平和憲法、武器輸出、日本株、地震…スイスのメディアが報じた日本のニュース
スイスの主要報道機関が4月15日~21日に伝えた日本関連のニュースから、①平和憲法のルーツを探る②武器輸出解禁③日本テック株に注目④スイス人旅行者が経験した地震、の3件を要約して紹介します。
武器の輸出は平和国家にとってタブーなのでしょうか?武装中立国スイスも、国内防衛産業を守らなければ外国製武器に頼らなければならなくなる、というジレンマを抱えています。強力な平和憲法を持つ日本、何でも国民投票で決め憲法の力が弱いスイス。決め方は異なっても、最終的な選択は同じなのかもしれません。
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平和憲法のルーツを探る
日本の平和憲法は、必ずしも戦後一方的にアメリカに押し付けられたものではない――ドイツ語圏の大手紙NZZに、日本在住のドイツ人平和学者クラウス・シュリヒトマン氏の寄稿が掲載されました。
シュリヒトマン氏が注目するのは、近代思想家の植木枝盛です。植木が1881年にまとめた憲法案(日本国国憲案)を、シュリヒトマン氏は「時代をはるかに先取りしていた」と評します。人民主権、権力分立、言論・集会・信教の自由を謳い、天皇の神格化に反対した点に加え、軍事力は憲法の擁護に厳密に限るべきだとの主張は「特に注目に値する」と強調します。
しかし日本政府はドイツ帝国に影響され、1889年に権威主義的憲法を制定。自由民権運動が弾圧されるなか、植木案はいったん忘れ去られましたが、「驚くべきことに、戦後、憲法に再び盛り込まれた」。
というのも、戦後起草された新憲法草案を代表する「憲法草案要綱」は「植木案を基にして作成された」もので、執筆した憲法研究会を率いる鈴木安蔵は「著名な植木研究者」だった、とシュリヒトマン氏は解説します。そしてこの草案こそ「ダグラス・マッカーサー司令官に完訳が送付された唯一の日本製草案」であり、「後に米軍が書き写すことができたのは、この草案だった」ということです。
シュリヒトマン氏はこうした経緯を踏まえ、次のように述べています。「戦争が再び政治の正当な手段として見なされ、憲法問題や国際秩序をめぐる新たな議論が繰り広げられている今、過去を振り返ることは意義深い」。そして日本国民が平和憲法の維持を望んでいることは、「ヨーロッパ諸国が平和構想において日本からインスピレーションを得るきっかけとなる可能性がある」と締めくくりました。(出典:NZZ外部リンク/ドイツ語)
武器輸出を解禁 破られたタブー
日本政府は21日、輸出できる武器を限定する「5類型」を撤廃し、殺傷能力のある武器の輸出が解禁されることになりました。NZZの東京特派員マルティン・ケリング記者は、「高市首相、タブーを破る」との見出し(ウェブ版)で伝えました。
ただし、輸出解禁は高市早苗政権になってから始まった議論ではなく「長いプロセスを経て実現した」と記事は解説します。その発端は安倍晋三政権下の2014年の規制緩和で、そこには「国内需要だけでは日本の防衛産業を支えきれなくなったという判断」があったといいます。
しかし韓国が国力を挙げて世界10位に入る兵器輸出国となった一方、日本兵器はほとんど輸出されていなかった、と記事は続けます。その理由として、記事は中国からの圧力への恐れが強かったこと、国の支援が限られていたこと、自公連立政権が抵抗を示していたことを挙げました。
しかし高市政権の誕生とともに「仏教色の強い」公明党が連立離脱し、2月の総選挙でも高市氏が圧倒的勝利。それにより自民党は完全な政権運営が可能となり、「そしてそれを実行した」のが今回の輸出解禁だ、と記事は位置付けました。(出典:NZZ外部リンク/ドイツ語)
日本テック株に注目
日本株式市場が好調です。スイスの金融メディアfinanzen.chは、モルガン・スタンレー(MS)のポッドキャスト番組を材料に、日本株の魅力と推奨銘柄を紹介しました。
MSによれば、日本経済には哲学の変化、インフラ投資、AI・テックブームという構造的な変化が生じています。MSが特に注目するのはAIで、「ブレークスルーが起これば、非線形的なリターンが期待できる」とみています。
また投資に当たり重視すべきは「堅実なビジネスモデル」「確立された市場地位」「平均を上回る利益成長率」だといいます。記事はMSが推奨する5つの銘柄を挙げた後、「推奨されている日本株は株価収益率(PER)が10~30倍と、米テック株に比べ極めて割安な水準にある」と指摘しました。
記事は、全体的にみて足元の上昇が短期的な上げ相場ではないことを示すサインが数多く見られる、と続けます。そして「特にIT・ソフトウェア企業は今後何年にもわたって長期的な構造変化の恩恵を受ける可能性がある」と総括しました。(出典:finanzen.ch外部リンク/ドイツ語)
スイス人旅行者が経験した地震
20日午後に三陸沖でマグニチュード7.7の地震が発生し、一時は津波警報・注意報が発表されました。スイスメディアの間では、2011年3月の地震・津波で福島第一原子力発電所の事故が起こったことと合わせて報じる記事が目立ちました。
そんななか、タブロイド紙ブリックは日本に旅行中のスイス人読者の体験を紹介しています。地震のほとんどないスイスの人にとって、日本の大地震はどのような経験になったのでしょうか?
東京のホテルで寝そべっていた男性は「突然めまいがしたと思ったが、カーテンが揺れていたので地震だと分かった」といいます。日本の自然災害情報アプリを備えていた男性は、津波警報やM7.4の地震に衝撃を受けたと言います。「足はまだ震えていた」
国際経営の客員講師として日本を訪れていたマリオ・バルブラン氏(75)は、東京行きの新幹線で青函トンネルを通過したところで地震に遭遇。日本語のアナウンスは一言も理解できなかったものの、隣の席の人が英語で説明してくれたと言います。
バルブラン氏は日本人の連携ぶりにも感嘆しています。「パニックは一切なく、すべてがきちんと組織化されている。どこを見ても黄色いスーツを着た人々がいて、完全に体系化されている。そのことに深く感銘を受けた」(出典:ブリック外部リンク/ドイツ語)
【スイスで報道されたその他のトピック】
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武器輸出規制を緩和(4/21)
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話題になったスイスのニュース
武器輸出をめぐっては、中立国スイスでも、ロシアのウクライナ侵攻を受け大きな議論が続いてきました。紆余曲折の末、スイス議会は昨年末、指定された25カ国については紛争当事国になった場合も含め、再輸出を解禁することを可決しました。
これに対し、解禁反対派がレファレンダム(国民表決)を提起。有権者の署名5万筆という条件をクリアし、国民投票で議会決定を覆す機会を得ました。4年も続いているこの論争、最終決着はまだまだ先になりそうです。
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次回の「スイスメディアが報じた日本のニュース」は4月29日(水)に掲載予定です。
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校閲:大野瑠衣子
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