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はるか遠い過去を解き明かす場所

チンゲルホーレン ( Tschingelhoren ) に出来た魔法のライン swiss-image

壮大なアルプスのパノラマ景色が美しいスイス東部のセルンフ谷 ( Sernftal ) とヴァーレン湖 ( Walensee )、そしてフォーダーライン谷 ( Vorderrheintal ) に囲まれたアルプスの一帯「テクトニック・アレナ・サルドナ ( Tektonische Arena Sardona ) 」は2008年に世界遺産に認定された。

このコンテンツは 2010/05/04 09:01

300平方キロメートル以上の広大なエリアにわたって観察できる「テクトニック・アレナ・サルドナ」は、山脈が形成された痕跡とプレートテクトニス理論 ( 大陸のプレートの動きによりさまざまな地形が形成される説 ) を実証している。

きっかけ

この地域が地質学の分野で注目を浴びたのは18世紀末に遡る。それは長さ、約35キロメートルにわたって岩壁に刻まれたラインがはっきりと認識できることで話題になったからだ。このラインは、標高3000メートル以上の位置で、スイスの高峰、ハウスシュトック ( Hausstock )、ピッツ・サルドナ ( Piz Sardona )、リンゲルシュピッツ ( Ringelspitz ) へと横に伸び、その後ラインは下に向かっていき、北に向けて次第に消えてなくなっている。

このラインは、かなり離れた所からも観察できる。これは2億5000万年前から3億年前の岩石の層が、5000万年前の岩石の層の上にのしかかっている「グラールス押しかぶせ断層 ( Glarner Hauptüberschiebung ) 」によってできたものだ。

この地域が地質学の分野で注目を浴びたのは18世紀末に遡る。それは長さ、約35キロメートルにわたって岩壁に刻まれたラインがはっきりと認識できることで話題になったからだ。このラインは、標高3000メートル以上の位置で、スイスの高峰、ハウスシュトック ( Hausstock )、ピッツ・サルドナ ( Piz Sardona )、リンゲルシュピッツ ( Ringelspitz ) へと横に伸び、その後ラインは下に向かっていき、北に向けて次第に消えてなくなっている。

「グラールス押しかぶせ断層ほどダイナミックな地殻変動が、ほかの場所で観察できるでしょうか?グラールス地域周辺に形成された押しかぶせ断層は、かなりはっきりと確認できます。これは世界でも類い稀なのです」
と連邦環境局 ( BAFU ) のカルロ・オッソーラ氏は語る。彼は、この押しかぶせ断層がユネスコ世界遺産に認定されるまで関わった人でもある。

数百年前、アルプスはどのように形成されたか地質学者たちが関心を持ち始めた時、彼らはなぜグラールス地域では古い岩壁の層が新しい層の上に重なっているのか説明できなかった。しかし1950年、ようやく断層力学の研究が進み、地殻変動の理論が明確になったおかげで、地質学者はサルドナ一帯に起こった現象を巨大な押しかぶせ断層だと実証できるようになったのだ。

押しかぶせ断層とプレートテクトニス理論

「押しかぶせ断層は、アフリカ大陸プレートがヨーロッパ大陸プレートを押し、その反動で高さ10キロメートルの岩の塊がほかの岩石の上にのしかかることによって形成されました」
とゲオパークの責任者、カスパー・マーティ氏は語る。

「この現象はすべて、地球表層の地殻の部分、深さ6キロメートルから10キロメートルの所で、温度が320度から400度になった時に起こりました。その際に、岩塊が柔らかくなり、隣にあった石灰石の断層に沿って岩の層がもう1つの岩の層に押しかぶさるという現象が起こったのです。その後、地殻が持ち上げられ、押しかぶせ断層が地殻の表面に押し上げられたのです」
とマーティ氏は押しかぶせ断層ができた過程を説明する。

200年前まで押しかぶせ断層の存在は知られていなかった。その後学者たちが押しかぶせ断層を発見してからも、100年前までは、彼らは高さ10キロメートルの地層の塊が35キロメートルにわたりずらされるという事実を受け入れることができなかったのだ。

しかし、プレートテクトニス理論が確立したお陰で、岩や山の形成が、大陸プレートの変動によると一般的に考えられるようになったとマーティ氏は言う。この理論ゆえに、地域一帯に広がる押しかぶせ断層は、「テクトニック・アレナ」と名付けられた。今日、地球科学の重要な学説となったプレートテクトニス理論はまさにこの地域で発展したのだ。

