「根のバリア」を制御する遺伝子発見 食料安全保障の応用に期待
スイスの研究者らが、植物がより効率的に水分を保持し、干ばつへの耐性を高める仕組みを発見した。世界の食料安全保障の強化につながる可能性がある。
高い適応能力を持つアブラナ科の雑草「シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)」は、農業における直接的な価値はないものの、自然界で容易に見つかり、生活環が短く小さいことから、科学界では研究材料として広く利用されている。スイスではティチーノ州の野原や牧草地、森林の小道沿いなどで自生していることが多い。
ジュネーブ大学とローザンヌ大学の研究者らは、植物が水不足にどのように応答するのかを詳しく調べるため、世界各地で284種類のシロイヌナズナを採集・分析した。研究成果は5月、学術誌「Nature Plants外部リンク」に掲載された。
スベリンに着目
研究では、植物の根や樹皮に天然に存在する物質「スベリン」に着目した。
研究を主導したジュネーブ大学植物科学部のマリー・バルベロン氏によると、スベリンによって植物は土壌との物質交換能力を調整できる。水が不足しているときには水分の保持を助け、土壌中のミネラルの取り込みを調節する。
研究では、より温暖で乾燥した地域に由来するシロイヌナズナほど、根により厚いスベリン層を形成する傾向があることが分かった。
特別な遺伝子
今回の大きな成果は、根の組織のスベリン形成を制御する遺伝子「SUBER GENE1(SBG1)」の発見だ。
SBG1の働きが活発な植物ほど、より強固な保護バリアを形成する。働きが弱い植物では環境ストレスへの耐性も低いことが示された。
この発見は、研究室での基礎研究を超えた重要な意味を持つ可能性がある。
「この遺伝子はさまざまな植物で保存されている。トマトやコムギのような農業上重要な植物種でも同じ働きをするのか調べたい。スベリンを通じて植物が環境によりよく適応するのを助ける自然の遺伝子を特定できる可能性がある」(バルベロン氏)
今回の発見は、温暖化と乾燥化が進む気候に適した作物の開発に向け、新たなアプローチを切り開く可能性がある。
英語からの翻訳:大野瑠衣子
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