移民、酷暑日、駐輪場…スイスのメディアが報じた日本のニュース
スイスの主要報道機関が5月6日~12日に伝えた日本関連のニュースから、①スイスよ、本当に日本のようになりたいか②新語「酷暑日」が示す日本社会③地下に沈む自転車、の3件を要約して紹介します。
「移民のせいで電車で席に座れない」。そんな煽り文句の書かれた移民反対派の広報紙が、我が家に配布されました。しかし大手日刊紙NZZが描いた日本は、それとは対照的な、「移民がいないせいで社会が回らない」という恐怖の未来。人口の4分の1が外国人のスイスにとって、「移民のいないスイス」を想像するのは難しいだけに、確かに日本はいい参考例かもしれません。
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スイスよ、本当に日本のようになりたいか
スイスでは6月14日、国の人口に上限を設け移民を規制する「人口1000万人に反対」案が国民投票にかけられます。賛成派は、移民の流入が住宅や交通などのインフラに過度な負荷をかけていると訴えます。ドイツ語圏の大手紙NZZは、人口減に苦しむ日本を引き合いに、こうした主張に真っ向から反論しました。
日本在住のフリージャーナリスト、フェリックス・リル氏が足を運んだのは静岡県伊東市。シャッター街に空き家、ペンキの剥がれ落ちた温泉……リル氏は「電車を降りれば、かつて華やかだったこの街が、今では見る影もないことをすぐに実感する」と描きます。
伊東市は日本の例外ではなく、むしろ典型例だ、と記事は続けます。「少子化と移民政策の停滞」により、日本の人口は2008年比で500万人以上減少。2024年の減少幅は90万人で、リル氏はこの数字がスイスの3大都市であるチューリヒ、ジュネーブ、バーゼルの人口が丸ごと消失した規模に相当すると説明しました。
人口が減れば税収も減り、国力にも直結します。記事は、労働年齢人口の減少が始まった1990年代半ば以降、日本の経済規模はほぼ横ばいだと説明。同じ期間にスイスでは人口が3割増え、経済規模はほぼ3倍に増えたと比較しました。
記事はそんな日本で起こりうる未来図として、今年「移民1000万人時代―2040年の日本の姿」を上梓した毛受敏浩・関西国際大学客員教授の見解を紹介しました。毛受氏は、移民を受け入れなければ「スーパーマーケットは閉鎖を余儀なくされ、病院は患者であふれかえり、レストランは料理を提供できなくなる」と警鐘を鳴らしています。
日本の移民受け入れが乏しい背景として、記事は「つい最近まで、日本では『均質な社会』、人々が同じ価値観と行動規範を共有することで互いを理解し合う社会を理想としていた」と解説しています。しかし「日本は10年前に大きな変革を遂げた」。安倍晋三首相が移民規制を緩和し、「均質性」から「多様性」重視へ転換したと伝えました。
ただ最近の選挙では、外国人排斥を主張する政治家が一定の支持を得ています。排他主義が高まる理由として、記事は円安に伴う実質所得の低下と、「外国との交流経験の不足」を挙げました。
「社会の大部分は、日本の島々から一度も出たことがない。『外国人』というイメージ――まるで彼らが皆『日本人』と等しく異なるかのように――は、いまだにステレオタイプによって形作られている」(出典:NZZ外部リンク/ドイツ語)
新語「酷暑日」が示す日本社会
気象庁は4月、気温が40℃を超える日を「酷暑日」と表現する方針を発表しました。ドイツ語圏の日刊紙ターゲス・アンツァイガーは、これを「日本は複雑で、時に扱いにくい側面もあるが、常に変化し続けるダイナミックな社会であり、例えば言語もその一つだ」と紹介しています。
記事は40℃を超える日が2023~25年で計41日あったと紹介した後、「さらに問題なのは、日本の建築様式だ」と書いています。「一部の住宅の壁は紙のように薄い。エアコンは広く普及しているが、エネルギー消費量が非常に多い。現在の地政学的状況下では、これも良い解決策とは言えない」
東京都は猛暑対策として、6月からスーツではなく半袖・半ズボンで勤務するよう都職員に指示しました。記事は「半ズボンを着用することで、新たなレベルのリラックス状態に到達する」とまとめました。(出典:ターゲス・アンツァイガー外部リンク/ドイツ語)
地下に沈む自転車
スイスでは通勤・通学手段としておなじみの自転車。駐輪場問題は特に大都市で繰り返し議題になっています。ドイツ語圏のスイス公共放送(SRF)は斬新な解決策として、日本で開発された地下駐輪場を取り上げました。
SRFが取材したのは技研製作所が開発した「エコサイクル外部リンク」です。入口となる小さな建物に自転車を停めるとリフトで地下サイロに自動搬送。最大200台を収容できます。SRFはこれを「歩道や手すりに自転車を停める代わりに、自転車は静かに地下へ収まる。地上には人や交通、緑のための空間が確保される」と表現しました。
「自治体にとって、これは日常生活を大きく変える変化だ」。SRFは放置自転車の減少や歩行者の安全向上、景観改善につながったとする自治体職員の声を紹介しました。従来のスロープ式駐輪場に比べて最大50%のコスト削減になるという金銭的メリットも挙げています。
さらに「利用者にとって、安心感は何よりも重要だ」と記事は続けます。利用者の1人はSRFに、盗難の心配が少ない、雨の日でも自転車が濡れないといった利点を語りました。
記事は「電動自転車の普及とガソリン価格の高騰を背景に、自転車利用に力を入れる都市が増えている。しかし、スペースは依然として限られている」として、自転車問題が局所的なものではないことを示唆。「一見すると気づかないような場所」が解決策になりうる、とアイデアの斬新さを強調しました。(出典:SRF/ドイツ語)
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大西洋を航行していたクルーズ船「MVホンディウス」で、ネズミなどのげっ歯類が媒介する「ハンタウイルス」の感染や疑いが複数確認され、乗客3人が死亡しました。新型コロナ危機を彷彿とさせるウイルスの発生に、緊張感が高まっています。4月下旬に下船したスイス人乗客が感染していたとのニュースも、大きな関心が寄せられました。ただその後も症状は出ておらず、大流行につながる可能性は低そうです。
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