
アッペンツェル、新観光戦略で脱マスツーリズムへ

スイス北東部のアッペンツェル・インナーローデン準州は観光地としてとても人気がある。ただ、観光客の増加に伴う弊害も顕在化し、関係者から改善を求める声が上がっている。
同州の人口はわずか1万6千人だが、昨年は180万人の観光客がこの地を訪れた。ほとんどは日帰りのハイキング客で、ゼーアルプ湖や、世界的に有名なゲストハウス「Äscher-Wildkirchli」を目的地としていた。
インスタグラムをはじめとするSNSの普及やアウトドア人気の高まりが近年の観光客増加を後押ししたとみられる。同州の観光収入は年間約1億2500万フラン(約180億円)で、6人に1人が観光業に従事している。
しかし、駐車場の混雑や交通渋滞、ごみの増加など、キャパシティを超える観光客の増加に伴う弊害も顕在化し、関係者から改善を求める声が上がっている。
州議会は29日、州政府が策定した観光戦略計画を基に、観光の限界について討議を行った。同戦略には15の施策が盛り込まれ、そのうちの2つは日帰り客を減らし、長期滞在客を増やすことを目的としている。同計画の施行には、議会の承認が必要となる。
同州行政府の代表を務めるローランド・デーラー氏はドイツ語圏のスイス公共放送(SRF)の取材に対し、「すべてのものには限界がある。観光と自然の健全なバランスを見つけるのが私たちの仕事だ」と語った。
スイスでは、新型コロナウイルス感染症の流行を機に、さまざまな地域で観光戦略の見直しが行われている。
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バスツアーやアジア人観光客に人気のルツェルン市は、マスツーリズムからの脱却を図るため、観光戦略計画「ビジョンツーリズム2030」を策定。スイスや欧州からの観光客や会議参加者、長期滞在者などの誘致に力を入れ始めている。
英語からの翻訳:大野瑠衣子
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