スイスでは一部の地域で次世代通信規格「5G」のサービスが始まっている
© Keystone / Ennio Leanza
スイスの研究機関、連邦材料試験研究所(EMPA)は29日、次世代通信規格「5G」技術はエネルギー効率を向上させ、温室効果ガス排出量の削減に役立つ可能性があるとの研究結果を連邦議会に提出した。
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EMPA外部リンクによると、スイスの5G通信網を2030年までに全国に広げると、CO2排出量が0.18メガトン多くなる。一方、5Gで使えるようになる新サービスによってエネルギー効率が上がり、2.1メガトンの排出削減効果が生まれる。
EMPAは29日の声明外部リンクで、「2030年に実現予定の5G通信網は今の通信網に比べ、データ通信の1単位当たりのCO2排出量が約85%少なくなる見込みだ。さらにスマートグリッド(次世代送電網)やスマート農業など、新しい用途により間接的に排出削減になる」と述べた。
大容量・高速通信により自宅勤務がしやすくなれば、通勤により発生する排出量も削減できる。一方、自動運転車や遠隔手術、インテリジェントビル(高度情報化ビル)などは30年までに普及する可能性が低く、排出削減効果は見込んでいない。
同研究は、経済団体のswisscleantech外部リンクと携帯電話会社スイスコムから委託を受けた。
根強い反対運動
スイスでは、既に一部の地域で5Gの高速通信サービスをスタートしている。通信事業者サンライズは既に300自治体、人口の8割をカバーしている。スイスコムも昨年末、人口の9割をカバーする方針を示した。
だがフランス語圏を中心に反対意見は根強く、ヴォー、ジュネーブ、ジュラ州など一部の州は5Gのアンテナ新設許可を保留中だ。昨年10月には、強い電波が住居に入らない対策などを求めるイニシアチブ(国民発議)「健康に配慮し節電になる通信網を外部リンク」が立ち上がった。▽電磁波が住宅に入らないよう送信機の電力を下げ、屋内へのデータ通信には電磁波ではなく光ファイバーや同軸ケーブルを使う▽公共交通機関に電子機器の使用禁止ゾーンを設ける▽学校、病院、老人ホームなど公共の建物には電磁波対策を施す▽アンテナ新設には半径400メートル以内の住民の書面による同意を得る――などを提案している。来年4月15日までに有権者の署名10万筆が集まれば、同案は国民投票にかけられることになる。
こうした動きに対し、スイスの経済界・科学者など約45の個人と19団体が7月、5Gに関する知見を共有するウェブサイト「CHANCE5G外部リンク」を立ち上げた。サンライズやスイスコムのほか、セルネックスやエリクソン、華為技術(ファーウェイ)の加盟するスイス通信業協会(asut)が資金を提供している。
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