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氷河特急事故から学ぶこと



7月30日に開かれた記者会見で謝罪するマッターホルン・ゴッタルド鉄道のジャンピエール・シュミット会長 ( 左 ) とハンス・モーザーCEO

7月30日に開かれた記者会見で謝罪するマッターホルン・ゴッタルド鉄道のジャンピエール・シュミット会長 ( 左 ) とハンス・モーザーCEO

(Keystone)

7月23日に起こった氷河特急事故では、事故を起こした鉄道会社が事故後早いうちから謝罪の意を表明した。スイス大統領と外務大臣も哀悼の意を示す書簡を日本政府と外務省に送っている。さらに、現地のヴァリス/ヴァレー州大統領も謝罪した。

長年にわたって日本駐在経験のある元総領事、モリス・ハルテンバッハ氏は、スイスは以前より日本を理解するようになったと語る。

swissinfo.ch : このような事故があった場合、元総領事として、もし企業にアドバイスするとしたら、どのようなアドバイスをしたでしょうか。

ハルテンバッハ : 鉄道会社の顧問をしたことも、観光業界関連で働いたこともありませんが、もっとも重要なのは、社のイメージを守ることだとアドバイスするでしょう。

わたし個人の意見ですが、スイス人が ( 自己アピールが下手で) 控えめであることを考えると、今回、当事者の対応は良く、非常に努力したと思います。現場での救助も非常に早く行われましたし 、 ( 鉄道会社が ) すぐ謝罪したことや、誤解が生まれないように努力したことなど、立派にやり遂げたと思います。やり過ぎと思うかもしれませんが、決してそうではありません。

swissinfo.ch : 企業はすぐ謝罪しました。責任は会社側にあると認めたという報道もありました。スイスでは普通のことでしょうか。

ハルテンバッハ : 謝罪したということについていえば、事故が起こった時に、人間としてなすべきことがある。それを企業がしたまででしょう。人間としての思い、つまり哀悼の意を表したわけです。

しかし、責任があるかどうかという点になると、法律的には別問題です。エレベーターの事故が日本であったシンドラーの場合は、エレベーターの整備会社はシンドラーではなかったことから、責任があるかどうかということは分からないと言いました。物事は簡単に判断できないからです。

もし今回、鉄道会社が事故後すぐに責任を取ると言ったとしたら、過去のことから学び、日本人の感情を分かっていたのだと思います。

swissinfo.ch : 州の大統領も哀悼の意を伝えました。

ハルテンバッハ : ヴァリス州にとっても、氷河特急は世界的にも有名で、非常に重要な財産であることは認識しているからでしょう。だからこそすべての手段をとって、イメージを大切にしようとしたわけです。日本からも多くの報道陣が現地に入ったということもあったため、州が哀悼の意を示したのは、良く考えてのことだと思います。哀悼の意を表す、このような事故が起こり残念だと思う心はだれでも持つものです。

swissinfo.ch : 総領事としてあなたなら、ロイタルド大統領やカルミ・レ外相に手紙を書くようアドバイスしたでしょうか。

ハルテンバッハ : わたしが思い出すのは、サルコジ仏大統領がアフガニスタンでフランス兵が戦死した際、現地に赴いたことです。これは、良いことで美しいことだと思います。しかし、その背景の一つにあるのは、メディアの存在です。これをしないと、冷淡だと報道されるかもしれないという懸念があります。 ( 書簡をしたためたり、直接訪問したり ) こうしたことをする今の社会は、よりオープンで人間的になっているということでもあり、良いことでもあります。大切なのは、哀悼の意を表すことで、将来こういうことが起こらないようにと望むことではありませんか。

swissinfo.ch : 企業が謝罪したとき、安全を第一として掲げていた会社がこのような事故を起こし、恥ずかしいという言葉を使いました。日本人の感情に訴えた表現でした。

ハルテンバッハ : 日本からの観光客は、以前から非常に重要なお客様です。また、日本はスイスにとって重要な国であり、スイスも日本に対しては親しみを持っています。

( 日本との直接のビジネス関係もあったであろう ) 企業も日本のことをよく知っているはずです。また、東京にあるスイス政府観光局も日本のことをよく知っています。在日スイス大使館も、ビジネスマンには日本人との名刺交換の仕方や礼儀などいろいろとアドバイスしています。このような努力から、スイスは日本のことをなにかしら学んだと思います。

