スイス、新型コロナ臨時議会が開会

連邦議会の「コロナ臨時議会」は議事堂ではなく、郊外のコングレスセンターで開かれる Keystone/Anthony Anex

4日、スイス連邦議会の臨時議会が開会した。新型コロナウイルス危機下で政府が講じたさまざまな緊急措置を話し合う。

swissinfo.ch

臨時議会は4日間の日程で、ベルン市郊外の会議場ベルンエキスポで行われる。

平屋根のベルンエキスポでは通常、会議や見本市が開催されている。最も大きな部屋はサッカー場1つ分くらいの大きさ。246人の議員が2メートルの社会的距離(ソーシャルディスタンシング)を取りウイルスの感染を抑止するため、これくらいの規模の部屋が必要なのだ。

その雰囲気は、歴史の風格漂う連邦議事堂とは対照的だ。普段は市内中心部の連邦議事堂で議会は開かれる。

春期議会が途中で打ち切られてからしばらく経つ。特別な取り決めを要したものの、政治家と政治学者たちは議会を再開する時期が来たと判断した。

下院・上院の議長は、政府の活動を監督するという議会の憲法上の役割は非常に重要だと強調する。

ハンス・シュテックリ上院議長は「議会は最高権威であり、危機時に政府のウォッチドッグ(監視役)としての役割を果たさなければならない」と述べた。臨時議会は約350万フラン(約3億8500万円)の追加費用が掛かるが、シュテックリ氏はそれでも召集する価値があるという。

議会の役割

専門家らもまた、過去数週間にわたり、民主主義における議会の重要性を訴えてきた。

3月中旬の春期議会は新型コロナウイルスの影響で、数週間の会期を途中で打ち切った。さらに5月の国民投票を延期、署名集めも停止し、国民の直接民主主義の権利が一時的に途絶えてしまった。これは新型コロナウイルスの感染拡大を受け、政府が感染症法上に基づく権限として講じた様々な緊急措置の1つだ。

政府の感染予防対策に従い、広々としたホールに机が点々と並ぶ。感染のリスクを最小限に抑えるため、マイクにはプラスチックカバーがかけられている Keystone/Peter Klaunzer

スイスの法律では、政府の緊急的措置は議会が延長するか否かの判断を下す前に、理論上6カ月間有効となる。その期間中、司法省のある部署だけが唯一、行政府が憲法を逸脱しないように監視する。

スイス政府は約1カ月半前に「異常な状況」を発令して以降、その権限を乱用してはいないーと一概にはみなされている。

連邦内閣は26の州、経済界、労働組合との緊密な連携を繰り返し強調。行政府の権力乱用に対する懸念払しょくに努めてきた。

ただ最近、特定の措置や決定に批判が出ている。オブザーバーたちは、パンデミック(世界的大流行)が起こった当初、すべての政党は政府に追従し、メディアは何週間もPTSD(心的外傷後ストレス障害)に陥ったかのようだった、と批判する。

公の議論を保証

政治アナリストのクロード・ロンシャン氏は、危機下でも議会は必要だと指摘する。

ロンシャン氏はswissinfo.chへの寄稿で「政府への監視の目をくぐり抜けることがないよう、民主主義は議会を必要としている。議会は代替の選択肢を提示しなければならない」と話す。

ロンシャン氏は、民主主義制度の役割は、政治問題についての公の議論を守ることだといい「現在の状況では、これができなかった」と指摘する。

上級政治学者のヴォルフ・リンダー氏は、議会はもっと早く行動すべきだったと主張する。リンダ―氏は、連邦議会議員が臨時議会を自分の政治的アピールのためだけに利用してはならないと話す。

連邦議会は、新型コロナウイルスに伴う政府の経済支援措置を厳しい目で協議するべきだ、という。

リンダ―氏はドイツ語圏の日刊紙NZZに「臨時議会では、数十億フランの財政出動の承認以上のことが求められる。変更、修正も必要だ」と語った。

準備期間の短さ

臨時議会に充てる準備期間の短さを疑問視する声も挙がる。通常の精査が飛ばされ、議案が開会直前に決まったからだ。

しかし議員たちは、さまざまな議会委員会に政府の決定やその他の議案を精査する機会が与えられたと主張する。

シモネッタ・ソマルーガ連邦大統領の演説は別として、1日に発表された議案には、数十億フランの経済パッケージのほか、軍の病院、国境、外国大使館における民間支援の任務が含まれる。

一部の議会委員会からは、政府の経済支援パッケージから漏れた人・セクターを救済する措置などといった追加の議案が出ている。政府の財政出動を制限する案も出ている。

衛生マスクを含む医療物資の不足についても議論される見通しだ。これは右派・左派政党、関係団体から事前にそのような発言が出ている。

デジタル改革

今回の臨時議会では、議会改革が話し合われるかもしれない。例えば緊急事態でも議会が機能し続けられる、いわゆる特別委員会を設置するーなどの案だ。インターネットを介したテレビ会議など、デジタル技術の活用も議題に挙がるかもしれない。

シュテックリ氏は、こうした「リモート議会」には懐疑的だ。

「議会は個人同士のやり取りが重要。自宅からとなると、いい仕事ができるかどうかはわからない」とシュテックリ氏は言う。ただ議会は発言者と市民をつなぐビデオチャットを設け、議会を傍聴できるようにした。

オンライン式議会についての議論がなくなることはなさそうだ。専門家は、必要な法改正や技術的リスクを比較検討している。

コングレスセンターの美しさ、その穏やかな内装はさておき、デジタル議会を開くことにそれほどの支障はなさそうだ。しかし連邦議事堂外で議会を開くことはきわめて稀で、スイスの歴史の中でもこれまでに3回しかない。それもすべて過去30年以内に起こっている。

 議会が3週間のセッションを別の場所で行ったのは1993年(ジュネーブ)、2001年(ルガーノ)、2006年(グラウビュンデン州フリムス)の3回。いずれも、120年前に建てられたベルンの連邦議事堂の改修工事が理由だった。

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