魔法のライン

上下2つの層の色の違いによって、グラールス押しかぶせ断層は容易に確認できる。古い時代にできた上層部は、赤色と緑色が混ざっている。それに対し、下層部は、灰色と茶色が混ざり、下の層にいくほど黒色に変化している。

そして、両方の層の間には、石灰の薄い層が出来ている。これこそが「魔法のライン」として知られているものだ。
「原則として、このラインは押しかぶせ断層の地域全体にわたって伸びています。ただ、多くの場所で浸食が起こっているため、この地域のすべての場所で観察できる訳ではありません」
とマーティ氏は語る。

ロッホジーテ ( Lochsite ) では、このラインを手で触って確認することができる。また、高峰チンゲルホーレンにあるホース峠 ( Foospass ) やホールシュトック ( Foolstock ) 、ピッツ・アルタス ( Piz Altas ) や、ピッツ・サルドナ ( Piz Sardona ) 、エルム ( Elm ) やフリムス ( Flims ) でも観察することができる。

しかしながら、このラインは地殻変動が起きた証として観察できるというだけのことだ。なぜなら、押しかぶせ断層は、ラインができている場所で起こったのではなく、石灰の層全体で起こったものだからだ。ロッホジーテでは、石灰層の高さが1.5メートルだったり、ほかの場所ではもっと厚い層になっていたりする。

「石灰層のラインは、おそらく押しかぶせ断層ができた時期に地震が起こり、岩の層がずれたことによって生じたと考えられます」
とマーティ氏は語る。

観察地へのアクセス

この山脈地帯にある押しかぶせ断層の地質構造は、多くの地域で観察されるが、通常は、数時間かけて美しい景色のハイキングコースを辿った後に到達できるような、標高が高い場所に位置している。しかし、ソール ( Sool ) - シュヴァンデン ( Schwanden ) 間にある、標高が比較的低いロッホジーテといった場所は比較的容易に到達できる。

「ロッホジーテは、この保護地区の中で最も低い場所の1つで、標高500メートルより若干高いほどです。道も手入れされているので容易に到達することができます」
とマーティ氏は説明する。

人々が簡単に目的地に到達でき、類い稀な押しかぶせ断層の地質構造が観察でき、プレートテクトニス理論を理解できるように、観察地までの道のりが整備されている。

地質構造学上特徴のある地域

エルムからは、「魔法のライン」がチンゲルホーレンの傾斜部に現れ、標高2600メートルのマーティン山 ( Martin ) に形成された自然の穴に沿って横に伸びているのが観察できる。この自然の穴はおそらく、岩が陥没し、その時の強い圧力によって生じたものだ。時にはこの穴に、太陽や月の光が射し込む様子を目にすることができる。

最近は、地質構造学上重要とされる石灰層はしだいに消えていっていることが確認され、所によっては、2つの岩壁層の間の石灰層はほとんど見られなくなっている。ただ、はるか高峰にある「魔法のライン」は、岩塊にはっきりと刻まれている。

パオラ・ベルトラーメ、エルムにて、swissinfo.ch
( 翻訳 白崎泰子 )

ユネスコの見解による押しかぶせ断層テクトニック・アレナ

グラールス押しかぶせ断層は、ザンクトガレン州、グラールス州、グラウビュンデン州にまたがり、アルプスの山、ピッツ・サルドナ ( Piz Sardona ) 周辺の山岳地帯では、造山運動が起きたことを示す地質学的痕跡がはっきりと観察できる。これは世界でも珍しい。
広範囲にわたって観測できる「グラールス押しかぶせ断層」では、2億5000万年前から3億年前の層「ヴェルカーノ ( Verrucano ) 」が、5000万年前から堆積した層「フリッシュ ( Flysch ) 」の上に35~40キロメートルにわたりのしかかっている。
押しかぶせ断層は、およそ300平方キロメートルにわたって広がり、プレート構造を理解する上で、教育学上、そして学術上重要な意味を持つ。

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造山運動

造山運動は、大陸プレート同士の衝突により地面が押し上げられて山が形成されることが例として挙げられる。山脈は、大陸プレートの移動に伴う褶曲作用や断層運動、堆積作用などの地理的要因により形成される。

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