トランプ氏の「オデュッセイア」、FRB議長、スペースXの月面衝突…スイスのメディアが報じた米国のニュース
スイスのメディアが12日までの1週間に報じた米国の関連ニュースから、①トランプ氏の「オデュッセイア」②FRB議長への懐疑③スペースXの月面衝突、の3件を要約してお届けします。
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「トランプ氏は自らの政策の残骸の中に立っている」。スイス・ドイツ語圏の日刊紙ターゲス・アンツァイガーは11日、ドナルド・トランプ米大統領が自身の思い上がりの犠牲になったと指摘。その影響は地政学的にも及ぶと論じた。
「オデュッセウスが現在、映画界で再び注目を集めているのと同じように、思い上がりもまた誘惑の歌を奏でる。(…)独裁者は特にその誘惑に陥りやすい。民主主義的な安全装置が存在しないからだ。民主主義的な制約を振り捨てたいと考える独裁者志向のドナルド・トランプ氏もまた、思い上がりという誘惑に弱い人物である」
問題は、トランプ氏が米国の力、そして「何よりも自分自身の力」に限界はないと考えていることだ、と同紙は指摘する。「これはイランへの攻撃当日の演説で顕著に表れた。トランプ氏は、イランの核開発計画を終わらせ、その政権を打倒すると宣言した。それから5カ月余りが経った今、厳しい現実を突きつけられている。2つの戦争目的はいずれも達成されていない。さらにトランプ氏は、米国という超大国の地政学的な信頼性を恒久的に損なってしまった」
また、軍事力は実際に行使するよりも、信頼できる形で行使をちらつかせる方が効果的なことが多いとも論じる。「トランプ氏はこの点を理解できていない。ベネズエラでのクーデター後に示した結論がその証拠だ。高度10kmから爆弾を投下し、指導部を狙った攻撃を行えば、イランで政権交代を実現できると考えた。しかし、テヘランのイスラム主義政権は存続し、現状ではむしろ強まったように見える」
記事は、トランプ氏に残されているのは悪い選択肢しかないと述べたうえで、主な3つを挙げた。「第1に、トランプ氏は再び戦争をエスカレートさせることができる。しかし、主要な弾薬は現在、供給不足に陥っているようだ。第2に、トランプ氏は新たな制裁を科し、それによって再びホルムズ海峡を封鎖することができる。米国経済を含む世界経済がその代償を払うことになる。米軍も長期間この地域にとどまらなければならず、それにも費用がかかる。残る第3のシナリオは、勝利を宣言して帰国することだ。しかし、トランプ氏が抱える問題は残る。濃縮ウランは瓦礫の下に埋まっているとはいえ、ホルムズ海峡とともに現在もイランの支配下にあり、いずれも極めて効果的な武器となる」
「トロイア戦争で勝利したオデュッセウスの帰国は、オデュッセイア(長い冒険の旅)となった。ドナルド・トランプも同じ運命に直面している」
ドイツ語圏のスイス公共放送(SRF)は10日、投資家は米連邦準備理事会(FRB)新議長のケビン・ウォーシュ氏が示す金利政策の方向性に懐疑的だと報じた。
ウォーシュ氏は5月に議長に就任した。「投資家は、FRB議長としてのウォーシュ氏が、インフレとの戦いについて自ら主張するほど真剣に取り組んでいないのではないかと懸念している」と、SRFは伝えた。長期国債の利回りは2007年以来の高水準に上昇しているという。
「インフレと金利の動向をめぐり、市場は現在、ウォーシュ氏に懸念を抱いている。同氏は、今後どのような金融政策路線を取るつもりなのかを明言しようとしない」
SRFによると、批判の声は、ウォーシュ氏がインフレ対策よりも低金利による景気支援を望むトランプ氏に配慮して、このような姿勢を取っているのではないかという点に集まっている。
しかし、SRFは、この2つを同時に実現することはできないと指摘する。「FRBは低金利で経済を刺激するか、金利を引き上げて経済を減速させるかのどちらかしかない。実際、FRBは年初から主要政策金利を変更していない」
一方、インフレ率は2.4%から3.5%に上昇した。その一因は、トランプ氏によるイランとの戦争と、それに伴うエネルギー価格の上昇だという。「こうした観点から見ると、物価安定への取り組みと、FRB議長としてのウォーシュ氏のこれまでの行動には、部分的にしか一貫性がない」とSRFは述べている。
スペースXのロケットが5日、月面に衝突し、新たなクレーターを形成した。この衝突は宇宙探査だけでなく月の起源に対する理解にも関わるとして、科学者たちの関心を集めている。フランス語圏のスイス公共放送(RTS)が報じた。
新たにできたクレーターは、直径約27m、深さ約5m。スペースXのロケット「ファルコン9」は2025年1月15日、民間の月探査機2機の打ち上げに使われたが、その一部が月面に「時速約8700kmの速度で突入し、爆発。ダイナマイト1万5000本分に相当するエネルギーを放出した」とRTSは説明した。
RTSは、宇宙ごみ(デブリ)の量が増え続けている一方で、月を「不活性な天体」とみなす見方が変わり始めていると指摘した。
「最近、この見方は修正されつつある。特に氷が存在する地域など、注目すべき場所がある」と、デブリ専門家のクリストフ・ボナール氏はRTSに語った。「将来の月面基地の居住施設として利用できる可能性を持つ溶岩洞もある」。そのため月の保護は強化されているという。
RTSによると、今回のような衝突には、もう一つ科学的な利点がある。それは月面を覆う細かな砂塵「レゴリス」の分析だ。レゴリスの詳細な組成や地層構造は、今も研究者たちの関心を集めている。
「これは、月面に自然に形成されたクレーターを理解する助けになる」。こう話すのは、連邦工科大学チューリヒ校(ETHZ)のパオロ・ソッシ教授(地球・惑星科学)だ。
「スペースXの衝突によって、衝突体の質量、角度、速度を較正することが可能になる。それによって、はるか昔に月に衝突した小惑星の歴史について何かを知ることができる。月が地質学的にどのように進化してきたのかを正確に理解することにつながる」
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英語からの翻訳:大野瑠衣子
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