イランでの利益保護任務は「無意味」 スイス政界で仲介外交に批判
スイスは1980年以来、イランにおけるアメリカの利益代表を務めてきた。アメリカによるイラン攻撃を受け、スイス議会では利益保護任務に対する反発の声が上がっている。
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イランとアメリカの確執はついに戦争へと発展した。1980年からイランにおけるアメリカの利益保護国を務めてきたスイスにとって、この状況は特別事態だ。
利益保護任務とは 、国交・領事業務が断絶した2カ国の間を取り持ち、最低限の接触を可能にする。
スイスは当事国に代わり、外交・領事業務を引き受ける。2カ国間の情報を伝達し、財産保護を保証し、パスポートやビザの発給を代わりに行う。
スイスは現在まで、平和構築活動の柱に利益保護任務を位置付ける数少ない国の1つだ。北朝鮮との国交を持つスウェーデンも同様で、平壌のスウェーデン大使館が米国やカナダなどの利益代表を担う。詳しくはこちら
スイス外務省のモニカ・シュムッツ・キルギョズ中東・北アフリカ局長は「重要なのは、ワシントンとテヘラン間のこのコミュニケーションチャンネルが現在も開かれているということだ」と話す。
利益保護任務はスイスの外交・平和政策の一部であり、長い伝統を持つ。外交・領事関係が断絶された後も、各国間の最低限の相互接触を保証する。だが、イランにおける利益保護任務に対し批判の声が上がっている。
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イランとスイスの特別な関係
「保護任務の放棄を」
下院外務委員会に所属する中央党(Die Mitte/Le Centre)のゲルハルト・フィスター議員は、「私は長年、いわゆる『Good Offices外部リンク(良い任務=仲介外交)』はスイスがスイスのために要求しているにすぎず、実際にはイラン国民にとって非常にBad Service(悪い任務)だと考えきた」と述べた。戦争勃発に伴い、利益保護任務は不要になったとみる。
外交政策に詳しい社会民主党(SP/PS)のフランツィスカ・ロート上院議員も同意見だ。「連邦内閣(政府)は保護任務を放棄すべきだ。これがスイスが残忍なイスラム政権に対して沈黙を守ってきた主な理由だ。」
同氏はスイスが欧州連合(EU)による対イラン制裁に同調しなかたのも、利益保護任務のせいだと指摘する。「これまで我々が進めてきた宥和政策は何ももたらさない」
一方、エリザベト・シュナイダー・シュナイター氏はフィスター氏と同じ中央党・下院外交委員でありながら、全く異なる意見を持つ。「スイスは今こそ特別な役割を担い、利益保護国として緊張緩和に貢献すべきだ」
シュナイダー・シュナイター氏は、連邦内閣は交戦当事者間の仲介を行う交渉の場としてジュネーブを提供すべきだと主張する。
アメリカとイランは先月26日にジュネーブで瀬戸際の交渉に当たったが、成果は乏しく、28日の開戦を防げなかった。だがシュナイダー・シュナイター氏は「今、諦めるべきではない」と訴える。
沈静化を待つ?
議会第1党・国民党(SVP/UDC)のローランド・リノ・ビュッヘル下院議員は、自制を呼びかける。「私たちは現在、重要な役割を担っているわけではない。事態が落ち着き、紛争が終結に近づいた暁には、再びプラットフォームとしての機能を果たせるだろう」
ビュッヘル氏は利益保護任務は過大評価されているとみている。任務に含まれるのは主にビザ発給などの領事サービスにすぎず、「これは我々が何十年も果たそうとしてきた重要な外交的役割ではない」。一部の政治家が求める保護任務の放棄は誤りであり、無意味だとの見方を示した。
独語からのGoogle翻訳:ムートゥ朋子
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