化石燃料脱却に向けコロンビアで国際会議 行程表目指し再挑戦
化石燃料脱却に向けたロードマップ(行程表)の策定を求める国々が、このテーマに特化した世界初の閣僚級会議を開く。ロードマップ策定を支持するスイスも気候特使を派遣する。石油やガスの供給が世界で不安視される今、確かな成果は得られるのだろうか。
化石燃料使用の段階的廃止に特化した世界初の閣僚級国際会議「第1回化石燃料脱却会議外部リンク」が24日、コロンビア北部サンタマルタで開幕する。会期は29日まで。中東での武力衝突に伴い石油・ガス市場が混乱する今、この議題には当初の想定にない切迫感が生じている。
会議の目的と参加国
サンタマルタ会議の目的は、地球気温の上昇を産業革命前から1.5度に抑えるという世界目標を達成するため、化石燃料使用の段階的廃止を早める具体策を打ち出すことだ。公正で秩序ある移行にどのような法的手段や経済的措置、社会変革が必要か、明示することを目指す。
主催国コロンビアは石油や石炭の生産国(サンタマルタには重要な石炭輸出港がある)だが、2023年に「化石燃料不拡散条約」の制定を求める国々に加わるなど、近年は化石燃料脱却を積極的に主張してきた。
スイス連邦環境局(FOEN)によると、スイスからはフェリックス・ヴェルトリ気候特使が会議に出席する。また、コロンビアとスイス以外では53カ国・地域外部リンクが参加を確約。共催国としてコロンビアを支えるオランダや、コロンビアと同じ化石燃料生産国のカナダ、ノルウェーが名を連ねている。日本は参加しない。
今回の会議は新たな対話と協力の場だ。国連での気候交渉は2025年11月、ブラジル北部ベレンで直近の第30回気候変動枠組み条約締約国会議(COP30)が行われたが、化石燃料をめぐる議論は停滞した。また、正式な国連会議は石油関係者のロビー活動に影響されすぎているとの批判外部リンクもある。
ただし、新たな会議はCOPに取って代わろうという試みではない。化石燃料依存の軽減を望む国々が実のある行動を取れるよう支援するため、補完的な政府間プラットフォームをつくることを目的としている。
スイスは化石燃料の使用を段階的に廃止し、再生可能エネルギーへの移行を続けることを公約している。最近開かれた国連気候変動枠組み条約の第30回締約国会議(COP30)では、80カ国余りのグループの一員として化石燃料脱却への明確なロードマップ(行程表)の策定を訴えた。
その一方、スイスは交通・運輸や暖房などのため、依然として石油・ガスの輸入に深く依存している。本シリーズでは、スイスのエネルギー依存や化石燃料とのやや曖昧な関係について、国外の情勢を踏まえながら分析する。
おすすめの記事
中東情勢とスイス、石油・ガスは供給確保も影響免れず
なぜ今、化石燃料脱却に特化した会議を開くのか
世界の温室効果ガス排出の68%外部リンクは化石燃料に由来する。気候目標を達成するには、これを太陽光や風力など汚染の少ないエネルギー源に置き替えることが欠かせない。
アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで開かれた第28回気候変動枠組み条約締約国会議(COP28、2023年11月)では、30年を超える気候交渉で初めて、約200カ国が石油、ガス、石炭の消費を徐々に減らす必要があることを認めた。しかし、その後は具体的な進歩が途絶えている。
再生可能エネルギーへの投資は拡大しているが、世界の化石燃料生産計画から推計される温室効果ガス排出量は数年先まで増加する見通しだ(下図参照)。
ベレン会議では議長国ブラジルがコロンビア、オランダと連携し、化石燃料脱却に向けた世界ロードマップ(行程表)の策定を提案。80カ国余り外部リンクの支持を得た。しかし、この案は会議の最終合意文書に盛り込まれなかった。サウジアラビア、ロシアなどの産油大国や、実効的で急速な移行を嫌がる中国、インドが妨げとなったからだ。
一方、コロンビアとオランダが主導する少数の国々は、国際的圧力を維持するためCOP交渉の枠外に新たな外交舞台をつくることを模索。その結果、COPの最終合意の発表と同じ日に、24カ国が署名した「化石燃料脱却に関するベレン宣言外部リンク」が発表された。宣言文は、化石燃料の生産やそれに対する許認可、補助金の交付は国際的な気候目標と相容れないとの認識を示している。
この宣言はサンタマルタ会議の土台となっただけでなく、メキシコやオーストラリアなど、化石燃料生産国が署名したことで歴史的に重要な文書と評されている。
おすすめの記事
化石燃料使用の段階的廃止、スイスの立場は?
