民主主義解体、誤算、終末論…スイスのメディアが報じたアメリカのニュース
スイスの主要報道機関が3月12~18日に報じたアメリカ関連ニュースから①民主主義が最速で解体されるアメリカ②トランプ氏のイラン攻撃に誤算③終末論を信じるアメリカ人、の3件を要約して紹介します。
あなたは自分の生きている間に世界が終わると思いますか?どうやらアメリカ人の3分の1はそう考えているようですが、彼らが抜本的な予防策を支持するかどうかは、さまざまな要因によって異なります。
民主主義が最速で解体されるアメリカ
ヨーテボリ大学のV-Dem研究所が17日、世界の民主主義に関する年次報告書外部リンクを発表しました。ドイツ語圏のスイス公共放送(SRF)は報告書をについて、ドナルド・トランプ米大統領が前例のない速さで民主主義を解体していると総括しました。「11月の中間選挙がこれに歯止めをかけることも、加速させることもありうる」
SRFは「民主主義がこれほど急速かつ包括的に解体されている国は、アメリカ合衆国以外にはない」と伝えました。「アメリカでは、民主主義が機能するための一般的な条件が様々な面で悪化している。議会による権力抑制は事実上存在せず、トランプ氏は大統領令によって統治し、議会と上院はこれに対抗する手段を何も講じていない。市民権と法の下の平等は1960年代後半のレベルにまで後退し、言論の自由は第二次世界大戦終結以来最低の水準にある」
スイスのオンラインメディアwatsonは、アメリカが約半世紀ぶりに自由民主主義国家としての地位を失ったと指摘しました。
ただ民主主義の後退という点で、アメリカが異端とは言えません。watsonは「ここ数年、かつてなく多くの国が一斉に独裁化した」と伝えています。「2005年には12カ国で独裁化の傾向が確認されていたが、2025年には44カ国に達した」。44カ国中5カ国はヨーロッパで、イタリア、英国、クロアチア、スロベニア、スロバキアが挙げられました。(訳注:日本は「自由民主主義国」を維持)
SRFは、少なくとも議会では中間選挙で民主党が共和党の多数派を覆す可能性は高いとみています。しかし、トランプ氏が中間選挙の主導権を握ろうとしている兆候が増えていると警告しました。
SRFによると、左派系シンクタンクであるアメリカ進歩センターのディレクター、グレタ・ベデコビッチ氏は「2026年の選挙が自由かつ公正に行われるかどうかについて、大きな懸念がある。投票所に連邦警察や場合によっては軍隊が配置されるなど、人々を妨害しようとする非常に露骨な動きがみられる」と述べています。
SRFは、中間選挙はアメリカが民主主義国家としての立場を主張し、独裁化に歯止めをかけるための重要な機会でもあると結論付けました。「他国の経験から、独裁化プロセスが始まってからの最初の選挙が、その流れを逆転させる上で最も重要であることが示されている」(出典:SRF外部リンク、watson外部リンク/ドイツ語)
トランプ氏のイラン攻撃に誤算
ドナルド・トランプ氏は軍事作戦の短期成功を見込んだが、イランが石油を兵器として利用する可能性があることを見落としていた――スイス・ドイツ語圏の日刊紙ターゲス・アンツァイガーはこう指摘しました。
「トランプ氏に今起きていることは、ほとんど現実離れしているように思える。イランが石油を兵器として使う可能性を考慮せずに、イランとの戦争を始めた。トランプ陣営は、イランがホルムズ海峡を封鎖し、世界の石油供給量の2割を遮断するという明白な可能性に備えていなかったことを自ら認めている。今や彼は北大西洋条約機構(NATO)加盟国に対し、海峡の安全確保に協力するよう要求している。そして、同盟国が従わなければ、『非常に悪い未来』が待っていると脅迫している」
ターゲス・アンツァイガーによると、この誤算はトランプ氏の内政にも波紋が広がっています。「トランプ氏は物価を引き下げ、数十年来初めてアメリカを『エネルギー自給自足』にしたと自画自賛している。しかし、それはトランプ氏が軽蔑する再生可能エネルギーの拡大ではなく、自国での無制限の石油・ガス生産によるものだ」
