UBSなどスイスの銀行にとって、新型コロナ危機はマイナスばかりでもなかった
© Keystone / Gaetan Bally
新型コロナウイルス危機に見舞われた2020年前半、スイスの銀行の預かり資産は800億フラン(約9兆2千億円)増えた。経済の先行き不安から、世界の富裕層が安全なスイスに資産を避難させようとしたためだとされる。
このコンテンツが公開されたのは、
フランス語圏のスイス公共放送(RTS)外部リンクによると、スイス大手8行の預かり資産は今年1~6月に総額800億フランの純増となり、うち6行は前年同期の増加幅を上回った。増加額が最も大きかったのはUBSの208億フラン。増加率が最も大きかったのはチューリヒ州立銀行(5.4倍、136億フラン)だった。
各行の決算報告によると、特に南米や欧州、中東の個人・企業からの預かり資産が増えた。各行のリストには一部の国名が挙がるが、詳細は不明だ。
ブルームバーグ外部リンクによると、英国の富豪で掘削機メーカーJCB会長のアンソニー・バンフォード卿は最近、カリブ海に預けていた資産60億ドル(約6300億円)をスイスに移した。
資金の逃避先
金融業界団体ジュネーブ金融センター外部リンクのエドゥワール・クエンデ会長はRTSに対し、「世界的な健康と経済の危機に直面している各国の資産家にとって、スイスは安定と安全を約束する国だ」と語った。
また、税務弁護士のフィリップ・ケネル氏はRTSで、「スイスは危機にうまく対処し、医療インフラが良好で、税制が魅力的な国だというイメージがある」と話した。スイスの銀行は危機を乗り越えるのに十分な資本が積まれているとの指摘もある。
一方でRTSは、スイスに集まる資産の一部は「汚れている」可能性があると報じた。バンフォード卿が資金をスイスに移した理由を探ろうと、RTSの記者はローザンヌの賃貸ビルに入っている持ち株会社JCBグループ・ホールディングス本社を訪れた。2019年に設立された同社は世界中で1万5千人の従業員を抱えるが、本社には「従業員が全くいなかった」という。「ビル内にいる唯一の人間は、我々の質問に答えようとしなかった」
スイス銀行協会によると、スイスの銀行の預かり資産総額は昨年、13.8%増の7兆8934億フランとなった。
オフショアマネー(自国以外の銀行に預けられた個人の資産)の約4分の1がスイス内で管理されている。
2019年のスイスの銀行の純利益は総額661億フラン(前年比1.1%増)、粗利益は232億フラン(4.5%増)だった。
おすすめの記事
スイスの抗生物質開発企業、塩野義と研究・ライセンス契約を締結
このコンテンツが公開されたのは、
抗生物質の開発に特化するスイスの新興バイオ企業ビオヴェルシス(BioVersys)は2日、日本の塩野義製薬と共同研究・独占ライセンス契約を結んだと発表した。
もっと読む スイスの抗生物質開発企業、塩野義と研究・ライセンス契約を締結
おすすめの記事
スイス公共放送協会、大規模な組織再編計画を発表 人員削減も
このコンテンツが公開されたのは、
スイス放送協会(SRG SSR)は政府の予算削減を踏まえた組織再編計画を発表した。4言語圏の放送局のスポーツ、ドラマ、制作、配給、人事、財務、ITサービスなど各部門を縦割りで再編成する。
もっと読む スイス公共放送協会、大規模な組織再編計画を発表 人員削減も
おすすめの記事
スターリンクの衛星アンテナ設置に反対運動 スイス南部
このコンテンツが公開されたのは、
米宇宙企業SpaceX(スペースX)が運営する通信衛星「Starlink(スターリンク)」のアンテナ40基をスイス南部の村に設置する計画に対し、反対する声が上がっている。
もっと読む スターリンクの衛星アンテナ設置に反対運動 スイス南部
おすすめの記事
スイスでは現金のチップが主流
このコンテンツが公開されたのは、
スイスのレストランでクレジットカードやスマホ決済が普及しているが、チップは今も現金で払うのが主流だ。消費者の多くは、チップが確実にスタッフの手元に入るようことを重視している。
もっと読む スイスでは現金のチップが主流
おすすめの記事
プラタナス、猛暑でも冷却効果 スイスの研究
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの研究所が新たな研究結果を発表し、プラタナスは猛暑でも冷却効果を発揮することが分かった。樹木の冷却効果は30~35℃で限界に達するという既存の仮説を覆す結果が出た。
もっと読む プラタナス、猛暑でも冷却効果 スイスの研究
おすすめの記事
スイス国立銀行、政策金利ゼロに引き下げ