スイスはCOP30で化石燃料脱却の国際ロードマップを求めるブラジル案を支持した。ベレン宣言は「発表が非常に遅かったため署名できなかったが、明確に支持していた」(連邦環境局)。サンタマルタ会議にも特使が出席する。
ロードマップに関しては、移行を進めるための具体的な進捗目標を明示すべき、というのが連邦環境局の立場だ。世界で年間数千億ドル(1000億ドル=約16兆円)の化石燃料補助金外部リンクの根絶を目指す取り組みにも加わっている。
連邦環境局は電子メールで取材に応じ、「サンタマルタでの会議は共通の課題をめぐる意見交換の端緒となる。ここで始まる議論は間違いなく必要であると同時に、複雑なものになる」と表明した。
化石燃料からの脱却は、気候だけの問題ではない。経済や金融、エネルギー安全保障に及ぶ影響への熟慮も求められる。化石燃料産業で働く数百万人の生計を考えることは、とりわけ重要だ。
スイスは自国の温室効果ガス排出量を2050年までに差し引きゼロにすることを目指しているが、化石燃料を明確に禁止したわけではない。建物の暖房設備の交換を促すことや、革新的で持続可能な工業技術を支援することを主な手段とし、消費を削減外部リンクする計画だ。
スイスエネルギー財団の再エネ・気候専門家、レオノア・ヘルグ氏は、化石燃料から電気への切り替えやエネルギー需要の削減により、地政学的に不安定な地域からの供給への依存が大きく軽減されると指摘。「現在の中東での衝突は、石油輸入国が価格上昇への対応でいかに無力かを示す完璧な実例だ」とスイスインフォに語る。
中東情勢が化石燃料脱却に及ぼす影響は?
ヘルグ氏は、米国とイスラエルのイラン攻撃を発端とするエネルギー危機を受け、世界の化石燃料使用の段階的廃止を求める声は強まっていくとみる。だからといって、各国政府が強力なロードマップの策定に前向きになるかは分からないという。
国際持続可能な開発研究所(IISD)のパオラ・ジャングアス・パラ政策顧問によれば、目下の危機は「化石燃料がエネルギー安全保障に資することはなく、むしろ阻害する」ことを浮き彫りにした。この点で、世界の化石燃料使用を段階的に廃止すべきとの主張が説得力を増すとみられる。
ジャングアス氏は、相反する流れが存在すると指摘。エネルギー安全保障を名目に化石燃料の生産や関連インフラを拡大している国がある一方、今回の供給ショックに乗じてクリーンで強靭な体制への移行を加速する国もあると説明する。同氏はウルグアイがほぼすべての電源の再エネ化を10年足らずで達成した例を引き、「適切な優遇政策や政治的意志があれば、移行はすぐにでも達成可能だ」と語る。
同氏はまた、化石燃料生産国も石油・ガス価格の高騰を路線変更の好機として利用する可能性があると論じる。「化石燃料輸出国の中にも、価格高騰中の収入をうまく使って経済多角化や労働力の移動、社会的保護を支える例が出てくるかもしれない。(化石燃料への)依存を深めるのではなく、長期的な強靭性を築くということだ」
化石燃料脱却会議に望み得る成果は?
サンタマルタ会議で拘束力のある合意が生まれることはない。しかし専門家ら外部リンクの見通しでは、公正さと秩序、公平性を備えた化石燃料からの脱却について、最低限の目標や、従来の国連会議より野心的な表現が共同文書に盛り込まれる可能性はある。化石燃料使用の段階的廃止に向けた世界共通ロードマップの作成において、この文書がたたき台となるかもしれない。
会議の組織委員会は、サンタマルタで多くの国や国際機関、企業が脱化石燃料への道筋を固め、ベレン宣言に署名した少数の「有志」が広範な連合に発展することを期待している。
Edited by Gabe Bullard / VdV、英語からの翻訳:高取芳彦、校正:ムートゥ朋子
JTI基準に準拠
swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。
他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。