スマートフォンを使った新型コロナウイルス感染者の追跡システムに暗雲が立ち込めている
Keystone
スイスなど欧州8カ国で立ち上げた新型コロナウイルス感染者の追跡システムに対し、参画しているスイス連邦工科大学が「個人のプライバシーが十分に尊重されていない」と距離を置き始めた。同大が独自のシステムを開発中で、5月11日にも始動するという。
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欧州8カ国130団体が開発したのは「PEPP-PT(汎欧州プライバシー保護近接追跡)」と呼ばれるデジタルプラットフォームで、連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)、チューリヒ校(ETHZ)が参加している。
>>PEPP-PTとは?
ただEPFLの感染症学研究者のマルセル・サラテ氏は17日、個人的にそのプロジェクトから距離を置いていたとツイートで明かし「現時点では、PEPP-PTは十分に開かれたものではなく、透明性も不十分」と指摘した。
EPFLのマーティン・フェッテルリ学長は、フランス語圏のスイス公共放送(RTS)に、大学がPEPP-PTとは別の手段を模索していることを明らかにした。ニュースサイト「heidi.news」は17日夕、ETHZも同プロジェクトから撤退すると報じた外部リンク。
PEPP-PTは、スマートフォンを使った新型コロナウイルス対策プロジェクトの1つ。スマートフォン用に開発したアプリがBluetooth技術を使い、一定時間至近距離にいた別のアプリ搭載済みの端末を見つけた場合、その端末と「接触した」という情報を保存。その端末の利用者が後にコロナウイルス陽性と判明した場合、過去に濃厚接触した端末へ通知を出す。
EPFLとETHZは現在、DPT3と呼ばれる別のシステムに力を入れている。EPFLのカルメラ・トロンコソ教授が率いる欧州の研究者26人によるチームが開発中だ。PEPP-PTとの主な違いは、データが中央のシステムに集約されるのではなく、各端末に分散して保存されることだ。このため個人のプライバシー保護の面ではより優れているという。
連邦内務省保健庁は21日、ドイツ語圏のスイス公共放送(SRF)に対し、5月11日にも同システムが始動する予定だと語った。
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