日銀、空き家、腹八分……スイスのメディアが報じた日本のニュース

スイスの主要報道機関が先週(3月17~23日)伝えた日本関連のニュースから、①日銀、政策金利を据え置き②日本のお得な空き家を買う③日本の「腹八分」から学ぶもの、の3件を要約して紹介します。
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日銀、政策金利を据え置き
日銀は19日の金融政策決定会合で、政策金利を0.5%に据え置くと決めました。据え置きは予想通りで、引き続き利上げを目指していくとの見方が市場では大勢を占めています。スイスのメディアでも同様の報道が目立ちました。
ドイツ語圏大手紙NZZは、年内に0.75%まで利上げするとのムーディーズ・アナリティクスの予想を紹介。利上げのタイミングは7月の参院選に大きく左右され、また各国の貿易政策や物価動向、為替相場といった不確実性があることも指摘しました。一方で、政府債務の大きさから「大幅な金利引き上げは難しい」として、実際に長期金利が16年ぶりの高水準に達していることを挙げました。
フランス語圏ではスイス通信社Keystone-ATSの記事が複数紙に掲載されました。こちらは特に物価の上昇基調が続いていることを強調し、「日銀は賃金上昇が消費を押し上げる『好循環』を期待している」と伝えました。(出典:NZZ外部リンク/ドイツ語、Keystone-ATS/フランス語)
日本のお得な空き家を買う
たびたびスイスで話題になる日本の「空き家」問題。ドイツ語圏の大手紙ターゲス・アンツァイガーは先週、「日本では6万フラン(約1000万円)で海辺の家が買える」と題した記事で、日本で家を買う魅力と課題を紹介しました。
最大の魅力はその安さ。「SNS上では、セカンドハウスの夢が日本で実現できそうに見える」として、海辺の家が6万フラン、山小屋が3万フラン以下、仏閣が3万5000フランで売られていると伝えています。スイス国内で別荘を買おうと思ったら、要改修の物件でも65~80万フラン外部リンクは必要とされています。
日本では、人口減少を背景にこれらの物件価格が値上がりする可能性は低くなっています。「外国人による不動産購入に関して、日本の法律は非常に自由」であることも魅力の一つに挙げました。
記事はスウェーデン人インフルエンサーのアントン・ウォルマンさん外部リンクに取材。同氏は東京中心部の物件を購入してリノベーションする様子をInstagramに投稿し、訪日外国人に貸し出していると言います。毎月約100万フランの収入を得ていますが、民泊事業には厳しい規制が課されていることも注記しました。(出典:ターゲス・アンツァイガー外部リンク/ドイツ語)
日本の「腹八分」から学ぶもの
スイス人料理研究家のリヒャルト・ケギ外部リンクさんは大の親日家。20年来足しげく訪れている日本で、最近初めて「腹八分」という概念に出会った、とNZZの連載コラムで綴りました。
「日本人は地球上で最もフレンドリーな人々であるだけでなく、最もおしゃれな人々でもある。だらしない服装の地元民に出会うことは不可能だ」。ケギさんはさらに、日本には(相撲取り以外)太りすぎの人がいないことに驚いたと言います。
その学術的理由として、日本人は消化酵素が少ないという説や、戦争や飢饉、鎖国に伴う貧困に遺伝的適応を遂げたという説を挙げながら、ケギさんはそれらの説は「無秩序に腹一杯に食べ、脂肪の層で身を包んでいる西洋文明からの言い訳」と自嘲しました。
ケギさんは六本木にある小中高一貫校で教師をしている知人ミヤさんの助けを借り、学校給食の現場を取材しました。全小学校で雇用が義務付けられている管理栄養士は「教師より地位が高い」こと、毎日新鮮な食材を使って調理すること、日本人にとって重要な食品を一定のバランスで摂ること。「そしてもちろん、味噌、納豆、麹などの発酵食品を定期的に摂取することも、健康的で素早い消化に重要だ」。海藻の割合が高いことにも注目しました。
ケギさんを最も感心させたのは「腹八分」の考え方です。「日本人は昔から非常に特殊な食習慣を守ってきた」。儒教上の習わしというだけでなく、胃が満杯になったことを認識するまでに約20分かかるという科学的根拠も紹介しました。「つまり、何を食べるかだけではなく、どのように食べるかも重要だ」ワインとソーセージ、パスタが人生の「3本柱」だというケギさんは、日本で得た洞察を自身の食生活にどう取り入れるかを検討中だと言います。これらを完全に禁止するよりは、「魚や藻類、発酵食品をもっと食べて、全体的に食べる量を少し減らすほうが、私にとっては魅力的だ」と綴りました。(出典:NZZ外部リンク/ドイツ語)
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話題になったスイスのニュース
先週、最も注目されたスイスのニュースは「世界の特許出願、中国が首位 日本3位、スイス8位」(記事/日本語)でした。他に「スイス、子どものSNS利用禁止を検討 影響調査に着手」(記事/日本語)、「UBS、スイスからの本社移転を検討か 一部報道」(記事/日本語)も良く読まれました。
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次回の「スイスで報じられた日本のニュース」は3月31日(月)に掲載予定です。
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校閲:大野瑠衣子

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