スイスと欧州連合(EU)の電力供給に関する協定は、2018年から保留のままだ
© Keystone / Gaetan Bally
スイス連邦政府は、大規模な電力供給停止が起こった場合の対応策をまとめたパンフレットを企業3万社に配布した。ドイツ語圏の日曜紙NZZ・アム・ゾンターク(17日付)が報じた。
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スイスは欧州連合(EU)と電力供給に関する協定を結んでいないため、スイス国内外で大規模発電所が機能停止に陥ると、このようなシナリオが国内で実際に起こり得る。
パンフレットによると、電力不足が生じた際は政府が企業に対し、一定の割合まで電力消費量削減を命じる可能性がある。
ただ政府は第一段階として国民への節電を呼び掛け、第二段階でプールやエアコン、エスカレーターの使用を禁止する。経済部門の電力割当は三段階目の措置だ。
同パンフレットではまた、企業に節電への協力を呼びかけている。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)に加え、電力不足に伴う緊急事態はスイスの供給にとって最大の脅威だ。NZZが報じた政府の試算によると、その経済的損失は1日当たり最大40億フラン(約4940億円)に上る。
ギー・パルムラン経済相は「異常事態における電力供給組織(OSTRAL)」のウェブサイト上に掲載されたビデオ外部リンクで、電力不足が数週間から数カ月に及ぶと「工場での生産量が減り、公共機関や銀行などのサービス業が業務縮小を余儀なくされる。電車やトラムなど電力に依存する交通機関は限られた範囲でしか運行できなくなる」と説明した。
パルムラン氏はまた、今回のパンデミックで危機への備えを可能な限り行うことの重要性が浮き彫りになったと強調。電力不足が起こった場合には、スイスでは全ての消費者、特に企業などの大口消費者がその役割を果たす必要があると述べた。
複数の専門家によると、EUとの協定交渉に進展がなければ、スイスは短~中期的、特に冬場の電力確保に大きな問題が生じる恐れがある。
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