府の予算削減を踏まえた組織再編計画を発表した。4言語圏の放送局のスポーツ、ドラマ、制作、配給、人事、財務、ITサービスなど各部門を縦割りで再編成する。
もっと読む スイス公共放送協会、大規模な組織再編計画を発表 人員削減も
おすすめの記事
スターリンクの衛星アンテナ設置に反対運動 スイス南部
このコンテンツが公開されたのは、
米宇宙企業SpaceX(スペースX)が運営する通信衛星「Starlink(スターリンク)」のアンテナ40基をスイス南部の村に設置する計画に対し、反対する声が上がっている。
もっと読む スターリンクの衛星アンテナ設置に反対運動 スイス南部
続きを読む
おすすめの記事
スイス、税の透明性向上へ法改正
このコンテンツが公開されたのは、
スイス連邦政府は税の自動的情報交換制度を強化するため、法改正案を閣議決定した。
もっと読む スイス、税の透明性向上へ法改正
おすすめの記事
納得できる?スイスの軽減税率
このコンテンツが公開されたのは、
日本で10月1日から消費税率が8%から10%に引き上げられ、同時に軽減税率が導入される。スイスでは1995年に消費税に当たる付加価値税(VAT)が始まり、その当時から軽減税率が組み込まれている。民主主義の優等生を自負するこの国で、VATは民主的と言えるのだろうか。
もっと読む 納得できる?スイスの軽減税率
おすすめの記事
巨大IT企業への課税、スイスに痛手か
このコンテンツが公開されたのは、
多国籍企業が税制上の抜け穴を利用した課税逃れを防止するため、国際的な課税ルールの抜本的な改革が急ピッチで進められている。6月の主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)でも、巨大IT企業への「デジタル課税」ルールが焦点の一つになった。ただ、低税率で多国籍企業を誘致してきたスイスは、国際課税ルールの強化で大きな痛手を受ける可能性がある。
もっと読む 巨大IT企業への課税、スイスに痛手か
おすすめの記事
スイスの銀行、マイナス金利の負担は累積9千億円に
このコンテンツが公開されたのは、
スイス国立銀行(中央銀行、SNB)がマイナス金利政策を導入した2015年以来、スイスの銀行がSNBに支払った金利は80億フラン(約9千億円)にのぼることが独民間調査会社の調べで分かった。2019年は最も多い20億フランを支払った。
もっと読む スイスの銀行、マイナス金利の負担は累積9千億円に
おすすめの記事
スイス国内の税収格差是正 改革が利するのは誰か
このコンテンツが公開されたのは、
スイスには独自の再分配制度があり、毎年、国内の豊かな州から貧しい州へと多額のお金を動かしている。この制度については盛んな議論が交わされ、不満の声も多く、そして改革も行われてはいるが、今もなお連邦モデルの屋台骨であり続けている。
もっと読む スイス国内の税収格差是正 改革が利するのは誰か
おすすめの記事
スイスは富の公正な再分配を実現するユートピアか
このコンテンツが公開されたのは、
貧富の格差拡大について多くの国で議論されている中、「スイスは富を均等に分配している」と称賛するコラムが米日刊紙ニューヨーク・タイムズに掲載された。スイスはスカンジナビアと比較すると社会主義的でこそないが、それに優るユートピアだという。さて、このテーゼはどのくらい真実なのだろうか。
もっと読む スイスは富の公正な再分配を実現するユートピアか
swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。
他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。