医薬品規制機関スイスメディック(Swissmedic)は22日、米製薬・日用品大手ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)製の新型コロナウイルス感染症ワクチンの使用を承認した。国内で承認されたワクチンはこれで3種目。ただスイスは同ワクチンを購入していない。
このコンテンツが公開されたのは、
スイスメディックの発表外部リンクによると、承認したのはJ&Jグループの米ヤンセンファーマが開発した1回接種型のワクチン。18歳以上を対象に、一時的に使用を認める。
J&J製ワクチンは既に米国、カナダ、欧州連合(EU)で承認済み。米国では供給が始まったが、欧州では早くても今年の第2四半期になる見通しだ。
スイスは昨年、第一陣のワクチン購入計画を進める段階で、供給時期の遅さを理由に同ワクチンを候補から外した。連邦保健庁公衆衛生局のノラ・クロニク副局長は最近、同ワクチンが国内で供給可能になるのは秋以降になるため、現時点では使用を考えていないと発言外部リンクしている。
スイスメディックによると、提出された臨床試験データでは、被験者の年齢層で平均66.9%の有効性が確認された。
また、臨床試験のデータからは「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症・重篤化が(約85%のケースで)防げるほか、ブラジル・南アフリカで確認された変異株(SARS-CoV-2変異株)にも効果があった」ことが示されたという。
J&J製ワクチンは接種が1回で済み、超低温冷凍が必要ないため保管や輸送を簡素化できるのが特徴。スイスメディックによると、保管温度は摂氏マイナス25~マイナス15度で、冷凍輸送か、解凍後に2度~8度で輸送する。解凍後でも未開封であれば冷蔵庫で最大3カ月保管できる。
スイスメディックは同ワクチンの仕組みについて「新型コロナウイルスのスパイクタンパク質を作る『設計図』を含んだヒトのアデノウイルス(風邪ウイルス)がベースになっている。これが、ヒトの免疫細胞でウイルスに対し望ましい免疫反応を引き起こす基礎を形成する」と説明した。
ワクチン不足で接種に遅れ
スイス連邦政府は860万人の人口に対し、米ファイザー/独ビオンテック、米モデルナ、英アストラゼネカ、独キュアバック、米ノババックスの5社との間で約3600万回分のワクチン供給を契約済み。スイスメディックはこのうちファイザー/ビオンテック製、モデルナ製の2種の使用を承認した。アストラゼネカ製は承認審査中。
スイスのワクチン接種は昨年末に始まった。政府は1日最大7万本のペースで、夏までに人口の約7割に当たる600万人に、任意で投与を終えたい考えだ。各州がワクチン接種に必要なインフラ整備を進める一方、連邦政府はワクチン不足のため接種の進捗状況が「不十分」と認めている。
今年1月、スイス公共放送協会(SRG SSR)が実施した世論調査では、回答者の41%がワクチン接種をすぐにでも受けたいと答えた。
おすすめの記事
おすすめの記事
スイスのコロナ情報 マスク義務再開はなし
このコンテンツが公開されたのは、
スイスは4月1日、新型コロナウイルス感染症に対する全国的な感染対策を全て撤廃した。秋冬の感染再拡大が懸念される中、スイス公衆衛生当局はマスク義務の再開は必要ないとしている。
もっと読む スイスのコロナ情報 マスク義務再開はなし
おすすめの記事
スイス検察、国民投票の不正疑惑を捜査
このコンテンツが公開されたのは、
スイス検察当局は、国民投票の提起に必要な署名が偽造されたとの疑惑を捜査している。収集代行業者が過去の署名を使い回したり、金銭を見返りに署名を集めた可能性がある。
もっと読む スイス検察、国民投票の不正疑惑を捜査
おすすめの記事
1000人超でアルプホルン演奏 スイスで世界記録を更新
このコンテンツが公開されたのは、
スイスのニトヴァルデン準州クレヴェンアルプで31日、1000人以上のアルプホルン奏者が集まり、「アルプホルンを合奏する人数」の世界記録を更新した。
もっと読む 1000人超でアルプホルン演奏 スイスで世界記録を更新
おすすめの記事
社会民主党、収入約16億円で全政党トップ 政治資金報告書
このコンテンツが公開されたのは、
スイス連邦監査院(SFAO)が30日、2023年の政治資金報告書を発表した。
