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スイスのイスラム教徒は何を考えているのか?

フェービッチャ・エフェンディッチさん。エンメンブリュッケ ( Emmenbrücke ) にあるボスニア文化センターの入り口にて swissinfo.ch

スイスに住むイスラム教徒のうち、その教えを固く守っているのは約15%にすぎない。大部分は沈黙を守る世俗的なイスラム教徒だ。彼らはスイス社会に融合しているため目立たない存在となっている。

このコンテンツは 2010/02/04 15:25

筆者が訪ねたエンメンブリュッケ ( Emmenbrücke ) にあるボスニア文化センターの広々としたレストランは、半分弱の席が埋まっていた。女性の姿やボスニア出身以外の人たちの姿はない。

ボスニア文化センターを訪れて

「文化センターは全ての人のために開放されていますが、スイス人がここを訪れるのはまれです」
と代表のフェービッチャ・エフェンディッチさんは、ボスニア文化センターについて昼食を取りながら説明する。今日のランチメニューはチキンに野菜とライス添えだが、バルカン地方の郷土料理チェヴァプチチを注文することもできる。

文化センターは「ルツェルン・イスラム教協会」に属し、かつて映画館だった建物の中に入っている。協会のメンバーが8年間ボランティアとして働き、レストラン、図書館、若者たちの集会所、催事ホール、モスクが付属する文化センターに改築した。

このモスクはスイスで2番目に大きいが、エフェンディッチさんは、モスクが建物のセンターの敷地を占める割合はほんの2割だけで、さほど大きくはないと語る。

エフェンディッチさんはボスニアではイスラム教の指導者「イマーム ( Imam )」だった。同氏が30年前にスイスに来た当初は道路工事現場で働き、後にコープの野菜売り場で働いた。現在はルツェルン・イスラム教協会で名誉職を務めているが、イマームではない。

エフェンディッチさんは、この協会自体、モスクにミナレットを建設することを重視していないとはいえ、ミナレット建設反対のイニシアチブが可決されてすっかり落胆したと語る。
しかし、話は途中で途切れてしまった。というのも、祈りの時間になり、エフェンディッチさんは席を立って行ったからだ。

ギャラリーに2人の女性が姿を現した。その間、男性たちは下階にある大きなモスクで祈りを捧げている。女性のうちの1人が近所に住み、毎日文化センターに祈りに来て知人と会うが、ここを訪れるのは大抵夜の時間帯だと語ってくれた。
「夜になるともっと女性がいます。彼女たちは、日中は大抵家にいて子どものために料理をしています」
とボスニア出身の彼女は語る。

この協会はイスラム教徒の社会融合のために具体的に何をしているかとの問いに、
「わたしたちはみんな、旧ユーゴスラビア出身で共産主義社会の中で宗教弾圧を受けました。この経験からわたしたちがこの場所で現在優先すべきことは、ここを訪れる人々に本来の宗教のしきたりを伝えることです。確かに社会融合のためにもっと努力すべきです。しかし全てのことを一度にはできませんから」
と彼女なりの気持ちを語ってくれた。

新しい指針を必要とするヨーロッパ内のイスラム教徒

「イスラム教徒の社会融合は緩やかなプロセスで、モスクやイスラム教協会ではなく、職場や学校で進んでいます」
とチューリヒで服飾デザイナーとして勤めているビューレント・オーツァルさんは強調する。

オーツァルさんはドイツで生まれ育ったトルコ人で、典型的な2世だ。スイスには12年間住んでいる。彼は敬虔なイスラム教徒で最近メッカに巡礼したので、巡礼を実行した者だけに与えられる別名「ハージー ( Hajii )」を名乗っている。

「わたしはもっと多くの信者たちが集まる本物のモスクで祈りたいのです。それは価値の認められたモスクでなければなりません。イスラムの礼拝堂は単なる祈りの場以上に価値ある場所だからです。わたしは『裏庭的なモスク』は好きではありません。それなら家で1人祈りをささげたほうがよいです」

