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ギー・パルムラン氏、スイス大統領2期目に就任 「経済と政治の調和」を重視

ギー・パルメラン、本日より2度目の会長職に就く
スイス大統領2期目に就任したギー・パルムラン氏。スイスは7人で構成する内閣の閣僚が毎年、交代で連邦大統領を務める「輪番制」を取る Vera Leysinger / SWI swissinfo.ch

スイス連邦内閣で10年の閣僚経験をもつギー・パルムラン氏が1日、2期目の連邦大統領に就任した。スイスは7人で構成する内閣の閣僚が毎年、交代で連邦大統領を務める「輪番制」を取る。保守右派の国民党(SVP/UDC)所属で、経済相も務める同氏が、対米関税交渉や欧州連合(EU)との新協定パッケージ、移民問題などについて語った。

スイスインフォ:有効投票210票のうち203票を獲得して、2度目の連邦大統領に選出されました。過去40年で最多の得票でした。人気の秘訣は何でしょう?

ギー・パルムラン:その質問は私を選んだ議員たちにして欲しいと常々言ってはいるのですが…考えるに、私が担当する経済・教育・研究省の構造に理由があると思います。同省は、農業、教育、研究、経済、労使関係を管轄しているので、私は議会のほぼすべての委員会に関わっています。そのため、多くの議員が私を知っていますし、仕事の進め方もわかっています。

メディアは、2026年はあなたにとって連邦閣僚最後の年になると報じています。今回の圧倒的な勝利を受けて、任期を延長する考えはありますか?

常々、任期を全うすると述べてきました。もちろん、健康上の問題が生じる可能性はあります。謙虚さは大切です。しかし、今のチームと共に働く情熱と意欲がある限り、私は続けます。

2021年の連邦大統領1期目は、新型コロナウイルス禍の最中でした。この激動の1年から2期目に活かせる教訓を何か得ましたか?

コロナ禍はまったく予測不可能でした。ですから、あらゆる事態に備える必要性を学びました。私は、今が5度目の危機だと繰り返し指摘しています。新型コロナウイルス感染症の流行後、ウクライナ戦争とそれに伴うエネルギー供給問題、クレディ・スイスの破綻があり、そして今は米国との関税問題です。スイスにとっても世界にとっても、最善策は安定化です。それによって、世界経済が回復し、スイス企業が輸出に最適な環境を得られます。

ギィ・パルメラン
「今が5度目の危機だと繰り返し指摘しています」 Vera Leysinger / SWI swissinfo.ch

米国との関税協定締結に向けた交渉では、政府と企業が緊密に連携していました。スイス外交の弱さの表れでしょうか?

いいえ、そうは思いません。スイスでは、官民協力の重要性が忘れられています。経済が、社会保障や教育制度をまかなう収入を生み出します。経済を政治や公権力と調和させなければなりません。経済がうまく機能すれば、連邦、州、自治体はそれぞれの任務を果たせます。ウィンウィンの関係です。しかし、明確にしておきたいのは、交渉を行うのは連邦政府であって、民間部門ではないという点です。

今のところ、スイス・米国間にあるのは拘束力のない覚書(MOU)だけです。ドナルド・トランプ米大統領がこれを撤回したり、考えを変える懸念はありませんか?

政治に絶対はありません。しかし、スイスは約束を必ず守ります。私たちはこの覚書を法的拘束力のある協定に変えたいと考えていますし、米国もそれを望んでいます。私は米通商代表部(USTR)のジェミソン・グリア代表に対し、(議会や州と協議するための)委任状案の作成や委員会や州との協議に迅速に対応すると約束しました。これらはすでに完了し、スイスには米国と交渉する用意があります。民間企業による対米投資も続くでしょう。製薬業界ではすでに発表されました。他の国々でも多くの約束がなされましたが、結果は出ていないというのが米国の認識です。

メディアは、米国が欧米の製薬大手9社と結んだ合意を「銀行秘密の終焉(しゅうえん)」と比較し、スイスが米国の圧力の下で大きく譲歩をしたと評しています。同じ見解ですか?

いいえ、違います。これは民間部門が合意したもので、スイスだけではなく8カ国が関与しています。スイス政府としては、スイス製薬業界の地位強化に向けた戦略を策定するべく作業部会を設置しました。製薬会社の一部をスイスに留めたいのであれば、枠組みとなる条件を改善する必要があります。製薬会社は、米国、中国、そして将来的にはインドといった市場に近い場所に拠点を置こうとしています。この流れには逆らえなくとも、研究や一部の雇用を国内に留めることはできます。医療費を急激な上昇を抑えつつ、イノベーションへの投資を呼び込むのに有利な枠組みを議論していきます。

ギィ・パルメラン
「経済を政治や公権力と調和させなければなりません」 Vera Leysinger / SWI swissinfo.ch

スイスは米国に対し、多くの譲歩をしてきました。ところが、EUとの交渉では、より慎重な姿勢を見せています。EUがスイス最大の貿易相手であるにもかかわらず、このような姿勢は妥当でしょうか?

スイスが(米国に対してEU)より多くの譲歩をしてきたとは考えていません。スイスは国益を守りつつ交渉します。スイスの3大パートナーは、EU、米国、中国です。相互補完的な関係です。一方、スイスはパートナーシップを多様化させる必要があります。パートナーシップの拡大は、多国間主義の危機から得た大きな教訓です。その一環として、例えばインドと自由貿易協定を結びました。しかし、米国は欠かせない存在です。選択の余地はありません。国益は守らなければなりません。

1期目には、EUとの枠組み条約の交渉を打ち切るという使命がありました。2026年は、ベルギー・ブリュッセルを訪れ、所属政党の意向に反して、EUとの新たな協定パッケージに署名しなければなりません。この試練にどう向き合いますか?

