スイスの銀行やクレジットカード会社はスマホ決済の導入を進めている
Keystone
スイス公正取引委員会は15日、スイス金融機関が談合してアップル・ペイとサムスン・ペイといったスマートフォン(スマホ)決済アプリを市場から締め出しているとの疑いで調査を始めたと発表した。
このコンテンツが公開されたのは、
調査を受けているのは大手銀行クレディ・スイスとUBS、スイス郵便の金融部門ポストフィナンス、クレジットカード会社のスイスカードとアドゥーノだ。
金融機関はクレジットカードに米アップル・ペイや韓国のサムスン・ペイの支払い機能と連携させないよう示し合わせたとの疑いが出ている。スイスの非接触決済「TWINT外部リンク(トゥイント)」を優位に立たせるのが狙いだという。
各社の反応
ポストフィナンスは報道発表外部リンクで「スイスの独占禁止法には違反しておらず、公取委の調査に協力している」とコメントした。
UBSは進行中の調査についてはコメントしないと述べた上で、同社クレジットカードとアップル・ペイとの連携は16年に試みたという。「いくつかの選択肢を提案したが、アップル・ペイとの間で提携の合意に至らなかった」と話す。
クレディ・スイスは調査すれば無実が明らかになるとコメント。「子会社であるスイスカードを通じて、スイスの顧客がアップル・ペイやサムスン・ペイを使えるようにしている」という。また同社の顧客が決済アプリを導入できるよう、アップルやサムスン、グーグルと数カ月前から対話を続けている。
スイスカードは調査対象となったことに驚きを隠さない。16年11月から同社カードでアップル・ペイを使うことができ、17年8月からサムスン・ペイも導入した。同社も談合の疑いには根拠がないと主張する。
古くて新しい疑惑
TWINTを国際競争の荒波から守るため、金融機関やクレジットカード会社が共謀しているとの疑惑は新しいものではない。アップル・ペイがサービスを開始した2年半前も、連携するクレジットカード会社はごくわずかだった。
今になって調査が始まったのはなぜか。公取委のオリヴィエ・シャラー副委員長はAWP通信の質問に「新しい情報を入手した」と答えた。公取委は、違法となる談合があったという根拠がなければ調査に入れないが、新しい情報でその根拠を得たという。調査には一定の時間がかかり、また極めて厳しいものになる。
2年前にTWINTは競合のPaymitと統合し、以来スイスの銀行6行とスイス証券取引所を運営するSIXグループが主な株主となっている。フランスの決済サービス、ワールドラインも株式の2割を握る。
アップル側も競争阻害?
スイスの世論調査によると、決済アプリの利用件数は増えているものの、消費者に普及しているとはいえない。ルツェルン応用科学大学の金融サービス研究所の調査によると、月間約175万件の決済のうちアプリを使ったものは0.5%に過ぎない。
TWINTはスイス人に人気のあるiPhoneで使えないという大きな弱点がある。アップルはライバルであるTWINTに対し、最も速く簡単な非接触決済技術であるNFCと連携させなかったためだ。
iPhoneのNFCインターフェースでは、系列のアップル・ペイしか使えない。このためTWINTはQRコードの読み取りかBluetoothを使わなければならず、支払いにかかる時間が長くなる。
スイス公取委は、この措置が競争を妨げていないかアップル側の調査も行っている。シャラー副委員長は調査に進展があったと述べたが、結論はまだ示されていない。
おすすめの記事
スイス、ロシア・ウクライナ首脳会談の「準備は万全」
このコンテンツが公開されたのは、
スイス連邦政府のイグナツィオ・カシス外相は19日、ウクライナ情勢を巡る和平交渉について、スイスはロシアとウクライナの首脳会談を開催する「準備は万全」と述べた。
もっと読む スイス、ロシア・ウクライナ首脳会談の「準備は万全」
おすすめの記事
職場
スウォッチ、「つり目」広告を撤回 人種差別と炎上
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの時計大手スウォッチはつり目ポーズのモデルを使った広告を謝罪し、撤回した。中国を中心に人種差別的だとの批判が出ていた。
もっと読む スウォッチ、「つり目」広告を撤回 人種差別と炎上
おすすめの記事
世界貿易
トランプ氏、スイス大統領に金銭支払いを要求 関税発表前日の電話会談の詳細が明らかに
このコンテンツが公開されたのは、
スイスに対し39%の関税を発表する前日の7月31日、ドナルド・トランプ大統領がカリン・ケラー・ズッター大統領との電話会談で、米国への「投資」ではなく直接的な金銭支払いを要求していたことが分かった。大衆紙ブリック日曜版が報じた。
もっと読む トランプ氏、スイス大統領に金銭支払いを要求 関税発表前日の電話会談の詳細が明らかに
おすすめの記事
文化
ロカルノ映画祭、三宅唱監督「旅と日々」に金豹賞
このコンテンツが公開されたのは、
スイス南部で開催されたロカルノ国際映画祭で、三宅唱監督の「旅と日々」が最高賞にあたる金豹賞を受賞した。
もっと読む ロカルノ映画祭、三宅唱監督「旅と日々」に金豹賞
おすすめの記事
宇宙研究
国際宇宙ステーションでロボットが「宝探し」に成功 スイスも貢献
このコンテンツが公開されたのは、
