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ローザンヌ国際バレエコンクール 決勝で佐々木万璃子さん入賞

クラシックの「バヤデルカより、第3ソリストのバリエーション」を踊る佐々木万璃子さん。「やってきたことが全部出せた」と言う ( 撮影、小川峻毅 ) swissinfo.ch

「第38回ローザンヌ国際バレエコンクール」の決勝が1月31日行われ、東京都出身の佐々木万璃子 ( まりこ) さん15歳が3 位入賞を果たした。

1位はアルゼンチンのクリスティアン・アムチャステギさん、2位はスペインのフランシスコ・ムンガンバさんだった。決勝に残った中国人5人は惜しくも入賞を逃した。また久しぶりに決勝進出したスイス人アレキサンドラ・バラバニスさんにスイス賞が贈られた。

たくさんの人に見てもらいたい

 「本当にうれしい。とても緊張したが、クラシックとコンテンポラリー両方においてやってきたことが全部出せたと思う」
 と佐々木さんは、落ち着いた口調で入賞の喜びを語った。今後の目標は「たくさんの人に踊りを見てもらうこと」。また、留学先はロイヤル・バレエ・スクールを希望している。

 審査委員長のフランク・アンダーソン氏も
「万璃子は高い資質を持っている。足のステップを流れるように継続でき、広がりがある踊り方。非常に満足いくものだった」
 と語った。

 一方、「観客賞」も受賞した1位のアムチャステギさんは、妹がダンスをやっていたので4年前からダンスを始めた。
 「1位入賞を果たすとは思っていなかったのでとても驚いている。4年間という僅かなキャリアだが、自分に対しては非常に厳しくしている。ただ舞台に上り観客と交流することがとても好きだ」
 と話した。

 コンテンポラリーではキャッシー・マーストン氏の「カリバン」を踊った。嵐で遭難しその後すぐに亡くなった母親から生まれ、島で野生の動物のように育った男の子の孤独を描いた作品で
 「自分の母親が亡くなるとどんな気持ちになるかを想像したら自然に動きが出てきた。クラシックでは動きの多いものが好きなので、反対の性格のものにチャレンジしようと、このゆっくりと動く作品を選んだ」
 と話した。

  アンダーソン氏は
 「アムチャステギ君の1位は審査員全員がすぐに賛同したものだった。観客の意見も面白いことにわれわれの意見と同じだった。彼はとにかくソフトな踊りができる。動きが流れるようで途切れることがない。また同時にのびやかな動きができ、それはクラシックとコンテンポラリーの両方に言えることだ」
 と絶賛した。

 7人の選抜は
「機械的に審査メンバーの出した点数を合計した結果だ。入賞した7人は残りの人たちの平均ラインを越えて上だった」
 と話した。

男子が多いのは時代の反映

 一方コンクール全体を総括して、まず男子参加者が多かったこと、決勝に残った20人中でも16人が男子、決勝の入賞者も7人中5人が男子という異例の状況を
 「今の時代の傾向を反映した出来事だ。ダンスが男の子の職業として尊重され始めている。これは素晴らしいことだ」
 とアンダーソン氏は語った。

 その背景を例えばデンマークでは、俳優や有名なスポーツ選手がダンスをして競うテレビ番組が人気で、これが放送される土曜日は映画館もガラガラ。つまりダンスが非常に流行している。その源はマイケル・ジャクソンであったりヒップ・ホップダンスであったりする。こうした流れの中で多くの男の子がダンスを普通にするようになっているという。

 また、アーティスティック委員長のビム・ブルックス氏も
「こうしたさまざまなダンスをする男の子の中で道を極めたい子は、基本のダンスの型を学びたいとクラシックダンス・スクールの門をたたき始めている」
 と、男の子のダンス熱が時代の反映だという考えに賛同した。

 一方、アンダーソン氏は、バレエが変化しつつあることを強調し
「特にコンテンポラリーが盛んになり、こうしたヒップ・ホップダンスなどさまざまなジャンルのダンスとコンテンポラリーがミックスしてきている。ローザンヌが素晴らしいのは、こうした時代を反映させてコンテンポラリーに若手の振付家の新しい動きを導入していることだ」
 と語った。

 また、こうした新しいタイプのコンテンポラリーに若いダンサーたちがここで出会えることも貴重で
 「日本の女子 ( 大津理穂さん ) が参加者女子の中でただ1人、『カリバン』を選び、ショートパンツ姿で舞台に出てきて野生の動物のように育った少年の役を踊り始めたときは感動で涙が出そうになった。この非常にコンテンポラリーな作品に勇気を持ちチャレンジする精神、そしてそういう女子が現れ始めたことに感動した」
 と感慨深く語った。

 最後に、今年は初日から審査委員がクラシックの練習場に入り
「一日でも長く一人一人の参加者を見つめ、その成長と潜在的能力を見ていこうとした。これは来年も続ける予定だ」
 と話した。

1位アルゼンチンのクリスティアン・アムチャステギさん
2位スペインのフランシスコ・ムンガンバさん
3位日本の佐々木万璃子 ( まりこ ) さん
4位オーストラリアのカイトラン・スタバラックさん
5位アメリカのアーロン・シャラットさん
6位アメリカのクリストファー・エヴァンスさん
7位イギリスのリーバイス・ターナーさん

以上の入賞者は全員同額の奨学金を受け取り、一流のバレエ学校やカンパニーに留学できる。

今年のコンテンポラリー賞は7位入賞のリーバイス・ターナーさんに、観客賞は1位のアルゼンチンのクリスティアン・エマヌエル・アムチャステギさんに贈られた。また今年久しぶりに決勝進出したスイス人、アレキサンドラ・バラバニスさんにスイス賞が贈られた。

1973年ローザンヌで創設された「ローザンヌ国際バレエコンクール ( いわゆるプリ・ド・ローザンヌ) 」は、15~18歳の若いダンサーを対象にした伝統ある国際コンクール。

その目的は、伸びる才能を見出し、その成長を助けることにある。「英国ロイヤル・バレエ・スクール」、「スクール・オブ・アメリカン・バレエ」など、世界60カ国以上の学校、バレエ団が協力している。

今年の第38回コンクールでは、36カ国226人 の候補者の中からDVD 審査で69人が選ばれた。その内訳は女子32人男子37人で、初めて男子数が女子数を上回った。

昨年と同様、2つの年齢グループ ( 15、16歳と17、18歳 ) に分かれて3日間の練習を行い、練習点と完成度の点の合計で、練習最終日の1月30日に決勝進出者約20人が選抜される。

決勝では20人全員が踊り、約7人の入賞者が選ばれ、同額の奨学金を受け取り一流の国際的バレエ学校やカンパニーに留学できる。

決勝進出に選ばれなかった参加者も最終日にオーディションがあり、コンクールに協力するバレエ学校やバレエカンパニーから招待を受ける場合が多い。

今年はコンテンポラリー・バリエーションに2人の若手振付家、クリストフ・ウイールドン氏とベルンダンス劇場のキャッシー・マーストン氏の作品が選ばれた。

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