もっとも、まだまだ、スイス人が抱く日本のイメージは禅と武士道の国なんですがね。

swissinfo.ch : 事故2日目にして、運行が再開しました。これに対して日本では非難の声もあります。

ハルテンバッハ : すべてをチェックし、人間の常識から判断して危険はないのだろうとスイス人なら思うでしょう。車両も故障したものは使わず、運行にも細心の注意が払われたと聞いています。乗客は、それなら安全だと企業を信頼するでしょう。

もちろん、死者に対する感情もあるのは当然です。しかし、事故後であろうと一生に一度の旅行に多くの期待を抱いて来る観光客もいるという現実もあります。もし、鉄道が喪に服し、運休していたらこうした人たちはがっかりするでしょう。

swissinfo.ch : 夏の書き入れ時に運休はできない。会社の金儲けだという批判もあります。

ハルテンバッハ : お金の問題は常に付きまといます。人間の常識から判断して安全であるとして、運行開始することにしたのだと思いますよ。

亡くなられた方のことを配慮するのは理解しますが、犠牲者が例えばほかの国の人だったらどうでしょう。日本人はその時も同じような批判を会社にしたでしょうか? この質問は投げかけられて良い質問だと思います。もしかしたら日本人は、外国の企業に対しての要求が高いのかもしれませんね。

swissinfo.ch : 日本は、客を大切にします。今回、犠牲者を出した旅行会社は、犠牲者家族や負傷者一人一人のためにスタッフを送り込みました。

ハルテンバッハ : お客様第一の日本のサービスは洗練されていますね。たとえば、JRの東京駅には毎日何百万人の乗客が通りますが、非常にきれいです。スイスだったらお金がかかるといってやらない。日本も人件費が高いのにもかかわらず、きれいにしている。スイスやヨーロッパとは比べ物にならないサービスが日本にはありますね。

今回の場合、日本の旅行会社も長期的に見て、そうすることで会社のイメージを上げ収益につながると考えてもいるのでしょうが、客を大切にするという会社の信条でそのような手厚いケアをしたのでしょう。二つとも本当だと思いますし、両方あって悪いことではないと思いますよ。

swissinfo.ch : 今後スイス側と日本側の交渉はどのように進むのでしょうか。

ハルテンバッハ : まずは、犠牲者、負傷者、交渉相手の声をよく聞くことですね。

スイスでは、客観的な基準に従って交渉は動いて行くでしょう。気持はその後から配慮されることになります。法律に従った客観的な判断があったあと、関係者の心情を配慮し調整することになります。

鉄道会社の保険会社との関係もあるでしょうから、交渉は複雑なものになり、長期にわたると予想されます。しかし、両者ともに相互理解に至ろうという意思があり、どうにか解決しようという意志がある交渉になるでしょう。

佐藤夕美 ( さとう ゆうみ ) 、swissinfo.ch

安全が先か、時間厳守が先か?運転手に圧力?

スイス国営テレビのドイツ語放送 ( SF ) は8月3日のニュース番組で、線路のゆがみが確認された後も、列車のダイヤを乱さないため運転速度を基本的には制限最高速度以下に落とす必要はないと社内に通達するマッターホルン・ゴッタルド鉄道の書類をリークした。これに対し会社側は番組の中で、時間通りの運行より安全が第一であると、再度安全第一が社の信条であると答えている。番組では、事故のあった付近だけで10カ所の線路のゆがみがあり、運転手はブレーキをかけたり制限速度以下で運転したりしていたという。
会社には線路の状態に問題があるという認識があったことを示す書類もあるという。

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モリス・ハルテンバッハ氏 ( Maurice Hartenbach) 略歴

1945年 ベルン生まれ
1968年  ヌーシャテル州立大学法学部卒業。アメリカでMBAを取得し、スイスユニオン銀行 ( UBS ) に就職。
1975年スイス連邦外務省入省。9年間在日スイス大使館に勤務。その後インド
ネシアへ派遣。
1987年 スイスで、外務省から他の省のために法律顧問として働く。
1992年 公使として再び東京へ。
2002年 オーストラリア・キャンベラに公使として駐在。
2004年 大阪で総領事。
2007年 大阪領事館閉鎖とともに退官。
2009年から シュヴィーツに居を構える。

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