状況ははっきりしています。連邦内閣が決定を下し、政党は別の役割を担います。2021年の時は、私はブリュッセルで、枠組み条約はスイスにとって満足のいくものではないとの政府見解を説明しました。今回、連邦内閣は新たな協定パッケージをバランスが取れており、署名可能と判断しています。私が政府を代表してこのメッセージを伝えます。その後、議会での審議と国民投票(レファレンダム)が行われます。

ギィ・パルメラン
「今回、連邦内閣は新たな協定パッケージをバランスが取れており、署名可能と判断しています」 Vera Leysinger / SWI swissinfo.ch

もし国民投票で協定パッケージが否決されたらどうなりますか?

先のことはわかりません。否決された場合、連邦議会の意思でも連邦内閣の意思でもない、スイス国民の「ノー」に対して、EUがどう反応するか見極める必要があります。

あなたが所属する国民党のイニシアチブ(国民発議)「人口1000万人のスイスに反対」は、新たな協定パッケージを妨害する恐れがあります。あなたはイニシアチブに反対しなければなりませんし、党と対立するでしょう。そうなることを懸念していますか?

私たちは閣内で議論したうえで決定します。この件に関して、連邦内閣は、イニシアチブは経済に重大なリスクをもたらすと判断しました。ですから、私たちはイニシアチブに反対し、国民にリスクを説明します。もし可決されれば、適用しなければなりませんが、仮定の話はしません。

移民はスイス経済に不可欠な原動力です。どの程度の移民ならスイスは許容できると考えていますか?

そのような質問は適切ではありません。国民が懸念しているのは、移民の右肩上がりの増加と、それに伴うインフラコストの上昇やインフラの飽和状態です。しかし、スイスはこれまで、経済のニーズに基づき移民政策をとってきましたし、それは今後も変わりません。何らかの限界に達するのではないか?少なくとも国民はそう感じています。これは非常に複雑な問題です。ただ、「人口1000万人のスイスに反対」イニシアチブが、スイスの経済と福祉を重大なリスクにさらすのは明らかです。

世界政治の動きは加速しています。一方、スイスはマイペースです。これは強みですか、それとも弱み?

スイスは連邦制のおかげで国民との距離が近く、誰もがそれを重視しています。しかし、意思決定プロセスに時間がかかり、競争では時間を失う可能性があります。一方、この遅さに乗じて、他国を観察し、他国が犯した過ちを避けられます。

ギィ・パルメラン
「国境が閉鎖されれば、1日おきにしか食事をとれなくなります」 Vera Leysinger / SWI swissinfo.ch

スイスの通貨フランが強いです。経済相としてどう見ていますか?

幸い、金融政策はスイス国立銀行(中銀、SNB)の管轄です。フラン高は、スイスの経済と制度に対する国際的な信頼を反映しています。しかし、輸出産業にとっては非常に不利な条件です。

連邦内閣入りし、連邦大統領に就任する前は農家でした。農業はあなたの中でどう活きていますか?

控えめに言っても、農業の問題は理解していると思います。農業が食料安全保障の「保険」である点は、見過ごされがちです。国境が閉鎖されれば、1日おきにしか食事をとれなくなります。ところが、農業は、自然保護、生産の必要性、そして消費者の矛盾の板挟みになっています。誰もが健康で質の高い製品を求めますが、その代価は払いたくありません。環境保護を望む人でさえ、時には、村の食料品店に歩いて行くのではなく、より安い製品を求めて車で国境を越えます。

連邦大統領2期目のモットーは何ですか?

スローガンは決めませんでした。多くの同僚がスローガンを発表した後、危機や不測の事態のために変更せざるを得なかったので。私が何よりも望んでいるのは、経済と政治の調和です。国民にこう話します。世界が変わったとしても、連邦内閣には自信があります。スイスにはよい条件があるのだから、と。とりわけ国民に直接会い、国民の懸念に耳を傾け、私たちの取り組みを説明します。

就任直後から、閣僚会議の議長を務めることになります。どう臨みますか?

幸い、私にはすでに1年の議長経験があります。コロナ禍という非常に困難な状況で得たものです。長引く会議――準備のために、閣僚たちに電話をかけ、時には深夜まで作業しなければなりませんでした。プレッシャーは非常に大きいものでした。今日の連邦内閣は、以前より円滑に機能しています。私たちが公表する統計によると、より少ない労働時間で、より多くの質疑に対応しました。効率が上がっています。課題は多いものの、この傾向が今後も続くよう願っています。

ギー・パルムラン氏略歴

ギー・パルムラン氏は2015年の初入閣以来、10年の閣僚経験をもつ。国防相を務めた後、2019年に経済・教育・研究相に就任。現在に至る。新型コロナウイルス感染症のパンデミックの最中にあった2021年、1期目の連邦大統領を務めた。

1959年、レマン湖畔にあるヴォー州ビュルサンのブドウ栽培農家に生まれた。農業の職業訓練を経て、ワイン醸造学の連邦高等専門職資格を取得し、家業を継ぐ。2003年、保守右派の国民党(SVP/UDC)所属の国民議会(下院)議員になる。国際的には、2021年にジュネーブで、米国のジョー・バイデン大統領とロシアのウラジーミル・プーチン大統領との会談を主催したことで知られる。

率直さが持ち味、ユーモアと親しみやすさを兼ね備える。5時半に起床し、連邦内閣一、朝が早い。妻、甥たち、姪たち、そして90代の父と慎ましく暮らす。

編集:Balz Rigendinger、仏語からの翻訳:江藤真理、校正:大野瑠衣子

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