日本製とドイツ製のロボットが、国際宇宙ステーション(ISS)で「宝探し」をして遊んだ。スイス・ルツェルン応用科学芸術大学(HSLU)もこの実験に貢献した。
もっと読む 国際宇宙ステーションでロボットが「宝探し」に成功 スイスも貢献
おすすめの記事
スイス中銀、新紙幣デザイン12案発表 一般投票募る
このコンテンツが公開されたのは、
スイス国立銀行(中銀、SNB)が、新フラン札のデザイン案12点を発表した。来月7日まで、インターネット上で一般投票が行われる。
もっと読む スイス中銀、新紙幣デザイン12案発表 一般投票募る
おすすめの記事
気候適応
ジュネーブ州、バス・路面電車を13日のみ無料に オゾン濃度が急増
このコンテンツが公開されたのは、
ジュネーブ州では13日、バスやトラム(路面電車)など公共交通機関が終日無料となった。オゾン濃度が急増したことへの対応で、スイスでは初めての措置だ。
もっと読む ジュネーブ州、バス・路面電車を13日のみ無料に オゾン濃度が急増
おすすめの記事
スイスで記録的暑さ 政府が警告
このコンテンツが公開されたのは、
スイスで全国的に気温が上昇し、猛暑への警戒が強まっている。11日にはスイス西部と南部ティチーノ州の一部地域に対し、熱中症など健康被害を受けるリスクが大きい「危険度3」の警報が発令された。
もっと読む スイスで記録的暑さ 政府が警告
おすすめの記事
文化
知日スイス人作家のアドルフ・ムシュクさん、欧州政治文化賞を受賞
このコンテンツが公開されたのは、
ハンス・リンギエ財団は9日チューリヒ在住の作家アドルフ・ムシュグさん(91)に欧州政治文化賞と賞金5万ユーロ(約860万円)を授与した。同賞がスイス人に授与されるのは初めて。
もっと読む 知日スイス人作家のアドルフ・ムシュクさん、欧州政治文化賞を受賞
おすすめの記事
貿易政策
スイス政府、相互関税で米国との協議継続を表明
このコンテンツが公開されたのは、
米国がスイスに課す39%の「相互関税」をめぐり、スイス政府は4日、米国との協議を続け「より魅力的な提案をする」と表明した。
もっと読む スイス政府、相互関税で米国との協議継続を表明
続きを読む
おすすめの記事
現金を愛してやまないスイス人
このコンテンツが公開されたのは、
スイスでは「Cash is king(現金は王様)」との考えが強いことが、公式統計でも明らかになった。スイス国立銀行(中央銀行、SNB)の調査によると、スイスで行われる決済の7割は現金によってやり取りされている。
もっと読む 現金を愛してやまないスイス人
おすすめの記事
1000フラン札は「スイス文化の一部」
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの1000フラン札(約11万円)は世界で最も高額な紙幣の一つだ。欧州中央銀行は今月4日、違法行為を防止する目的で2018年末までに高額紙幣の500ユーロ札の発行を停止する計画を発表したが、スイス政府は「1000フラン札はスイス文化に欠かせない」として同紙幣発行の継続を明らかにした。
スイス国内で流通している1000フラン札は、2000~14年の間に2千万枚から4千万枚へと倍増した。
中道左派のスイス社会民主党マルグレット・キーナー・ネレン議員はテロリストや犯罪者間での現金取引やマネーロンダリングに悪用されやすいとの観点から、高額紙幣の流通を懸念する。
だがスイス政府は19日、こうしたリスクを認識しており、高額紙幣を使った違法行為の防止に必要な対策はすでに講じられていると文書で回答した。
もっと読む 1000フラン札は「スイス文化の一部」
おすすめの記事
スイス時計産業 ついにスマートウォッチ市場に参入
このコンテンツが公開されたのは、
ほんの1年ほど前まで、大手時計メーカーのほとんどがスマートウォッチの製造に関心を示していなかったが、ついに行動を起こし始めた。アップル社が腕時計型のウェアラブル端末「アップルウォッチ」の発売日を正式に発表したばかりで、巨大企業間での厳しい国際競争が予想される中、スイスには幾つかの切り札があると言えそうだ。
もっと読む スイス時計産業 ついにスマートウォッチ市場に参入
おすすめの記事
外国送金 高い手数料がいまだ問題
このコンテンツが公開されたのは、
外国に暮らす移民が途上国に送金した額は、2013年に世界中で合計4100億ドル(約42兆円)。世界銀行と国際通貨基金(IMF)によれば、これは10年前に比べると4倍の額になる。 スイスからの外国送金は年間およそ200…
もっと読む 外国送金 高い手数料がいまだ問題
おすすめの記事
公取委、スイス郵便に課徴金25.7億円命じる
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの公正取引委員会(WEKO)は18日、スイス郵便に対し独占的な地位を乱用したとして約2260万フラン(約25億7千万円)の課徴金支払いを命じたと発表した。スイス郵便は異議を唱えている。
もっと読む 公取委、スイス郵便に課徴金25.7億円命じる
swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。
他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。