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女性技術者の活躍を、創造性の活力へ

IT業界で女性労働者の数は、極めて少ない。しかし、女性たちはお互いがつながることで前に進もうとしている Boris Baldinger

目まぐるしく変化するIT業界で、女性技術者の活用に注目が集まっている。技術者の多様化がイノベーションを生み出す力につながると考えられるようになってきたためだ。しかし、スイスのIT業界で女性技術者の数は依然少ない。

 ある水曜日の夜、チューリヒにあるオフィスの一室に約100人の女性と数人の男性が集まった。自主的なネットワーク「We Shape Tech」のイベントだ。男性優位のIT業界で女性同士の横のつながりを作るのが狙いだ。

 「こうした集まりに参加して、女性がネットワークを広げるのはとても大切なこと。私自身、IT業界で働くのが大好きだし、もっとたくさんの女性に働いてほしい。それが早く当たり前になってほしいわ」と、ネットワーク発起人の一人、ペトラ・エーマンさんは話す。

 エーマンさんは米グーグルのチューリヒ支社で、さまざまなアプリにライセンスを与える業務に携わっている。

 ネットベンチャーの旗手の地位を不動のものにしたグーグル。だが、グーグルの技術者の男女比率をみると、女性は世界全体の19%にすぎない。

 チューリヒ支社は、本社(米カリフォルニア州マウンテンビュー)に次ぐ大所帯で、約2000人の社員の国籍は75カ国に及ぶ。だが、ここでも女性エンジニアの数は少ない。

 チューリヒ支社でプロダクトマネージメントを統括するエリック・トロメ氏は、「従業員の多様性に注目し、女性エンジニアの採用にも本腰を入れている」と強調する。女性の人材を発見しやすくするため、女性技術者のネットワーク構築や女子学生のコンピューター科学への進学を促す取り組みなど様々な工夫をしているという。

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2年前は紅一点

 前出のイベントに参加したブリジット・フリガーさんは、ソフトウェアのベンチャー企業を立ち上げた若手女性起業家。「女性がIT業界に入るには、崖から飛び降りるぐらいの覚悟が必要よ」と話す。

 「2年前にこの業界で働き始めた時、オフィスでは紅一点。男性陣から『これでようやくオフィスがきれいになる』と、まるで雑用係のように言われたわ」と振り返る。IT業界の体質として、「女だから」という男性エンジニアの女性に対する偏見があると指摘する。

 フリガーさんは、チューリヒの「We Shape Tech」のイベントに参加したのをきっかけに、地元ベルンでも同じネットワークを立ち上げた。女性エンジニアが持つさまざまな考え方や働き方を、IT業界に浸透させていく考えだ。

(英語からの翻訳・あだちさとこ)

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