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高齢化社会に調和をもたらすためには

持ちつ持たれつ。世代の共存は不可欠 vario-imgaes

8月5日、国家研究プログラム「スイスの世代報告」が、新しい調査「社会の変化における幼年時代、青少年、世代間の関連」 ( NFP 52 ) の結果を発表した。

スイスでは高齢化社会によってどの世代にも生活に変化が訪れているが、それぞれの世代間はおおむね団結しながら共存している。

複雑な世代間のつながり

 スイス社会の高齢化は進んでいる。1940年生まれの女性で子どもを持たなかったのは7人に1人だったが、1965年生まれではほぼ3人に1人だ。子どもの数が減少すると同時に、寿命も大幅に伸びている。1900年ごろの平均寿命は47歳。現在では80歳を超えた。そしてこれから団塊の世代が高齢になる。このような傾向にブレーキをかけているのは唯一移民のみ。彼らは比較的若く、子どもも多い。

 公の議論では、社会制度をこのまま安定させるには人口を長期的に一定に保たなければならず、出生率2.1を必要とすると言われている。しかし、そうすると高齢化は減速するものの、就労世代は高齢者だけでなく青少年の需要も賄わなければならなくなるため、若い世代の社会保障制度に対する負担が増える。

 世代間のつながりは複雑だ。高齢になると看護の手が必要となり、医療費も若い世代が負担することになるだろうが、一方ではこれによって若い世代に職と賃金がもたらされる。報告書によると、医療費が実際に増えるのは、高齢になったときよりも死が近づいた時期だという。

無償の働き

 国民が国に支払うものに税金や手数料、保険料などがあり、国は国民に対して年金、家族手当、教育費、医療費などを支払う。世代間には、それ以外にもお金の動きがある。たとえば遺産。スイスでは、預金よりも遺産の額の方が大きい。2000年の遺産総額はおよそ285億フラン ( 約2兆9400億円 ) で、これは国民総生産の約7%に当たる。だが、半数以上は遺産額が5万フラン ( 約515万円 ) に満たないケースで、500万フラン ( 約5億1500万円 ) 以上の遺産を残す人は全体の0.6%にしかならない。しかし、これらの相続人がスイスの遺産総額のほぼ3分の1を分け合っている。全体的に、貧富の格差は高齢になるほど大きくなっている。

 世代間ではお金以外にも移動しているものがある。祖父母が孫の面倒を見る時間は1年間で1億時間に上り、これをお金に換算すると20億フラン ( 約2100億円 ) になる。これらの労働の8割は祖母が行っている。また、高齢者の看護も身内の手で行われるケースが多い。80歳以上の高齢者のうちホームに入居しているのは5分の1に過ぎず、10人に6人は自宅で身内の看護を受けている。この労働もやはり8割が女性の手によっており、お金に換算すると年間100~120億フラン ( 約1兆300億~1兆2400億円 ) になる。

 将来の社会政策の負担を軽減するために、「スイス世代報告」は老後の備えの拡充や労働意欲のある高齢者の退職年齢の引き上げ、的を絞った健康管理など、世代間の多様な発意を定着させるべきだと提案する。また、大きな改革を計画する際には、世代間の関係を考慮するべきだとも指摘した。

swissinfo、小山千早 ( こやま ちはや )

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