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ブルカ着用禁止、ミナレット新設禁止ほどの反響無し

ジュネーブやその他のスイスの観光地で、ニカブを着用することができなくなる Keystone / Salvatore Di Nolfi

公共の場で顔を覆うベールなどの着用禁止を求めた「ブルカイニシアチブ(国民発議)」が7日、スイスの国民投票で可決され、先週は世界中のメディアから大きな反響があった。全体として事実に基づく論調が多かったが、一部のメディアは今回の決定を「イスラモフォビア(イスラム嫌悪)」と表現して批判した。

このコンテンツは 2021/03/18 16:30

多くの外国メディアが、スイスで7日に行われた国民投票の結果、「ブルカ着用禁止」イニシアチブが賛成51.2%の僅差で可決されたことを報じた。「国民投票の結果は、イスラム諸国のメディアでも、概ね事実に基づいたバランスの取れた形で報道された」とスイス連邦外務省の国外向け広報機関プレゼンス・スイスのニコラ・ビドー代表は指摘する。

確かに、投票結果が拮抗(きっこう)したことを強調する記事もあれば、顔を覆うベールの着用をすでに禁止している欧州諸国にスイスも加わったことを伝える記事もある。また、複数のメディアが、今回の投票で対立した政治勢力の構図が通常とは異なっていたことを取り上げた。「右派ポピュリストのイニシアチブは、フェミニズムの主張に敏感な一部の左派有権者の偶発的な支持のおかげで可決されたに過ぎない」と仏紙ル・モンド他のサイトへは評する。

イスラム教徒に対する差別的なイニシアチブと指摘した国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)による批判もある程度の注目を集めた。

象徴的な決定

また、一部の外国メディアは投票後数日の間に批判的な論評や分析を掲載した。例えば、ドイツのニュース週刊誌シュピーゲル他のサイトへは、スイス国民の決定はイスラム社会に「苦いシグナル」を送ることになると考える。「またもや欧州のある国(スイス)の大衆主義者たちは反イスラム感情をあおり、この感情から、内容にほとんど変化はないが、象徴的に大きく変わる規制を引き出すことに成功した」(シュピーゲル誌)。同誌はまた、スイス国内で(目以外の前身を覆う)ニカブを着用する女性は30人程度という連邦政府の推計も指摘した。パキスタンの英字紙ドーン他のサイトへは、顔を覆うベールの着用禁止を、20世紀半ばに欧州の数カ国で政権を握っていたファシストが追求する「純粋性の探求」とためらいなく比較する。「社会への統合や共存を促進するのではなく、このような措置を取ることは欧州の民族的・宗教的多数派と少数派の溝を深めるだけだ」と同紙は嘆く。

ベルリンの日刊紙ディ・ターゲスツァイトング(taz)他のサイトへは、今回の決定を「開放と連帯のスイス社会にとって損失」だとみる。また、tazの論説委員は、禁止は誰の助けにもならないと言う。「それどころか、スイスでニカブを着用し、社会からすでに疎外されている女性たちは今や突然訴えられる可能性がある。禁止はそういう女性達を傷つける」

イスラム諸国の一部のメディアは、ブルカ着用禁止をスイスでイスラム嫌悪が高まっている証拠と表現する。「スイスのあきれた国民投票、イスラム的価値観への反感が再燃」は、トルコの日刊紙ミッリー・ガゼテ他のサイトへが付けた見出しだ。パキスタンの英字日刊紙エクスプレス・トリビューン他のサイトへによると、イニシアチブの発起人は「イスラム教徒と移民を悪者にしようとしただけだ」

それでも外国メディアの報道には肯定的な論評も見られた。中でも英保守系週刊誌スペクテーター他のサイトへは、チャドやチュニジアなどイスラム教徒が多数派の国々にも、政教分離を理由に顔を覆うベールの着用を禁止する国があることを指摘する。「スイスやフランスをイスラム嫌悪国と非難するのはやめるべき時だ」と同誌は記した。

スイスのイメージダウン?

時には厳しい批判を受け、スイスは自国の外国でのイメージが損なわれることを懸念しているかもしれない。しかし、プレゼンス・スイスのビドー氏は、イスラム諸国自体の顔を覆うベールに対する態度が決め手になると話す。「一部のイスラム諸国でも顔を覆うベールの着用については議論があり、時には論争の的になることを忘れてはならない」と同氏は強調する。

イスラム教に関連するスイス国民の決定が外国で話題になったのは今回が初めてではない。2009年に大差で可決されたミナレット(イスラム寺院の尖塔)の新設禁止も大きく報道された。しかし、ビドー氏は、ミナレット新設禁止はブルカ着用禁止よりも多くの批判を呼んだことを指摘し、「外国メディアはミナレットをイスラム教の重要なシンボルとみなした。顔を覆うベールには象徴的側面が少ない」と分析する。

さらに、今回のスイスの決定は、諸外国が既に同様の措置を取っているため例外ではない。「だから、ミナレットの新設禁止の是非を問う国民投票のときよりも、スイスだけが否定的な注目を浴びることは少ない」とビドー代表は話す。

(仏語からの翻訳・江藤真理)

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