アルツハイマー ワクチン改良で臨床試験再開へ

臨床試験でアルツハイマー病患者に副作用を引き起こし中断となったワクチンを、チューリヒ大学医療研究員らが改良した。年末までに臨床試験を再開する見通しで、アルツハイマー病の治療や予防に新たな道を開くと期待されそうだ。
アルツハイマー病を引き起こす原因は、はっきりとわかっていないが、「ベータアミロイド」と呼ばれるたんぱく質が脳に蓄積し、神経細胞が次第に死滅して痴呆症状が起こるとされる。
再開予定の臨床試験では、「ベータアミロイド」を除去する治療法として、改良したワクチンを投与し体内で抗体を作る方法と、抗体そのものを投与する2種類の方法で実施される予定だ。
臨床試験、中止
ワクチン療法の開発が暗礁に乗り上げたのは2年前。アルツハイマー病患者298人を対象に世界中で実施された当時の臨床試験で、患者の6%が副作用で脳炎になる問題が生じ、安全性の問題から試験が中止された。
ワクチンはアメリカのエラン製薬会社が開発。
ワクチンが開発された当初、マウスを使った実験段階では副作用は確認されなかったという。スイスのある研究には、注射するタイプのワクチンが記憶の減退などアルツハイマー病に見られる症状を遅らせる効果の可能性があるとも報告されていた。
ワクチン改良
臨床試験が中止された後、チューリヒ大学の医学研究所の二ッシュ所長らは、参加した患者からワクチン投与の経過を調査。
詳しく分析したところ、体内で抗体が生まれなくても副作用の脳炎にかかった患者が確認された。この結果、ワクチン投与がアルツハイマー病に顕著な症状を遅らせる効果を生む一方、体内に「T細胞」と呼ばれる不規則な細胞も引き起こし、これが脳炎を生じさせる原因となったことがわかった。
「今回の調査で、ワクチンそのものが副作用を起こしたのではないと確信できた」と同所長は言う。その後、体内に「T細胞」を誘発しないワクチンに改良した。
二ッシュ所長は、「今後、アルツハイマー病の予防薬やパーキンソン病などの治療に応用されることができればいい」と話している。
スイス国際放送 ビンセント・ランドン 安達聡子意訳
アルツハイマー病 脳の神経細胞が萎縮して痴呆症状を起こす病気。
軽度の症状は、記憶や物事の判断が怪しくなる。
中度では幻覚や妄想が現れ、重度で寝たきりの経過をたどる。

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