次期スイス銀行業界団体トップ、過度な規制に警鐘
スイスの銀行業界団体の次期トップが、過度な規制が世界的な金融センターとしてのスイスの地位を損なう恐れがあると警告した。連邦政府が金融危機以降で最大規模の金融制度改革に乗り出す中での発言だ。
チューリヒに本拠を置くプライベートバンク・資産運用のEFGインターナショナルを率いるジョルジオ・プラデッリ氏は来月、スイス銀行家協会(SBA)の会長職に就く。
EFGの最高経営責任者(CEO)として取材に応じたプラデッリ氏は、競合する金融センターが規制の簡素化を進める中、スイスが世界の銀行業務における優位性を当然のものとは見なせないと指摘した。「規制の枠組みを含む適切な政策を採らなければ、スイスが常に主要な地位を占めるとは限らない」とフィナンシャル・タイムズ(FT)に語り、規制は「比例的でなければならない」と付け加えた。
この発言は、クレディ・スイスの経営破綻への対応として連邦政府が行き過ぎた規制強化に踏み込む恐れがあるとの懸念が、スイスの金融業界全体に広がっていることを示している。
クレディ・スイスは2023年、政府・中銀の関与のもと、ライバル行UBSに買収された。新規制の最も直接的な影響を受けるのはそのUBSだが、改革は銀行システム全体に及ぶ。
今月取りまとめられた改革案には、上級銀行幹部が在任中の不祥事に対してより直接的な責任を負う仕組みの導入、ボーナスやクローバック(報酬返還請求)条項の厳格化、金融市場監督機構(FINMA)の執行権限の強化、危機対応計画とスイス国立銀行(中央銀行)による流動性支援へのアクセス強化が盛り込まれている。
おすすめの記事
モンスター銀行UBSがスイスを襲う?
規制の厳格さを巡る議論と並行して、スイスの金融センターは重大な局面を迎えている。ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)によると、香港は昨年、スイスに代わり、オフショア資産の世界最大の集積地となった。
米規制当局は一部の資本要件を縮小・簡素化している。英国はバーゼル規制改革の一部導入を延期。競争力維持のために全体の資本要件の増加を抑える方針を示している。
「他の金融センターでは、むしろ簡素化の流れが見られる」とプラデッリ氏は述べた。「米国では規制緩和とも言えるかもしれない。われわれも同じ土俵に立つ必要がある」
適切なバランス?
この発言は、UBSに影響を与える改革案の中で、最も議論の分かれる部分を話し合う重要な議会委員会を数日後に控えたタイミングで出された。
全州議会(上院)の経済委員会は、UBSに約200億ドル(約3兆2000億円)の普通株式等Tier1資本(CET1)の保有を義務付ける可能性のある計画について審議を再開する予定で、委員会は政府案を緩和する代替案を検討している。
スイスが適切なバランスを取れているかと問われ、プラデッリ氏は「安定性と比例性の観点では、正しい方向に向かっていると思う。競争力の面では改善の余地がある」と答えた。
EFGは、クレディ・スイス破綻で国内の資産運用業界が激動するなか、恩恵を受けた金融機関の1つに浮上した。UBSによるクレディ・スイス買収以来、EFGの株価は100%近く上昇している。
EFGは上半期に57億フランの純新規資産を獲得し、資産流入は15期連続でプラスとなった。2023年のクレディ・スイス破綻の混乱期には、リレーションシップ・マネージャー(RM)を140人採用した。これは通常年間の採用目標である50~70人の2倍にあたり、プラデッリ氏はこの時期を同行にとって「極めて重要な」時期だったと述べた。
同氏によると、地政学的緊張が高まる中、富裕層の顧客は資産を投資先や銀行間だけでなく、国や金融センターをまたいで分散させる動きを強めている。
「顧客はもはや、すべての卵を1つのカゴに入れるようなことはしなくなるだろう。金融センターについても同じだ」と同氏は述べた。
Copyright The Financial Times Limited 2026
JTI基準に準拠
swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。
他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。