このコンテンツが公開されたのは、
スイス国立銀行(中銀、SNB)は19日、政策金利を0.25%引き下げて0%にすると発表した。
もっと読む スイス国立銀行、政策金利ゼロに引き下げ
おすすめの記事
欧州外相、ジュネーブでイラン外相と核協議へ
このコンテンツが公開されたのは、
メディア報道によると、ドイツ、フランス、英国の外相は20日、スイス・ジュネーブでイラン外相と核協議を行う見通しだ。
もっと読む 欧州外相、ジュネーブでイラン外相と核協議へ
おすすめの記事
スイス議会、超富裕層への相続税案を否決 対案なく国民投票へ
このコンテンツが公開されたのは、
スイス上院は17日、超富裕層の相続に相続税を課し環境保護の財源にする案を否決した。
もっと読む スイス議会、超富裕層への相続税案を否決 対案なく国民投票へ
おすすめの記事
見えぬ障がい伝えるバッジ、試験配布開始 スイス連邦鉄道
このコンテンツが公開されたのは、
スイス連邦鉄道(SBB)は17 日、目に見えない障がいを持つ乗客を対象としたヘルプマークの配布を試験的に開始した。外見からは分からなくても支援・配慮を必要としている人への理解を深めることを目的としている。
もっと読む 見えぬ障がい伝えるバッジ、試験配布開始 スイス連邦鉄道
おすすめの記事
ユーロスター、スイスと英国結ぶ直通列車運行へ
このコンテンツが公開されたのは、
英国と大陸欧州をつなぐ高速鉄道ユーロスターは、スイス・ジュネーブとロンドンを結ぶ初の直通列車の運行を計画している。
もっと読む ユーロスター、スイスと英国結ぶ直通列車運行へ
続きを読む
おすすめの記事
「スイスが銀行の国」というのは本当か?
このコンテンツが公開されたのは、
「スイスの銀行家」は、ニュースや本、あるいは映画でおなじみの存在だ。しかし、本当にスイスにはそれほど銀行家が多いのだろうか?データで見てみよう。
もっと読む 「スイスが銀行の国」というのは本当か?
おすすめの記事
スイスの「資金洗浄大国」汚名返上への道のり
このコンテンツが公開されたのは、
スイスはこの数年、マネーロンダリング(資金洗浄)との闘いに努力してきた。法制度も整ってきたが、一刻も早く補修すべき欠陥も残る。
もっと読む スイスの「資金洗浄大国」汚名返上への道のり
おすすめの記事
スイスでテレワークの満足度が高い理由
このコンテンツが公開されたのは、
希望者には永久に在宅勤務を可能にする―。こんなメールがあなたの勤め先から届く日は遠くないかもしれない。スイスのテレワークが雇用者・被雇用者から広く受け入れられるのはなぜか。企業側から見た理由と課題を探った。
もっと読む スイスでテレワークの満足度が高い理由
おすすめの記事
秘密口座を整理するなら今がチャンス!?
このコンテンツが公開されたのは、
海外に秘密口座を持つスイス人は自主申告したほうがよい。事情によっては処罰を免れるためだ。連邦納税事務局の説明によると、1年後では手遅れになる。
もっと読む 秘密口座を整理するなら今がチャンス!?
オピニオン
おすすめの記事
「貧困が顕在化しているースイスはそれに対処できるのか」
このコンテンツが公開されたのは、
5月初めの土曜日、ジュネーブの食料配給に長蛇の列ができた。これが何を表しているか。新型コロナウイルスによる健康への危機は鎮静化したが、経済危機は今始まったばかりだということだ。グレゴワール・バーベイ氏は、「スイスは、数カ月前には考えられなかった貧困に今後直面する」と警告する。
もっと読む 「貧困が顕在化しているースイスはそれに対処できるのか」
おすすめの記事
スイス、コロナでOECD平均を上回る財政措置
このコンテンツが公開されたのは、
スイス連邦議会は今月、新型コロナ危機を受けた異例の規模の緊急経済対策を承認した。650億フラン(約7兆2千億円)にのぼる経済対策は世界でも有数の規模だ。
もっと読む スイス、コロナでOECD平均を上回る財政措置
おすすめの記事
スイス製腕時計の輸出 新型コロナ影響でピンチ
このコンテンツが公開されたのは、
新型コロナウイルスの感染拡大はスイスの時計産業に大きな打撃を与えた。2020年は業界史上最も深刻な危機の年となる見通しだ。一方で専門家らは、過去に何度も危機を乗り越えてきた業界の底力に期待を寄せる。
もっと読む スイス製腕時計の輸出 新型コロナ影響でピンチ
swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。
他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。