スイスの視点を10言語で
麻薬

スイスはどこまで麻薬を合法化するのか?

スイスは麻薬中毒に対し、世界でも類を見ないアプローチを取ってきた。国は1990年代、深刻な中毒者に無料でドラッグを配布するという新たな政策を打ち出し、チューリヒとベルンでは数百人の中毒者が公共の場に大挙した。

チューリヒ中央駅のすぐ裏にある、ドイツ語でプラッツシュピッツと呼ばれる公園。ここはかつて、麻薬中毒者が逮捕されることなく違法薬物を打てる欧州最大の「開放型ドラッグスペース」だった。   

おすすめの記事

おすすめの記事

ヘロイン計画10年後の決算

このコンテンツが公開されたのは、 公共機関がヘロインを購入し、麻薬患者に無料で配分するのは違法行為だという反対意見も出たが、いまではスイスについで、オランダ、ドイツ、スペインなどが導入している。                            スイ…

もっと読む ヘロイン計画10年後の決算

「中心に考えるべきなのは、麻薬ではなく人間だ」。2016年、国連の麻薬に関する特別会議に出席したアラン・ベルセ内務相はそう語った。スイスは25年間、予防、治療、リスク低減、抑圧という「4つの柱」から成る政策を行ってきた。このモデルは依存症の専門家に高く評価され、有効性は実証済みだ。この政策が施行されてから、麻薬使用による死亡件数、犯罪件数はいずれも減少。中毒者の健康状態も改善した。現状の改善を受け、プラッツシュピッツもなくなった。 

おすすめの記事
Ein Mann beim Minigolfen

おすすめの記事

あるスイス人麻薬中毒者の日常

このコンテンツが公開されたのは、 スイスの先進的な麻薬政策が実を結び、麻薬が公然と使用される光景はすっかり影をひそめた。街中ではヘロイン中毒者もあまり見かけなくなったが、今、彼らはどんな生活をしているのだろう?

もっと読む あるスイス人麻薬中毒者の日常

この政策が注目を集めたのは医師の管理の下、ヘロインを重度の依存症患者に配ったからだ。配布場所に行けば、一日の服用量のヘロインがもらえる仕組みだ。注射は医療チームがいる現場で行われた。 

この手法は1994年に始まった。現在はスイス国内の1700人の中毒患者が、この方法で命をつないでいる。医師らのコントロール下で麻薬を使用させることで、病気の伝染、感染症、過剰摂取が減少した。中毒者でも、普通の人とほぼ変わらない暮らしができるようになった。20年以上、ヘロインの処方を受けているエヴェリンさんは「このプログラムがなければ、私はとっくの昔に死んでいた」と話す。 

おすすめの記事
メガネをかけた女性

おすすめの記事

「ヘロイン計画がなかったら、とっくに命を落としていた」

このコンテンツが公開されたのは、 スイスで麻薬中毒患者に無料でヘロインを処方することで中毒治療を行うプログラム「ヘロイン計画」が始まって20年。国の管理の元、国内では1500人の中毒患者が、この依存性の高い麻薬の配布を受けている。

もっと読む 「ヘロイン計画がなかったら、とっくに命を落としていた」

麻薬の合法化は現在、スイスで活発な議論が交わされている。大麻に関しては2011年から、有害成分のTHC(テトラヒドロカンナビノール)をごく少量に抑えた向精神作用のない大麻製品が販売されている。

おすすめの記事
カメラに笑顔を向けるヴェルナー・ブッシュさん

おすすめの記事

合法大麻がスイスでブーム 1億円ビジネスの裏側は

このコンテンツが公開されたのは、 カフェインレスコーヒーやノンアルコールビールがあるように、近年、スイスの店舗やキヨスクでは、精神作用物質を多く含まない大麻「ヘンプライト」や「カンナビスCBD」が合法的に販売されている。生産者の男性が、100万フラン(約1億1千万円)を生むビジネスの裏側をスイスインフォに明かした。

もっと読む 合法大麻がスイスでブーム 1億円ビジネスの裏側は

連邦議会の上下院は2021年3月までに、政府当局の許可なしで医師が医療用大麻を処方できる法改正案を可決した。

おすすめの記事
canapa

おすすめの記事

スイスで医療用大麻が許可不要に

このコンテンツが公開されたのは、 スイス下院は8日、医療用大麻の規制緩和を盛り込んだ麻薬法改正案を圧倒的過半数で可決した。患者にとっては朗報だが、治療費用の軽減には課題が残る。

もっと読む スイスで医療用大麻が許可不要に


SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部