スパゲティをよりエレガントに食べる
スパゲティをエレガントに食べる。スイス人にとっても、大きな課題。ソースをはねないでうまくフォークに絡めて音を立てずに口に入れるまで、冷や汗もの。
身体に障害を持つ人たちにもスパゲティを食べて欲しいとホテル専門学校の生徒2人が、スパゲティ専用のお皿を発案。簡単にスパゲティがフォークに絡むようになっていて、一般の人でも心から料理を味わうことができそうである。
スパゲティ。イタリア料理の代表である。食べ方は難しい。うまくフォークに絡ませることができない。絡んでくれたと思っても、皿から口まで持ってゆく間にパラリ。フォークからほどけてしまうこともあり、必死にスパゲティと格闘してしまう。実はイタリア人さえも、最近は不器用になっていると言われるらしい。
誰でも簡単に、しかも、エレガントにスパゲティを食べたいという要求から発明されたのが、スパゲティ専用の皿「ドック・スパック」。スイス人の発明である。
身体障害者にもスパゲティを食べてもらいたい
注目の「ドック・スパック」は中心がくぼんでいる。このくぼみを利用してスパゲティをフォークに絡ませるようになっている。ジュネーブ出身のメディ・デロウアチ氏とフランク・マルタン氏が発案し、特許を申請している。
マルタン氏の父親は医者だが、病気で体が一部麻痺してしまった。無理なくスパゲティを食べられるようになりたいというマルタン氏の父親の望みからアイディアが生まれた。マルタン氏は同級生のデロウアチ氏と共同でスパゲティ専用の皿の開発に取り組んだ。
いかにエレガントに絡ませるか
こうして真中がくぼんだ「ドック・パック」は、スイスの国境を越えフランスのエビアン市で開催された発明展で優勝した。二人の出身校であるホテル専門学校の協力もあり、スパゲティの皿は商品化され、まずはスイスで販売されることになった。
「スイスは複数の文化が混在していて、多様な反応を見るには最適と、大企業もスイス市場を試験段階に利用している」
と発明者の2人。
しかもスイスは、スパゲティの1人あたりの消費量がイタリアの22Kgについて10Kgと世界第2位。試験市場としては最適である。
スイスで成功すれば、来年にはイギリス、スペイン、フランスへ進出する予定という。最終的にはアジア諸国やアメリカにもと2人の夢は広がる。
しかし、
「立食パーティや子供たちに使ってもらえれば」
と、高級店への進出はあまり考えていない。
さらに、イタリアへ進出する勇気はまだない。イタリアではフォークにスパゲティを絡めるためにスプーンなどを使うことを極端に嫌うからである。
チューリヒでは5本の指に入る高級イタリア料理店「カサ・フェルリン」で長年ウェーターをしているピオ・マルケッティ氏はスパゲティ専用の皿の写真を見て、
「売れるかもしれません。でも当店では、使いません。スパゲティはフォークにエレガントに絡めるて食べるものです」
と、反応は冷たい。
スイス人のスパゲティの食べ方
ところで、スイス人はスパゲティをどう食べているのか。
前出のカサ・フェルリンでは、9割以上がフォークのみ。
「スプーンを欲しいお客様にはスプーンを出しますが、エレガントではないですね。ナイフで切るなんてもってのほか」
とあくまでもフォークだけで食べるのが正解というマルケッティ氏。一方、同じレストランの仕入れを担当するサルバトーレさんは、スプーン党。
「スプーンを使えばきれいにまとまり、スマート」
と譲らない。
スパゲティを食べるスイス人を観察すると、スプーン党が大半。庶民的なイタリアレストランなら、スプーンは黙っていても出してくれる。フォークだけではうまくゆかないのなら、スプーンを使って絡めたほうが「問題」が解決される。スイス人の合理性がエレガントさにつながっているのかもしれない。
フォークだけでくるくる絡める仕草にエレガントさを感じるのか、手段はどうあれソースを散らさないのがエレガントなのか、意見は2つに分かれたままである。
スイス国際放送 佐藤夕美 (さとうゆうみ)
スパゲティ消費量
イタリア 1人あたりの年間消費量 22Kg
スイスは1人あたり年間10Kgでイタリアについで2位
JTI基準に準拠
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