オーツァルさんは圧倒的多数のスイスのイスラム教徒と同様、イスラム教協会に属していない。彼はその理由をはっきりと述べる。
「これらの協会には、永遠に古き時代から抜け出られないままで、わたしにとって意義のないことを話し、意義ある話をすることなどそもそもできない人たちがいます。彼らは外部に対しては知的でオープンに振舞っていますが、内部では保守的で、時には浮世離れしていて寛大ではありません」

正統なイスラム教に対して批評したことでオーツァルさんは命を狙うと脅迫を受けたことがある。彼は宗教が改革されることを望み、次のように語る。
「特にわたしたちのようなヨーロッパに暮らすイスラム教徒には新しい指針が必要です。現代に生きるわたしたちは、どうすればアッラーの言葉を理解することができるでしょうか。コーランでは頻繁に生活の知恵が説明されています。ただ1430年も前の生活の知恵では疑問と誤解が生まれるだけです」

イスラム教組織に対する疑念

チュニジアで生まれたサイーダ・ケラー・メッサーリさんは5年前に「進歩的なイスラム教徒を目指すフォーラム」を創立した。
「スイスのイスラム教組織が、イスラム教徒を代表して ( イスラム教徒全員がそう思っているかのように ) 発言することに嫌気がさしたからです」
とケラー・メッサーリさんはフォーラム創立の理由を語る。

スイスのイスラム教組織は宗教を実践するために役立っているが、父権制で構成され、批判を受け入れることをしない。しかし、大抵のイスラム教徒にとって大切なことは、イスラム教徒としての立場を誇示することではなく、この土地スイスの国民としての立場を明確にすることなのだ。

伝統的なイスラム教の教えによればイマームはコーランを先唱するだけでなく、全ての信者がイマームの教えを信じ、従うべき存在だ。
「これは自由主義的で世俗的なイスラム教徒には理解し難いことです。特に教養のある女性は結婚問題をイマームに相談することを躊躇 ( ちゅうちょ ) します」
とメッサーリさんは語る。こういった背景から「進歩的なイスラム教徒を目指すフォーラム」は女性のイマームが認められることや、イスラム教にかかわりのある人々のための相談場所をモスク以外に設けることを求めている。

エフェンディッチさん、オーツァルさん、ケラー・メッサーリさんはみんな、ミナレット建設反対のイニシアチブが可決されたことを残念に思っている。この結果は宗教の自由を侵害することを意味するからだ。しかし、それと同時にケラー・メッサーリさんは、ミナレット建設反対のイニシアチブにイスラム教徒も含め多数が賛成していることに理解を示している。
「国民投票結果は、イスラム教組織に対する疑念とイスラム教に対する厳しい解釈とも読み取れるでしょう」

スザンネ・シャンダ 、swissinfo.ch
(ドイツ語からの翻訳、白崎泰子 )

スイスで暮らすイスラム教徒の状況と背景

スイスにはおよそ40万人のイスラム教徒が暮らしている。彼らのほとんどが旧ユーゴスラビアやトルコ出身。
イスラム教徒と呼ばれる人たちの約15%が信仰を実生活に取り入れ、宗教団体に属している。
「イスラム教団体連盟 ( Föderation Islamischer Dachorganisationen Schweiz/Fids ) 」は約140のイスラム教団体と提携している。
イスラム教徒の85%は宗教団体に所属せず、個人で信仰を実践しているか、もしくは全く信仰していないとされている。彼らは公共ではイスラム教徒として認識されていない。
「進歩的なイスラム教徒を目指すフォーラム」はイスラム教徒、キリスト教徒、ユダヤ教徒など異なる宗教を信仰するスイス人たちが集い、イスラム教に関して討論する場として認識されている。
彼らはコーランを古き時代の聖典と解釈し、コーランのしきたりは改革可能で、現代に適合されるべきだとしている。

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