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フワリ秋空!風まかせ ~熱気球飛行初体験~         

気球の天井部にはラインで開閉できる排気弁がある。解放すると中の熱気が抜けるため気球が下がる

気球の天井部にはラインで開閉できる排気弁がある。解放すると中の熱気が抜けるため気球が下がる

(swissinfo.ch)

10月も半ばを迎え、日に日に寒くなっていくのを感じる。一時的な寒波の影響とはいえ、すでに10月10日には山間部で初雪を観測。スイスの秋は霧が出やすいので、灰色の寒空ばかり眺めていると気分も憂鬱になりがちだ。そんな天気の合間に珍しくからっと晴れた先日、念願の熱気球飛行がついに実現した。

 ご存じの通り、熱気球飛行には天気が大きく影響する。晴天であるのは勿論のこと、ある程度の風も飛行には必要だ。しかし風が強すぎると、大きな危険が伴ってしまう。風力は時間帯や高度によって刻々と変化するから“風を読む”のは実に難しいのだ。記憶に新しいところでは、今年の2月にエジプトのルクソールで熱気球が墜落し、日本人4人を含む19人が死亡するという大惨事があった。そんなこともあってスイスの熱気球関係者達は天候の判断にかなり神経質になっていて、今回は2度の延期を経て、ようやく3度目に実現する運びとなった。

(swissinfo.ch)

 飛行当日は、まさに抜けるような青空で理想的な弱風が吹いていた。場所はスイス北西部のハルデルン(Hardern)というベルン州にある小さな農村である。この日熱気球飛行に参加するために集まった乗客は老若男女あわせて14人。昼間は上昇気流の影響で飛行が不安定になるため、飛行時間帯は朝夕に限られている。今回は夕方5時半からの飛行を予約した。

(swissinfo.ch)

 まずパイロットから飛行中の注意事項を聞いた後、小型バスに乗り込んで離陸地点へと移動。そこは何と収穫後に整地された広大な畑のど真ん中だった。離陸準備は作業員を中心に乗客全員で行った。荷台に積まれたバスケットを降ろし、中からロール状にたたまれた気球を取り出して広げる。2台の大型扇風機で最初に冷気を送り半分ほど膨らませた後、今度はバーナーを使用して100度以上の熱気を送り込むのだ。すると地面に横たわっていた気球がどんどん立ち上がっていく。ほぼ垂直に立ちあがった瞬間、パイロットの掛け声で乗客はすばやく籐素材のバスケット(4m×3m)に乗り込まなければならない。もたもたしていると気球がどんどん上がって行ってしまうからだ。バスケットにドアはなく、横にあいている穴につま先を入れて、バスケットによじ登るように乗り込むので足腰に問題のあるお年寄りや小さな子供は注意が必要。

(swissinfo.ch)

 突然フワリと軽くなった感覚があり離陸に成功。事故は離着陸時が最も多いので、最初は皆硬い表情だったが、安定した上昇をはじめてからは笑顔がこぼれ、まるで鳥になったような独特な開放感とすばらしい景色に歓声があがった。飛行機のような閉塞感は全くなく、空と一体になったような不思議な感覚があった。

(swissinfo.ch)

 気球は順調に上昇を続け、高度2000mに到達。恐る恐る下を覗き込むと、非日常的な高さを肌で実感して足がすくんだ。遥か遠方には、ベルナーオーバーランドの素晴らしいアルプスの山並みが雲の上に浮かんでいるように見えた。熱気球は風と同じ速度で移動するため、上空でもほとんど風を感じないのが特徴だ。時折、ゴーッと焚かれるバーナーの音以外は一切無音。炎の熱気のせいで寒さも特に感じない。炎下にいるパイロットはTシャツ一枚だ。

 しばらくするとセスナが一機近くに飛んできて、気球の周りをぐるりと一周した。パイロットが私達に手を振るのが見えるほど近くまで来たので、かなり緊張したがそれも熱気球ならではの楽しい体験だった。

 乗客の中にスカイダイバーが一人乗り込んでいた。彼はバラグライダーの入ったリュックを手際よく背負うと、バスケットの縁に腰掛け、「じゃ、さよなら!」と軽く微笑んで背中から後方に倒れスッと姿を消した。思わず下を覗き込むと、彼の姿は井戸に投げられた小石のように見る見る小さくなっていく。数秒間のはずのフリーフォールがとても長く感じた。「危ない。地面に激突する!」と思った瞬間、パラグライダーがパッと開き、ヒラヒラと舞い落ちる木の葉のように地面にゆっくりと下りていった。

 熱気球の飛行時間はたっぷり1時間。準備片付けも含めると計2時間半の経験だった。後片付けを終えた後は、皆で燃えるような夕日を眺めながらシャンパンで乾杯。束の間の夢のような空の旅の感慨に浸りながら、日が沈み暗くなるまで楽しいお喋りが続いた。この日が生涯忘れることのない素晴らしい思い出になることは間違いない。

森竹コットナウ由佳

プロフィール:森竹コットナウ由佳

2004年9月よりチューリヒ州に在住。静岡市出身の元高校英語教師。スイス人の夫と黒猫と共にエグリザウで暮らしている。チューリッヒの言語学校で日本語教師として働くかたわら、自宅を本拠に日本語学校(JPU Zürich) を運営し個人指導にあたる。趣味は旅行、ガーデニング、温泉、フィットネス。好物は赤ワインと柿の種せんべいで、スイスに来てからは家庭菜園で野菜作りに精をだしている。長所は明朗快活で前向きな点。短所はうっかりものでミスが多いこと。現在の夢は北欧をキャンピングカーで周遊することである。

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