The Swiss voice in the world since 1935
トップ・ストーリー
スイスの民主主義
ニュースレターへの登録

スイスの湖で魚が大量死

ブラウゼー
ブラウゼーはスイスでもよく知られた山上湖の1つ Keystone

スイスアルプスを一望できる山上湖ブラウゼー外部リンクの地下水に毒性物質が浸み込み、それが理由で養殖場の魚数万匹が死んだと所有者が訴えている。所有者らは、付近にあるレッチベルクサミットトンネルの改修工事を請け負う企業と行政機関に非があると訴える。

ブラウゼーの所有者の1人、シュテファン・リンダー氏によると、湖近郊の砂利工場で地下水を測定したところ、発がん性があることで知られるPAHs(多環芳香族炭化水素)の濃度が限界値の42万4000倍だった。

リンダー氏は17日、ベルンで会見。砂利採掘場から採取した水サンプルをさらに調べたところ、鉛や亜鉛などの重金属の基準値を大幅に超える値が出たと述べた。

リンダー氏は、数万匹の魚が死んだことによる損害は200万フラン(約2億円)に上ると述べた。同氏は損害賠償の予定もあるとしたが、まずは汚染者の特定が必要だと語った。

「明白な」つながり

人気の観光地でもあるブラウゼーでは2018年以降、養殖場におけるマスの大量死が相次いでいる。

ブラウゼーで死んだ大量のマス
ブラウゼーで死んだ大量のマス Keystone

ブラウゼーの管理者は、湖と養殖場の水槽の1つの水源である地下水に、毒素が浸み込んでいることが原因とみる。リンダー氏によると、魚が死んでいるのが見つかったのは今回の水槽だけで、他の水源から水を供給している水槽ではこうした事故がない。

リンダー氏らは、この毒素が2018年8月から改修工事をしているレッチベルクサミットトンネルにあった砂利と、タール処理された枕木から来ていると考えている。現在の線路は取り除かれ、コンクリート基礎に代わっている。

古い砂利と枕木は外して分離し、ブラウゼー付近のミットホルツ砂利工場の敷地に運ばれた。しかし、6月中旬に湖の管理者が通報してベルン州が介入するまで、ここに約1千トンの細かい原材料も投棄されていた。

ベルン水道・廃棄物局のジャック・ガングイン局長は、この投棄は違法に行われたと述べた。当初は、すべての材料をヴィミスの専門工場に運び、そこで洗浄する予定だったという。

ブラウゼーの管理者は、ベルン当局の対応が不適切だった、あるいは該当企業への対応が遅れたと批判している。

管理者らは、トンネル掘削材料をミットホルツに投棄することを禁止して以来、ブラウゼーでの魚の死亡率は大幅に低下したと述べた。このためトンネル改修との時間的、空間的、事実に基づいたつながりは「明白」だと主張する。

「スキャンダル」

会見に出席した地質学者ハンス・ルドルフ・キューセン氏は、ある「スキャンダル」について話した。同氏は、トンネル改修前の予備調査が実施されたのか・また解釈が正しくなされたのかは疑わしいと言う。

同氏は、ミットホルツの砂利工場が地下水流の真上にあることは長年、既知の事実だと言い「埋立禁止の施行はまさにそれが理由だ」という。

地元当局は、飲料水は地下水ではなく湧き水から供給されているため(毒素の)影響を受けておらず、問題は全くないとしている。

ベルナー・オーバーラントの検察庁は現在、刑事事件として捜査を始めた。水質・環境保護法、州の廃棄物管理法違反の疑いがあるとみている。

人気の記事

世界の読者と意見交換

ニュース

財布

おすすめの記事

スイスでは現金のチップが主流

このコンテンツが公開されたのは、 スイスのレストランでクレジットカードやスマホ決済が普及しているが、チップは今も現金で払うのが主流だ。消費者の多くは、チップが確実にスタッフの手元に入るようことを重視している。

もっと読む スイスでは現金のチップが主流
プラタナス

おすすめの記事

プラタナス、猛暑でも冷却効果 スイスの研究

このコンテンツが公開されたのは、 スイスの研究所が新たな研究結果を発表し、プラタナスは猛暑でも冷却効果を発揮することが分かった。樹木の冷却効果は30~35℃で限界に達するという既存の仮説を覆す結果が出た。

もっと読む プラタナス、猛暑でも冷却効果 スイスの研究
ひまわり畑

おすすめの記事

見えぬ障がい伝えるバッジ、試験配布開始 スイス連邦鉄道

このコンテンツが公開されたのは、 スイス連邦鉄道(SBB)は17 日、目に見えない障がいを持つ乗客を対象としたヘルプマークの配布を試験的に開始した。外見からは分からなくても支援・配慮を必要としている人への理解を深めることを目的としている。

もっと読む 見えぬ障がい伝えるバッジ、試験配布開始 スイス連邦鉄道
UBS

おすすめの記事

スイス政府、金融規制改革の最終案を発表

このコンテンツが公開されたのは、 スイス連邦内閣は6日、クレディ・スイス危機を踏まえた金融規制改革の最終案を発表した。自己資本規制を強化し、金融監督局の権限も強化する。

もっと読む スイス政府、金融規制改革の最終案を発表
ガザ

おすすめの記事

スイスの元外交官50人、ガザめぐる政府の「沈黙」を非難

このコンテンツが公開されたのは、 パレスチナ自治区ガザにおけるイスラエルの「戦争犯罪」に関して、スイスの元外交官55人がスイス外相に共同書簡を送り、スイスの「沈黙と消極性」を非難した。政府に対して直ちに措置を講じるよう求めた。

もっと読む スイスの元外交官50人、ガザめぐる政府の「沈黙」を非難
軍隊

おすすめの記事

スイスで放射能測定の合同演習 

このコンテンツが公開されたのは、 スイスでは2~6日、国際チームがヘリコプターで空中の放射能測定を行っている。緊急時に広い範囲の放射能を迅速にチェックする予行演習だ。

もっと読む スイスで放射能測定の合同演習 

swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。

他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部