映画監督と作家のレベッカ・パニアン氏。ライナウでのベーシック・インカム導入を推進していた
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無条件の基本所得として村民に月額2500フラン(約28万円)を試験的に支払う「ベーシック・インカム」計画は、資金を十分に調達できず中止となった。
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チューリッヒ州ライナウ村で予定されていた同社会実験とレベッカ・パニアン氏によるドキュメンタリー映画への資金調達が4日に終了した。必要額610万フランに遠く及ばず、15万フランしか集まらなかった。
この社会実験に関して、パ二アン氏は短期間に多額の資金を調達するのは困難だと分かっていたが、「期待は本当に、非常に高まっていた。大胆な賭けだった」と述べた。
10月16日に始まったベーシック・インカム導入案には、村民1300人中、約770人が署名。実験を実施するのに必要な最低人数の650人を優に超えていた。
参加者は、毎月2500フランのベーシック・インカムを1年間受け取る予定だった。ただし、雇用や福利厚生などでそれ以上の収入がある人は、ベーシック・インカムを返済するという条件だった。
≫ライナウのベーシック・インカム試験導入の詳細
2016年の国民投票では、同様のベーシック・インカムを求めるイニシアチブが否決された。
「なぜライナウの村民だけにお金を出すのか理解できない人が多かった。これは、この実験の成果がやがて全てのスイス市民のメリットになるというメッセージが十分に伝わっていなかったことを意味する」とパ二アン氏は言う。
そして、資金は十分に調達されなかったが、実験は「無意味ではなかった」とも付け加える。ライナウの住民はこの問題について真剣に話し合い、村の半分以上がボランティアとしてこの試験導入に向けて取り組んだ。また、これをきっかけにドイツとポルトガルでも関心が集まったという。
パニアン氏のチーム、ライナウの住民および地方自治体は、今後の対処を決定するため、今回の試験導入案の評価を行う予定だ。
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