「だが、トランプ氏のエネルギー自給自足に対する理解が欺瞞的であることは今や明らかだ。米国が消費量よりも多くのエネルギーを生産しているという点では確かにそうかもしれない。しかし、米製油所は依然として原油の輸入を必要としており、アメリカは世界の石油市場とその混乱から切り離されているわけではない」
同紙はさらに続けます。「だからこそ、アメリカのドライバーが払うガソリン代は増えており、ガソリンスタンドはトランプにとって最も手強い敵になりつつある。給油所で、トランプ支持者たちはトランプ氏が低価格を約束して当選したことを思い出す。支持者たちが期待するのはトランプ氏がインフレに打ち勝つことであり、イラン問題に打ち勝つことではない」
フランス語圏の大手紙ル・タンは「ペルシャ湾とオマーン湾を結ぶ幅33㎞の海峡が、トランプ政権下のアメリカをこれほど不安定化させるとは、誰が想像できただろうか?」と問いかけました。
「ホワイトハウスはパニックに陥っており、大統領に復帰して以来NATOと欧州連合(EU)加盟国を軽蔑してきたトランプ氏が、ホルムズ海峡を軍事護衛付きで通過できるよう彼らに協力を懇願しているほどだ。だがしかし、ジョージ・H・W・ブッシュ氏が第一次湾岸戦争で行ったように、連合を形成するには事後ではなく事前の計画が必要だ。欧州諸国がそのような要請を拒否するのは正しい。目的も終わりも見えない戦争に巻き込まれることを避けるため、そして尊厳のためにも」
同紙は、アメリカでガソリン価格が現在1ガロン(3.78リットル)あたり平均3.72ドルと、2月28日の戦争開始以来25%上昇していると指摘しました。「この上昇が続けば、共和党は11月の中間選挙で確実に敗北するだろう」(出典:ターゲス・アンツァイガー外部リンク/ドイツ語、ル・タン外部リンク/フランス語)
終末論を信じるアメリカ人
世界は今「終末」を迎えているのでしょうか?ターゲス・アンツァイガーによると、アメリカ人の3人に1人が、自分の生きている間に世界が終わると考えています。信心深い人々も、世俗的な人々と同様にそう信じていますが、これは彼らの思考や行動にどのような影響を与えるのでしょうか?
ブリティッシュコロンビア大学によると、「世界の終末が間近に迫っている」という信念は大きく広がり、「二極化したアメリカの社会情勢における意外な共通点」になっています。この見解は「ペンテコステ派の牧師、核科学者、気候変動活動家、UFOカルト、地方の終末論準備者、人工知能エンジニアなど、非常に多様なコミュニティ」を結びつけているそうです。
ターゲス・アンツァイガーはこれを「終末論を信じることはもはや宗教的な特権ではなく、科学界もまた最も声高に警告を発している部族の一つである」と報じました。
同紙は、これまでの研究では、世界の終末が近いと予想する人々は未来についてあまり関心がないという「明白な相関」が示されていましたが、約3500人が参加した今回の研究では「より複雑な状況」が明らかになったと報じました。
それは人為的な要因が引き金になったと考える人々は、超自然的な原因を信じる人々よりも、抜本的な対策を支持する傾向が強い、という点です。
研究は、被験者が差し迫った災害とされるものに肯定的な感情を結びつけた場合、それを防ぐための極端な措置を支持する傾向が強まることも明らかにしました。ターゲス・アンツァイガーは「最初は戸惑うような結果だった」と書いています。「終末論は、楽園などより良いものがその先に待っている場合にのみ、良い感情を引き起こすのだ。」
終末を阻止しようとする動機はどこから来るのでしょうか?研究によれば、考えられる説明の一つは、世界の終末を歓迎するのは主に過激派の人々だということです。ターゲス・アンツァイガーは「過激派は、楽園が来るかどうかに関わらず、過激な手段を支持する傾向がある」と結論付けました。(出典:ターゲス・アンツァイガー外部リンク/ドイツ語)
次回「スイスのメディアが報じた米国のニュース」日本語版は3月26日(木)配信予定です。
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英語からのGoogle翻訳:ムートゥ朋子
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