もっと読む 社会民主党、収入約16億円で全政党トップ 政治資金報告書
おすすめの記事
スイス政府、原発の新設解禁に前向き
このコンテンツが公開されたのは、
スイス連邦政府は28日、「すべての人にいつでも電気を:ブラックアウト(全域停電)を止めよ」と題するイニシアチブ(国民発議)に反対を表明した。ただ、新たな原子力発電所建設の解禁には原則として支持する考えを示した。
もっと読む スイス政府、原発の新設解禁に前向き
おすすめの記事
マッターホルンの麓町ツェルマット、日帰り客に入場料を検討
このコンテンツが公開されたのは、
スイスを代表する名峰マッターホルンの麓町ツェルマットは、日帰り観光客の多さに悩んでいる。 現在、入場料の徴収を検討中だ。
もっと読む マッターホルンの麓町ツェルマット、日帰り客に入場料を検討
おすすめの記事
パリ協定遠く…スイス全州で気候変動対策不十分 WWF調査
このコンテンツが公開されたのは、
世界自然保護基金(WWF)スイスは27日、スイスの全ての州でパリ協定の目標達成に向けた十分な取り組みが行われていないとの分析結果を発表した。
もっと読む パリ協定遠く…スイス全州で気候変動対策不十分 WWF調査
おすすめの記事
スーダン停戦交渉、和平合意なく終了
このコンテンツが公開されたのは、
スイス・ジュネーブ地方で10日にわたって行われたスーダン内戦の停戦協議が23日、停戦合意に達することなく終了した。
もっと読む スーダン停戦交渉、和平合意なく終了
おすすめの記事
スイス観光地ブリエンツの土砂災害 予想より被害深刻で鉄道路線に影響
このコンテンツが公開されたのは、
12日にスイス・ベルン州を襲った嵐の影響で土砂崩れなどの被害を受けた人気観光地ブリエンツ村の一部では、依然として閉鎖が続いている。
もっと読む スイス観光地ブリエンツの土砂災害 予想より被害深刻で鉄道路線に影響
おすすめの記事
マッターホルンで登山者の滑落死相次ぐ
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの名峰マッターホルンで16 日、登山者が下山中に800m下の氷河に滑落し死亡した。同じ山では14日にも、別の登山者2人が滑落死した。
もっと読む マッターホルンで登山者の滑落死相次ぐ
おすすめの記事
チューリヒ動物園、49歳のアジアゾウを安楽死
このコンテンツが公開されたのは、
チューリヒ動物園は12日、49歳の雌ゾウ、セイラ・ヒマリを安楽死させたと発表した。長年、健康上の問題に苦しんでいた。
もっと読む チューリヒ動物園、49歳のアジアゾウを安楽死
続きを読む
おすすめの記事
スイス当局「アストラ製ワクチン、承認にはデータ不十分」
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの医薬品承認機関スイスメディック(Swissmedic)は、審査中の英アストラゼネカ製新型コロナウイルス感染症ワクチンについて、承認に十分な確固たる臨床試験データがまだそろっていないと語った。
もっと読む スイス当局「アストラ製ワクチン、承認にはデータ不十分」
おすすめの記事
ワクチン接種、まだ長く待たされる理由とは
このコンテンツが公開されたのは、
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン接種が数カ国で始まった。スイスの一部の州では今週始まる。だが世界の需要に見合う量を製造できるようになるまでには、何年もかかりそうだ。
もっと読む ワクチン接種、まだ長く待たされる理由とは
おすすめの記事
米モデルナのワクチン製造ライン、スイスで立ち上げ進む
このコンテンツが公開されたのは、
スイス南部ヴァレー州フィスプにある製薬大手ロンザ社の工場は今、慌ただしい雰囲気に包まれている。米バイオ企業モデルナが研究開発する新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンの今年後半の製造開始に向け、従業員は生産ラインの立ち上げに懸命だ。
もっと読む 米モデルナのワクチン製造ライン、スイスで立ち上げ進む
swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。
他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。