核保有論、利上げ、スヌーピー… スイスのメディアが報じた日本のニュース
スイスの主要報道機関が12月17日~23日に伝えた日本関連のニュースから、①タブーではなくなった核兵器②日銀、0.75%に利上げ③スヌーピーが日本に進出、の3件を要約して紹介します。
スイスの子どもに日本のことを紹介するとき、「ポケモンは日本生まれなんだよ!」と自慢しています。スヌーピーも「日本製」になると報じられましたが、さすがにこれを日本のキャラと言うには抵抗が…ともあれ、ソニーの力でスイスにもスヌーピーグッズが増えるのであれば、それは新たな自慢の種になりそうです。
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タブーではなくなった核兵器
高市早苗政権の官邸幹部が「日本は核兵器を保有すべきだ」と述べたと報じられ、与野党から批判の声が上がっています。これについて、パリ在住のフリージャーナリスト、ベルナール・デラトル氏の解説記事が、24heuresなどフランス語圏のスイス紙に掲載されました。
記事は「日本で核兵器をめぐるタブーがどんどん崩壊している」との見出しで、広島・長崎への原爆投下から80年を迎えた2025年の日本を特徴づける「大きなパラドックス」だと指摘しました。また記事掲載の17日時点で高市氏が沈黙を守っていることを問題視しています。
デラトル氏は、「日本は技術的に核保有国になる能力があるのだろうか?」と問いかけます。米NGO「核不拡散政策教育センター(NPEC)」のヘンリー・ソコルスキ所長は、日本が大量のプルトニウムを保有していることや、弾道ミサイル運搬能力を持つロケット技術、核融合研究施設があることを挙げ、「一部の推定では1年未満」に最小限の核戦力を構築できるとの見解を示しました。
デラトル氏は、日本国内には核兵器に対する「国民的アレルギー」が存在し、現在の法的枠組みも核武装を禁じていることを指摘します。ただし世論調査では日本国内の米軍基地に核弾頭の配備を望む声も一定数存在することや、小泉進次郎防衛相や歴代防衛相なども核兵器に関する議論の必要性を公言していることにも注目。これまで「神聖な牛」(ヒンズー教で牛が神聖視されることから、批判・疑問が許されないことの比喩)とされてきた核武装に関するタブーが、政府高官の間でも崩れつつある、と分析しています。
記事の後半では、スイスにおける対照的な動きを紹介しました。スイスでは最近、国連の核兵器禁止条約(TPNW)への加盟を求める国民投票が実施されることが決まりました。デラトル氏は、スイス国民の約7割が賛成しているという世論調査の結果も紹介し、核兵器に対する国民意識の違いを浮き彫りにしています。
フランス語圏の地域紙トリビューン・ド・ジュネーブには、一コマ風刺漫画が掲載されました。中国、ロシア、北朝鮮を記す地図の前で、西洋人らしき男性が「記憶を失ってしまったのか?!」と尋ねるのに対し、高市氏を思わせる青いスーツを着た女性が「でも私たちは目が見えるようになった」と答えています。
(出典:24heures外部リンク、トリビューン・ド・ジュネーブ外部リンク/フランス語)
日銀、0.75%に利上げ
日銀が19日の金融政策決定会合で、政策金利を30年ぶりの高水準となる0.75%に引き上げると決めました。ドイツ語圏の経済紙フィナンツ・ウント・ヴィアトシャフトの記事は、30年前はバブル崩壊と根強いデフレに苦しんでいたことを紹介したあと、円相場が下落したことに注目しました。
というのも、「金利上昇は通常、通貨高につながる」はずだからです。債券市場では長期金利が上昇し、「世界で最も債務を抱える先進国である日本にとって、新たな資金調達コストを上昇させる可能性が高い」。また低金利の通貨を借りて高金利通貨に投資する「キャリートレード」が逆転し、円買い・外貨売り要因となります。
記事はそれでも円安が進む理由については解説しませんでしたが、円安は輸入インフレの要因となるため「日銀は円の切り下げを阻止するよう圧力を受けている」と指摘しました。(出典:フィナンツ・ウント・ヴィアトシャフト外部リンク/ドイツ語)
スヌーピーが日本に進出
スヌーピーで知られる漫画の知的財産(IP)を保有する「ピーナッツ・ホールディングス」の株式をソニーグループのエンタメ系子会社が買い取ると発表されました。実質的にピーナッツがソニーの傘下に入ることになります。ドイツ語圏の大手紙NZZは、「スヌーピーが日本製になる」と報じました。
NZZはまず、スヌーピーとチャーリー・ブラウンが「誕生から75年経った今でも、孤独や脆さ、友情といった時代を超えたテーマを描き、平凡で刺激のないアメリカの小さな町を舞台にしていることから、人々の心に響き続けている」と紹介します。スイスの時計メーカー、スウォッチも、文字盤にスヌーピーをあしらったコレクションを販売しています。
ピーナッツの買収は「ソニーが数年にわたり追求してきた戦略に合致する」と記事は続けます。アップルやサムスンといった競合が現れ2000年代に「一種のアイデンティティ危機」に陥った同社は、ゲームや音楽、エンターテインメントに注力しています。記事はプレイステーションなどゲーム部門が成長の原動力になっていること、KADOKAWAやバンダイナムコに投資したことなどを紹介しました。
ピーナッツ買収で「ソニーは、その国際的なネットワークを活用し、スヌーピー、チャーリー・ブラウンをはじめとする様々なキャラクターをさらに有名にしたいと考えている」と解説。ただお膝元の日本ではスヌーピーは既に人気キャラクターで、「世界的に有名な犬のスヌーピーは、世界で最も有名な猫のハローキティにインスピレーションを与えたとも言われている」と付記しました。(出典:NZZ/ドイツ語)
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50歳未満の若い世代の大腸がんが世界的に増加しています。早期検診が死亡率軽減のカギとされ、アメリカやオーストリアなど検診推奨年齢を引き下げる国も。スイスでも引き下げを求める声が高まっています。
一方、日本では、国立がん研究センターが2024年に改定したガイドラインは、「40歳から74歳を推奨するが、45歳または50歳開始も許容される」という解釈に幅のある書きぶりに。スイスインフォ日本語編集部が同センターに追加取材しました。
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次回の「スイスメディアが報じた日本のニュース」は2026年1月7日(水)に掲載予定です。
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校閲:大野瑠衣子
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